新刊ラジオ第1542回 「スタートアップ! ― シリコンバレー流成功する自己実現の秘訣」
終身雇用制が崩壊した今の世の中では、すべての人が「一人の起業家」として生きていかなければなりません。変化の早い世の中に対応し、競走に打ち勝ち、本当になりたい自分になっていくために必要なこと、それは「スタートアップの精神・発想」です。シリコンバレーで活躍する起業家であり投資家の著者が教える、自己実現の秘訣。あなたの仕事人生をこの一冊とともに見つめなおしてみて下さい。
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概要
こんにちは、ブックナビゲーターの矢島雅弘です。
「人はみな起業家である」
これはノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌスの言葉です。
原始時代、自給自足で暮らしていた人間は、自分の食い扶持を自分で稼いでいま したね。その後、分業ができるようになり、身分や役割が分担され、近代資本主 義が誕生する頃には、誰かに雇われて働くという労働形態が一般的になりました。
しかし、度重なる不況や経済のグローバル化、単純作業のロボット化などにより、 経済社会はまた原始に戻りつつあるのかもしれません。
さて、今日は「一人の起業家(アントレプレナー)」として生きていく心構えを 教えてくれる本をご紹介しましょう。
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◆今日の一冊 『スタートアップ! シリコンバレー流 成功する自己実現の秘訣』 (リード・ホフマン/著 ベン・カノースカ/著 有賀裕子/翻訳 日経BP社/刊)
◆この本をひと言でまとめると 「シリコンバレー流 自己実現の秘訣」
◆著者について リード・ホフマンは、リンクトイン(Linked in)の共同創業者兼会長、ベンチャ ーキャピタル、グレイロック・パートナーズの共同経営者。起業家であり投資家。 以前はペイパル(paypal)の上級副社長も経験している シリコンバレーのビジネスマンです。
ベン・カノースカは、起業家であり著述家。CNNやCBSなどのテレビ番組にも出演 されている方です。
会社のブランドよりも“自分のブランド”が大切な理由とは?
「スタートアップ」というタイトルですが、本書は経営者向けに企業のスタート アップを語った本ではありません。主題は“一個人の自己実現” に関する内容 となっており、起業するか勤めるかは別として、あなたが一人の起業家としての 精神を持ち、これからのビジネス社会を生き抜くための心構え=“自分ブランド” 構築のノウハウを教えてくれる内容です。
本書に序文を寄せている伊藤穣一さんは、“自分ブランド”の重要性について、 次のように語っています。
日本ではブランドや人脈の重要性を誰もが知っているが、「目先の売上のため に人脈を活かそうとしている」という印象を生む人たちのせいで、「コネづくり」 「人脈作り熱心な人」という言葉には、よくないイメージがある。そのうえ、ほ とんどの日本人は勤務先のブランドについてあれこれ考えるが、いまの世の中で は、会社のブランドよりも、”自分ブランド”のほうがはるかに大切である。 (P4より)
終身雇用制が崩壊した今、このような論調はいたるところで目にするようになり ました。著者のリード・ホフマンも、“過去のエスカレーター式のキャリアパス は崩れ、成果主義に基づく短期契約がメイン、終身雇用は期待できなくなった” と本書で述べています。
これから労働者が生き残っていくためには、自分自身が一人の“起業家”として の精神を持って仕事に臨まなければならないのです。
あなたの競争上の強みはどこにある?
「スタートアップの精神」を持ち続けるためには、どのような生き方をすればい いのでしょうか。そのために必要なものを、本書は2章から7章で、6つの項目 にまとめています。それぞれをひと言で言い表すと凡そ次のようになります。
第2章……自分の資産、大志、市場環境の3つを組み合わせて競走上の強みを身 につける。
第3章……ABZプランニングの手法を使って、自分の強みを活かすための最優先 プラン{Aプラン}をつくり周りからの意見や教訓をもとに何度も改良しながら 練り上げていく。
第4章……実を伴った末永い人間関係を培い、それを土台にして強力なプロフェ ッショナルネットワークを築く。
第5章……人脈を大切にし、機転を利かせ、活動を絶やさずにいることによって、 機会を見つけたり、生み出したりする。
第6章……仕事上の機会を追求しながら、正確に状況を見極め、賢くリスクをとる。
第7章……よりよい機会を探し、キャリアについて、これまで以上に優れた判断 を下すために、情報網から知恵を引き出す。
今回は、2章の内容から、競走上の強みを理解する考え方をご紹介します。 本書では、自身が持つものを3つの視点から見つめ直すことで、競走上の強みを 確認するノウハウが書かれています。
{大志} 競走上の強みを発揮する上で、大志は非常に重要なのだそうです。あなたが「本 当にやりたいこと」「人生の使命だと思っていること」をキチンと言葉で説明す ることができれば、その大志を実現化する環境にも入りやすいそうです。自分自 身のモチベーションはもちろん、周りの協力も得られやすいからです。
その上で著者は、“大志は時とともに進化していく”と忠告をしています。これ は自分の成長や、世の中の移ろいに応じて、“やりたい事は変わっていくはず” ということです。
お金がなくても見つかる、ソフトな資産って?
{資産} 資産は、「ハードな資産」と「ソフトな資産」の2つに分けて考えるのだそうで す。「ハードな資産」とは、現金など形のある持ち物のことです。ハードな資産 があると、経済的なゆとりを持つことができます。例えば、6ヶ月働かなくても 暮らしていけるくらいのハードな資産を持っていれば、その間は仕事をせずに休 暇をとって、新たな技能や資格を取得することもできます。夢を追いがちな人ほ ど忘れがちかもしれませんが、これもあなたの強みのひとつなのです。
「ソフトな資産」とは、お金で手に入れることができない資産です。たとえば、 「脳に収まる知識や情報」「仕事に活きる人脈と人間関係」「鍛え上げた技能」 「評判」「得意分野」「自分ブランド」などを指します。 これらソフトな資産は、形がないので、過小評価をしてしまう人が多いそうです が、これをキチンと評価するために、著者は「何らかの交流会に出かけていって、 その参加者に仕事上でどういった悩みやニーズがあるのか、尋ねる」という方法 を勧めています。ここで、「自分ならすぐに解決できる」と思い当たる事柄があ れば、それがあなたのソフト資産ということなのです。 また、もし自分自身が解決できなくても、自分の知り合いが解決できると思った ら、その“人脈”もあなたのソフト資産になります。
{市場環境} これは顧客のニーズをつかむということです。あなたがどんなに優れた「大志」 や「資産」を持っていても、それを「欲しがる」顧客がいなければ利益にはつな がりません。
例えば、英語と中国語ができる日本人は、中国向けサービスを展開する日本の企 業では強みを生かすことができますが、ドイツ向けのサービスを展開するイタリ アの企業では市場環境に合わないということになります。
このように市場環境を踏まえ、自分の資産を把握し、自分の大志が向く方へ動く ことが競走上の強みを理解する上で重要な要素なのだそうです。
【まとめ】 「スタートアップの精神を持ち続ける」ことは、常に学び続け、常に反省し、常 に新しいものを追い求めることとほぼ動議であり、なかなかハードルは高そうで す。そこをフォローする一つとして、本書では各章の終わりには「自分への投資 の具体例」(ToDoリスト)がつけられています。これを効果的に利用すれば、あ なたの人生において“これから何をすべきか”が明確に考えられるようになるで しょう。
これを使って、まずは自分の仕事人生を一度深く考えてみてはいかがでしょうか。
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