新刊ラジオ第1525回 「社長はなぜ、あなたを幹部にしないのか?―イエスマンこそが会社を救う」
社長とは、どのような経営幹部を求めているのでしょうか。それは、価値観を共有し、スピード感を持って仕事を進捗できる人物です。本書は、会社組織で昇進する社員の心構えや、できる管理職になるための教訓を、具体性を持って伝えてくれます。経営幹部を目指す人には、発見の多い役立つ一冊となるでしょう。
読む新刊ラジオ 新刊ラジオの内容をテキストでダイジェストにしました
概要
こんにちは、ブックナビゲーターの矢島雅弘です。
リスナーの方の多くは、会社勤めのビジネスパーソンなど思いますが、その中で、 ゆくゆくは出世して社長になりたいとか、経営幹部になりたいと思っている方は いらっしゃいますか? そんな方に、今日の本をオススメしたいと思います。
さて、あなたの会社の社長は、一体どのような人材を求めているのでしょうか。 今日ご紹介する本の著者、小山昇さんは、中小企業の経営者から絶大な人気を誇 る方です。
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◆今日の一冊 『社長はなぜ、あなたを幹部にしないのか?―イエスマンこそが会社を救う』 (小山昇/著 日経BP社/刊)
◆この本をひと言でまとめると 社長が幹部にしたい人物像をまとめた一冊
◆著者について 小山昇さんは、株式会社武蔵野代表取締役社長。東京経済大学を卒業後、ダスキ ンの加盟店業務を手掛ける日本サービス・マーチャンダイザー株式会社(現在の 武蔵野)に入社します。しかし1年で退職し、貸おしぼり事業を手掛ける株式会社 ベリーを設立。その後、武蔵野に再び入社し、4年後には社長に就任。赤字続きだ った武蔵野で社長として経営改革を断行し、高収益企業へと成長させました。
武闘派ぞろい・不正だらけの会社を建て直し
小山さんが就任した当時の「武蔵野」は、それはめちゃくちゃな環境で、当時の エピソードを読むと、小山さんはいったいどんな魔法を使ったんだ?!と、引き 込まれて読んでしまいました。
当時の有様の“さわり”だけご紹介しますが……。 先輩社員は「教育」と称して新入社員をファミレスに連れ出し雑談。しかも雑談 の内容は、世間話や馬鹿話ではなく、なんと「不正のやり方の伝授」。もっとも ひどいときは、社員の20%が何らかの不正を働いていたのだとか。 社員は、暴走族やスケバン上がりの武闘派ぞろいで、スーツを着ないのは当たり 前、サンダルやバミューダーパンツで出社してくるという「夏のリゾート地かよ っ!」なんていう状況だったそうです(ちなみに、小山さんは5000円の手当てを 出してネクタイ着用を促したそうです……)。
さて、そんな状況を、小山昇さんはどのように改善し、どうやって高収益企業に 成長させてきたのか? その答えが、本書に書かれています。そして、多くの会 社社長は、“どのような経営陣”を求めているのか。すなわち、会社組織で昇進 するための”社員としての心構え”とはどのようなものなのか、本書で知ること ができます。
まずは、小山さんが、「会社組織」というものをどのように考えているか、とい うところですが・・・小山さんは、「会社とは社長の決定を社員が実行する組織」 だというふうに捉えています。会社はスピードが大事ですから、社員の意見を聞 いて、調整して、また意見を聞いて、みたいなことをしていては遅いわけです。 ですから、社長が「判断」したものを、社員が滞りなく遂行するのが、会社のあ るべき姿だと考えているわけです。
管理職になる人物の姿とは
それを踏まえて、小山さんは、管理職になる人物の姿とは、「社長の意思決定を より迅速に、形を変えることなく遂行してくれる人物」といいます。本書のサブ タイトルに「イエスマンこそが会社を救う」とあるので誤解した方もいるかもし れませんが、このイエスマンとは、「言いなり人間」ではなく、「社長と意思の 共有」ができている社員」のことです。つまり、「判断や意思決定をするときに、 社長ならどのように考えるだろうか」という視点でものを考えられる人こそが経 営幹部の候補となる、という意味なのです。
今ご紹介したのは、第一章【心構え編】「社長の決定に不満があるなら会社を辞 めよ」で語られている内容です。ここでは、小山さんが考える「成長する会社の あり方」や、そこに勤める「社員の意識」というものについて語られています。 「これができる人は役員になれる」とか、「「社長候補にしたい人はこんな人物 だ」と、あまりに歯切れよく具体的に書いてあるので驚いてしまいましたが、徹 底した現実主義で、物事をシンプルに見ている小山さんに共感しました。
さて、続いて、第二章【戦略編】「変化を厭う管理職は必ず淘汰される」からも、 一部引用してご紹介しようと思うのですが、まず、こちらで書かれている全体像 としては、管理職(もしくはチームリーダーでもいいかもしれません)としての、 ビジネスでの戦い方です。
「勝てば官軍」という言葉がありますが、小山さんは、「ビジネスに汚いことな どない。負けて会社が潰れれば家族が路頭に迷う。そのほうがよほど汚いことに なる」という考えでもって、ビジネスを広げるためのテクニックや、会社のベー スアップを図る具体的なノウハウをこの章で解説しています。
まとめ
例えば、小山さんが独立して貸おしぼりの会社で実行した戦略のエピソードをご 紹介しましょう。小山さんが創業したエリアには、すでに貸おしぼり会社が7社 もあって、新規参入した小山さんの会社は苦戦を強いられました。そこで取った 戦略は、エリアで最大手の飲食店2店に対して、原価ぎりぎり儲けも出ないよう な金額で営業したのです。最大手との付き合いがあるということで、「ああ、そ こと取引があるなら安心だね」と、別の飲食店にも入り込みやすくなったのです。 これは小が大に勝つ「ランチェスター戦略」に則った戦い方ですね。
こういった内容が、体験談をもって解説されています。
◆まとめ 本書の内容は、もちろんすべての会社に当てはまるわけではありません。しかし、 実際このように考えている経営者は多く、特に昭和の時代を生き抜いた社長が経 営する中小企業の場合、非常に当てはまる部分が多いと思います。
小山昇さんの話っぷりは、非常に説得力があって、面白いです。ノウハウ本や実 用書からは決して得ることのできない学びを、ぜひ本書から受け取って下さい。
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