だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第1558回 「テレビに破壊される脳」

日本人の心身を害し、国を滅亡に導いていたのが、実はテレビのマインドコントロールだとしたら・・。脳のソフトがテレビによって書き換えられ、命まで奪われ、日本人の思考回路が低下していくと知ったならば・・・。この本を読み終えた後、テレビの洗脳手法を知ってしまったあなたは、テレビのスイッチを入れられる自信があるでしょうか。

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概要

こんにちは、ブックナビゲーターの矢島雅弘です。

みなさんはテレビを1日にどのくらいの時間、見ますか?

僕は一人暮らしをしている頃はぜんぜん見なかったのですが、最近、実家に戻ってからは、家族でクイズ番組やバラエティ番組を見るようになりました。その流れで、夜のニュース、朝のニュースを見ますが、テレビを見ていて、疑問に思うことってありますか?(僕は、この番組って、視聴者を軽視しているのではないかな?と思うことが時々あります。)

さて今日は、「テレビを見ることが脳にとってよくないことである」という精神科医の方の本をご紹介しようと思います。

***

◆今日の一冊

『テレビに破壊される脳』 (和田秀樹/著 徳間書店/刊)

◆著者について

1960年大阪生まれの精神科医。東京大学医学部卒業。東京大学付属病院精神神経科助手、アメリカ・カールメニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在は“和田秀樹こころと体のクリニック”医院長。

テレビの何が問題なのか

今回紹介する本は、精神科医である著者の目から見たテレビの「害」、それによって私たちの脳が蝕まれていく危険性を訴えたものです。

和田さんはテレビの何が問題だと言っているのでしょうか。

まず、「テレビによって発信される情報が、様々な依存症を引き起こす。あるいは依存症を悪化させる。また、依存症の治療を阻害している」といいます。

それについて、「依存率」の高い“アルコール”や“パチンコ”“ゲーム”のテレビCMを常に流し続ける恐ろしさ、子どもの学力をも蝕み、東日本大震災の被害を拡大させているテレビ番組、テレビ漬けによって起こる脳への影響など、テレビによる心理操作や、健康被害などの実態を解説していきます。

普段、何気なく見ているテレビによって、知らず知らずのうちに脳が破壊されているとしたら……。

一方的に流されているテレビから何かしらの影響は少なからずあるのは分かってはいますが、それがいったいどの程度かと思いますか?

そいった観点から、テレビによって人間の脳のソフトがどのように書き変えられていくかを、心理学の立場から検討していきます。

また、和田さんは本文中で、「現在のテレビは、依存症体質を助長してその健康を害し、多くの視聴者を死に追いやるばかりか、不況にあえぐ日本経済をさらに悪化させ、結果として、社会から活力を削ぐことを助長していると言っても言い過ぎではないでしょう」と、語っています。(P16より抜粋)

例えば、ギャンブルやアルコール。これらは依存性のあるものです。

完全に止めなければ治せない病気で、莫大な借金を作って家庭崩壊になることや、身体を蝕んでしまうこともあります。

絶対に止めると心に誓っていても、簡単なきっかけでまた、ギャンブルやアルコールに走ってしまうという危険性も持ち合わせています。

日本では“垂れ流し”のギャンブル・アルコールのCM

こういった依存症になる人は、意思が弱くて駄目な人間だからと思われがちですが、依存症というのは、本人の意思や判断などではどうにもならない病気なのです。ギャンブ ルやアルコールは依存症になりやすいものだと分かっているから、世界の多くの国や政府がギャンブルの制限や禁止をしています。

それなのに、日本ではパチンコがとても身近で、本来ならば厳重な規制がなされるべきであるのに、テレビからは毎日、大量のパチンコのCMが流されています。

また、現在の日本にはアルコール依存症といわれる人が約80万人、予備軍も含めるとおよそ440万人、アルコール依存による自殺者は、年間7000人から8000人いると見積もられているそうです。

そして、アルコール依存症の恐ろしいところは、自殺を招くことだけではなく、飲酒運転による交通事故、酔ったうえでの暴力沙汰など、第三者の生命を脅かすさまざまな問題を引き起こすこともあります。

そんなアルコール依存を増長させるもののひとつがテレビでのアルコール飲料のCMです。CMは販売促進のツールですから、飲酒を促進する内容で、しかも美味しそう、雰囲気がいい、かっこいい、飲んでみたい・・という感じにさせられます。

もちろん好奇心から始まった飲酒習慣が常識の範囲内であればいいのですが、テレビからは、これでもかというふうに次から次へとアルコール飲料のCMが流れてきます。アルコール依存を増やす要因となっているのです。

世界的には、酒類のテレビCMを法律で禁止している国も数多くあります。日本は垂れ流しなのが現状なのに。

では、なぜギャンブルやアルコールのCMが日本では大量に流されているのでしょう。

テレビ局とスポンサーの関係

それはこれらがテレビ局にとって大きなスポンサー元だからなのです。不景気のいま、広告費は各企業とも押さえがち。そんななか、高いCM放送料を支払う体力のある、こうした企業が高視聴率の番組にCMを打てるのです。

その結果、こうした依存症的な商品のCMが人気番組で頻繁に流れ、消費者を増やしていくという訳なのです。

その他にも、本書ではテレビによって行われている様々な事実が書かれています。

いくつかあげてみますと、

○テレビに出演しているコメンテーターがテレビ局やスポンサーの意図する流れの発言をする人だけが出演しているという現実。もし反論をしたり、テレビ局やスポンサーに 悪影響が及ぼすような発言をしようなら、そのコメンテーターはすぐに干されてしまうのです。

○重大な罪を少年が犯したとしても、その父親が権威のある人物であれば実名報道されることはないといいます。それなのにそれほど重罪でもない罪を犯したケースでも大々 的に報道されて、下手をすると一生をフイにしてしまうレベルまで追い込められてしまうという影響力の大きさ。

○子どもたちの価値観が影響を受けてしまっているということも書かれています。勉強ができる、できないはテレビに左右はされません。けれども、勉強をするべきかしなく ていいかの判断は番組によって大いに影響されているというのです。

おバカタレントがもてはやされる番組作り。格差社会を広げるようなドラマ。秀才が“悪”で、不良が“善”であるという設定の登場人物で描かれる人気タレントを起用した 学園ドラマ。

そして、日本では、知的階層別に番組を作るという発想がありません。ドラマでもニュースでも基本的には視聴率至上主義に立った番組つくりなのです。

ナレーションと過激なテロップで視聴者に強い印象を与えたり、不安心理を煽って意図した方向に導いていくこともあります。事実を隠したり、インパクトのあることがらばかりを強調したりもしています。

視聴者の疑う能力を見に付けていかなければならないと思い、テレビとの付き合い方を考えずにはいられない一冊です。

テレビに破壊される脳

テレビに破壊される脳

テレビに破壊される脳

日本人の心身を害し、国を滅亡に導いていたのが、実はテレビのマインドコントロールだとしたら・・。脳のソフトがテレビによって書き換えられ、命まで奪われ、日本人の思考回路が低下していくと知ったならば・・・。この本を読み終えた後、テレビの洗脳手法を知ってしまったあなたは、テレビのスイッチを入れられる自信があるでしょうか。