だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第1553回 「二重生活」

大学院生・白石珠は、ふとしたきっかけから近所に住む石坂に対して「文学的・哲学的尾行」を始め、石坂の不倫現場を目撃してしまう。珠は、尾行を繰り返すうちに、同棲中の恋人・卓也への浮気を疑うようになるのだが――。現代アーティスト、ソフィ・カルの芸術観を内包し、人間の二重性を問う哲学的な意欲作!

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概要

こんにちは、ブックナビゲーターの矢島雅弘です。

突然ですが……みなさんは、誰かを「尾行」したことはありますか?

興信所で働く人や、刑事さんなら、仕事として尾行する場合もあるでしょう。 恋人や夫や妻の浮気を確かめたい、なんてこと思って尾行をした人もいるかも しれません。いずれにしても「尾行」には、何かしらの目的があるものです。

しかし、仕事でもない、疑いを晴らして安心感を得るでもない 「特に目的を持たない尾行」というものをした人はいるでしょうか?

この作品では、「特に目的を持たない尾行」を続ける主人公が、“目的を持たない” はずだったのに、どんどん引き込まれていっちゃって、それがやがてとんもない ドラマに発展していく……。

今日は、そんな小説を紹介していきたいと思います。

***

◆今日の一冊 『二重生活』 (小池 真理子/著 角川書店/刊)

◆著者について 小池真理子さんは、1996年に『恋』という作品で、直木賞を受賞。 98年には『欲望』で島清恋愛文学賞。他にも数々の賞の受賞暦がある作家さん なんですが、恋愛小説の実力は随一で、特に、恋に落ちた男女の心の内面を 書かせると、もう絶品……と、読者から高い人気を集めている方です。

◆本書の概要 そんな小池さんの『二重生活』は、ソフィ・カルというフランスの現代アーティスト による、「文学的・哲学的尾行」というものがキーワードになっています。

この尾行は、ゴシップ的な好奇心や執着心ではなく、唯、対象者を尾行する という行為から自分自身の内面を見つめ、哲学していく――といったようなことなん ですが……。ものすごく簡単に説明すると、「特に目的を持たない尾行」です。

ソフィ・カルは、この「特に目的を持たない尾行」を、実際に自分で行った過程を 『本当の話』という本で発表しています。ほとんど面識のない1人の男性を尾行 したり、逆に探偵を雇って自分自身を尾行させるということもしています。

そして、この『二重生活』の主人公、大学院生の白石珠は、ある日ふとした きっかけから近所に住む既婚男性・石坂に対して、無意味な尾行を実践していく ところから物語は始まります。

その尾行のなかで、珠は、石坂の?ある秘密?を知ってしまうのですが……。

続きは、ぜひ新刊ラジオのオーディオドラマでお楽しみ下さい。

二重生活

二重生活

二重生活

大学院生・白石珠は、ふとしたきっかけから近所に住む石坂に対して「文学的・哲学的尾行」を始め、石坂の不倫現場を目撃してしまう。珠は、尾行を繰り返すうちに、同棲中の恋人・卓也への浮気を疑うようになるのだが――。現代アーティスト、ソフィ・カルの芸術観を内包し、人間の二重性を問う哲学的な意欲作!