新刊ラジオ第1540回 「なぜ君は働くのか 松下幸之助 運命の言葉」
本書は、若いビジネスパーソンの仕事の悩みに対して、経営コンサルタントの小宮一慶さんがアドバイスしてくれる内容です。良い仕事をするには、知識や技術ももちろん大切ですが、そういった学習して身につけるものは、正しい考え方のうえにあって、はじめて成り立つものです。本書では、小宮さんが精選した松下幸之助さんの言葉を引用しながら、物事の根底にある「正しい考え方」というものを教えてくれます。
読む新刊ラジオ 新刊ラジオの内容をテキストでダイジェストにしました
概要
こんにちは、ブックナビゲーターの矢島雅弘です。
先日、飲み会に参加してきたのですが、“社会人の飲み会”って、どうも仕事の ぐちがよく出てくるように思います。僕もなるべく言わないように気をつけては いるんですが、居合わせた人のぐちを聞いているうちに「実は自分も…」と、 ついポロッと出てしまいます。
もちろん、飲み会でぐちを吐き出すことでストレス解消になって、次の日からの 仕事に前向きになれるのならいいのですが、“愚痴大会”のように暗くなって しまうのはあまり健全ではないように思います。
せっかく楽しい酒の席ですから、せめて前向きになるような努力をしたいもの です。そこでふと思いました。こんなとき、名著や偉人の言葉を参照するのは なかなか良い方法なのではないか。
そんなことを思い、本日紹介する本を取り上げてみました。
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◆今日の一冊 『なぜ君は働くのか 松下幸之助 運命の言葉』 (小宮 一慶/著 主婦の友社/刊)
◆この本をひと言でまとめると 「松下幸之助の言葉から正しい考え方を学ぶ」
成功する“正しい考え方”を身につける
経営コンサルタントや、ビジネス書著者として人気の小宮一慶さんの新刊です。 『ビジネスマンのための「○○力」養成講座』(ディスカヴァー21/刊)など が代表作としてあげられます。
本作は、比較的若いビジネスマンの悩みに対して、松下幸之助さんの言葉を引用 しながら、(悩みに)答えていくという内容です。
経営コンサルタントとしてすでに成功されている小宮さんが、なぜ、わざわざ 松下幸之助さんの言葉を引用しながら悩み相談に答えるというていをとったのか というと、これは小宮さんがコンサルタントとして大切にしている哲学に理由が ありました。
あとがきからの引用ですが、小宮さんはこのように書いています。
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私は経営コンサルタントとして、他の方にアドバイスを差し上げるのを仕事と していますが、経営だけでなく、人生についてもアドバイスを求められることが あります。自己流のアドバイスを差し上げることは、絶対にしてはいけないこと です。そのために、成功され、長い間尊敬されている経営者の本、論語、仏教書 などをよく読みますが、自分の軸や考え方が間違っていなかったかを反省する のに『道をひらく』は私にとっては最適の書となっています。 (P239より)
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『道をひらく』は、小宮さんが寝る前、毎日のように読んでいるという、 松下幸之助さんの著書です。小宮さんは、自分に相談してきた相手に対しては、 いつでも“自己流のアドバイス”はせずに、自分の軸となっている “松下幸之助さんの考え方に基づいたアドバイス”をするようにしているのだ そうです。
なぜなら、松下幸之助さんの言葉には“成功するための正しい考え方”が凝縮 されていて、尚且つ、“長い間尊敬されている”からです。小宮さんは、 “成功するためには、知識やスキルも必要だけれど、それだけではなく、 正しい考え方を身につけて欲しい”と本書で語っていて、そういった思いから、 本書のような形をとったのだそうです。
本書を読む際には、松下幸之助さんが、当時、松下電器産業を経営をする中で 見つけてきたビジネスの真理を、現代の経営コンサルタントとして活躍されて いる小宮一慶さんがどのように捉えているのか、そして読者はそれらを どうやって自分の仕事に役立てていきたいのか。 そういった部分に注目して読まれることをオススメします。
仕事の“やりがい”の見つけ方
では、本書の中から一つ、相談内容をご紹介しましょう。
「仕事にやりがいを感じられないという26歳の女性の悩み」です。
■悩めるビジネスマン(P32〜) いまやっている仕事にやりがいを感じません。楽しくありません。 仕事をサボったり手を抜いているわけではないのですが、上司に言われるまま、 つまらない仕事に時間を費やしているのが辛いです。
このように悩む気持ち、分からなくもないです…。 特に相談者の方は“個性を大事に”とか、“夢を持て”と言われて育った世代 でしょうから尚更そうかもしれません。自分がやりたかった仕事に就けなくて 今の仕事に就いたという方や、自分の技能を発揮できない職場に身を置いて いる方は、こういう悩みを持ちやすいのかもしれません。
これに対して小宮さんは、 “世の中につまらない仕事などありません。どれも大切な仕事なのです” と答えています。
そして、“仕事が楽しくない、何のために働いているのかわからないという人は、 仕事を食べるための手段だと思っているからつらいのではないでしょうか”と、 質問を投げかけています。
“仕事を食べるための手段”と考えている方は、良くも悪くも多いのでは ないでしょうか。趣味や夢を持っている方は、仕事は食べるための手段で、 趣味は別、夢は別、そう考えている方も多いと思います。
そして、小宮さんは、こんな松下幸之助さんの言葉を送ってくれます。
◆「何か事をするときに、そこに喜びを持つことはなくてはならない。 それが生きがいになる」
“でも、今やっている仕事がつまんなくて、喜びなんて見つけられないよ…” なんて思う方もいると思います。そこで、もうひとつ、松下幸之助さんの言葉を 聴いてみてください。
◆「誰にでも、与えるものはある。笑顔を与える。笑いを与える。 求める姿勢から、与える姿勢へ転換を図りたい」
まとめ
本書ではこのように、『なぜ働くのか』というテーマで選ばれた若者の相談に 対して、小宮さんが松下幸之助さんの言葉を引用しながら、 物事の根底にある「正しい考え方」というものを教えてくれます。
良い仕事をするには、知識や技術ももちろん大切ですが、そういった学習して 身につけるものは、正しい考え方のうえにあって、はじめて世の中のために作用 するのだということを、改めて考えさせられる一冊でした。
本書は若い方におすすめしますが、ある程度仕事を経験をされた方が読んでも 色々な気づきを得られると思います。もしくは、部下や後輩の相談に乗ることが 多い方が参考にしてもよいかもしれません。
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