新刊ラジオ第1573回 「遅刻をメールで伝えるバカ」
アナウンサー梶原しげるさんが語る「コミュニケーションプア」から脱出するための、会話の秘訣。表題のインパクトも強いですが、本書で紹介されている「〜するバカ」というバッドコミュニケーションの例も面白いです。大人のみなさん、言葉遣いに気を使っていますか?本書で勉強しておきましょう。
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概要
こんにちは。ブックナビゲーターの矢島雅弘です。
新刊ラジオのエンディングトークで、「今回の本、いかがでしたでしょうか?」という表現を、僕はよくするのですが、これは日本語的にはあまり良い表現とは言えないものなんです。
「でした」と「でしょうか」で、「〜です」という表現を重ねて使っていますから、文法的な間違いではないにしても二重敬語なのでくどいと感じられる方もいるでしょう。
一時、番組内で「いかがでしたか?」に直そうとしたことも合ったのですが、何だかしっくりこなくて今の形となりました(^^;)
みなさんは、「ことば」というものにどのくらい気を使っていますか?
今回は、しゃべりのプロが教えてくれる、「ことば」や「コミュニケーション」を解説する本をご紹介しましょう。
◆今日の一冊 『遅刻をメールで伝えるバカ』 (梶原しげる/著 廣済堂出版/刊)
◆著者について 梶原しげるさんは、1950年生まれ、文化放送にアナウンサーとして20年在籍した後、1992年からフリーアナウンサー。司会業を中心にテレビ・ラジオで活躍。その一方で、心理学修士号も取得して、シニア産業カウンセラー、認定カウンセラー、健康心理士。会話術を中心に本も多数執筆されています。
遅刻をメールで伝えるバカ
そんな梶原さんが書かれた今回の本ですが、まずは、タイトルにやられました。
「遅刻をメールで伝えるバカ」! ……ハイ、私です!
この新刊ラジオのスタッフも、比較的若い人が中心なので、遅刻をメールで伝えるバカしかおりません(笑)
では、一体何が悪いのか? 本書の該当部分には、このようにあります。
「緊急時は電話」が大原則です。
時間的なズレが起こりにくい。
相手が必要としている情報を即座に入手でき、双方共に事態への素早い対応が可能になる。
声の様子から事態の緊急度や深刻度などが伝わりやすい。
「電話のメリット」は、これ以外に、いくつも挙げられます。
一方、「メールのメリット」は何でしょうか?
情報やデータの記録性に優れている。
情報の受けてが情報を入手する時間が自由である。
これぐらいのものでしょうか。
素早い対応が大切な緊急時には、どう考えても「生声対応」。緊急時には”気遣い”より”迅速さ”を優先して下さい。(P22より)
……仰るとおりですね。反省します。
口癖を連発するバカ
この本は、「しゃべりのプロ」である梶原さんが、「こういう表現はよくないよ」とか「こういう人いるけど、こうした方がいいよ」と、会話のコミュニケーションのコツを教えてくれる本ではありますが、この本の魅力はそこだけではありません。
この話の要点に持っていくまでの梶原さんの文章が、前フリのトーク、後の感想トークにあたる部分も非常に面白いんです。
先ほどの「遅刻をメールで伝えるバカ」のお話では、梶原さんが実際にテレビの現場で出くわしたという、アシスタントディレクター(AD)が「田舎に帰ります」というメールだけを残して居なくなった話や、元モーニング娘の中澤裕子さんが『ケータイ電話の着信に出ない理由』といった興味深い前フリがあります。
では続いて、本書の中から僕が一番気になった、第3章「口癖を連発するバカ」をご紹介しましょう。
この章の最初に、梶原さんは「好きな人の口癖」は許せますが、「嫌いな人の口癖」は虫唾が走るものです。と書いています。(半分冗談だとは思いますが 笑)
確かに、人間誰しも口癖というのはあるもので、それを誇張して真似すると、所謂ものまね芸になりますよね。
これは僕も経験がありますが、人の口癖というのは「えー」とか「まあ」みたいな、特に言葉として意味のないものから、「いわゆる一つの」「正味な話し」「実際のところ」といった、言葉として意味はあるんだけど、ただ話の頭にもってくるだけの表現もあります。
梶原さん曰く、口癖の典型的な3パターンは、
1)「話の枕としての役割」を担っているもの ex「ここだけの話なんだけど」 2)話始めに勢いをつけるためのもの ex「実は」「逆に言うと」 3)言葉の意味を和らげる事を目的とした口癖 ex「とりあえず」
などがあるそうです。
この口癖の何が悪いのかというと、
・話し方によっては、この口癖のせいで頭が悪いヤツみたいに思われる。 ・話す内容が、口癖と噛み合ってなくて混乱する。 ・梶原しげるはこういう時にイラッとしました
このように、各々個別に悪い点が語られています。
僕も、「えー」という口癖が多くて、こういう番組をしている関係上、「もうちょっと減らせない? 言葉を選んでるように聞こえるよ」とスタッフに言われた事があります。
一方、「しゃべりのプロ」梶原しげるさんも、口癖とは無縁ではないようで、「ま、早い話が」という口癖をお持ちのようです。なんでも、この口癖についてお知り合いに「梶原さんが『早い話が』と連発する時にかぎって話がまわりくどい」と指摘されたこともあるのだそうです。
まとめ
第1章「遅刻をメールで伝えるバカ」 第2章「簡単に「頭が真っ白に」と言うバカ」 第3章「「口癖」を連発するバカ」 第4章「挨拶のできないバカ」 第5章「雑談できないバカ」 第6章「「粗探し」に明け暮れるバカ」 第7章「人の話を聴けないバカ」 第8章「自分のことが話せないバカ」 第9章「やたらと反論するバカ」 第10章「「〜してあげて」を多用して上品ぶるバカ」
章タイトルを読んで「え?何がいけないの?」と思った方は、一度お手にとって読んでみてください。
本書の中で梶原さんは、度々「若い人には別に何てことないのかもしれませんが、私のようなオヤジには〜」という表現を使っています。
実際、その通りで、本書で紹介されている悪いコミュニケーションの例の一部は、僕の世代にとっては、それほど問題視されないものも挙げられていました。
しかし、ビジネスの現場や仕事関係の人が全て同世代、という事は少ないと思います。
ですから、若い世代ほど、この本は価値ある一冊になるでしょう。
「自分の周りのオヤジは、こういう表現にイラっとくる」それを抑えておくだけで、コミュニケーションは円滑にすすむようになるでしょう。
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