新刊ラジオ第1522回 「自分年金をつくる――今からでも遅くない!」
将来、年金はいつから貰えて、どのくらい貰えるのでしょう? 政府から“公的年金の支給開始年齢の引き上げを検討している”というショッキングなニュースが流れたのは記憶に新しいところです。年金なんて若いからまだ考えなくていいと思っているのならば、それは間違い。若いからこそ老後の生活を確かにするために、国に頼らない自分年金づくりが、今から必要となってきます。
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概要
こんにちは、ブックナビゲーターの矢島雅弘です。
老後や年金制度に不安を持っている方は多いと思います。毎月の支払額が意外と 大変なのもそうですし、将来ほんとうにもらえるのか。制度が破綻するリスクは ないのか。お金のことですから、気になりますよね。
僕はそろそろ30歳になりますが、年金というとどうしてもネガティブなイメー ジがあります。……なんだか、生まれたときから借金があるみたいな(^^;)
でも、先進国では有名な社会保障制度なんですよね。このメルマが読者の方も年 金を納めていて、国民年金の方、厚生年金の方、いらっしゃると思います。今日 取上げた本は、特に国民年金の方、そして、若い世代の方におすすめしたい一冊 です。
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◆今日の一冊
『自分年金をつくる 今からでも遅くない!』 (岩崎日出俊/著 ベストセラーズ/刊)
◆この本をひと言でまとめると 「将来、年金は本当に貰えるの? 自分の年金を自分で作る時代がやってくる」
◆著者について 著者の岩崎日出俊(いわさき・ひでとし)さんは、1953年、東京生まれ。早稲田 大学政経学部政治学科卒業後、日本興業銀行に入行。スタンフォード大学経営大 学院で経営学修士(MBA)を取得。22年間の興業勤務を経て、1998年より2003年 まで、JPモルガン、メリルリンチ、リーマン・ブラザーズの投資銀行各社におい て、マネージング・ダイレクターとして企業合併・買収の最前線に関与してきま した。現在は、経営コンサルタント会社インフィニティ代表取締役。
◆おすすめの読者 ◎20代後半〜30代の若い読者 ◎老後や年金制度に不安を持っている方
受取り額、4,790万円もの不公平制度
金融業界のエキスパートが書かれた本ですが、年金制度というと、まず思い浮か ぶのは世代間の不公平感です。本書によれば、現在71歳の人と31歳の人との間で は、なんと……
受け取り額で、4,790万円もの差がある!!!!
とのことなんです。
つまり31歳の人は71歳の人に比べて、4,790万円も損する仕組みになっています。 どういうことかというと、71歳の人は生涯にわたって払う保険料よりも受け取る 年金の方が3,090万円も多い「もらい得」。これに比べ、31歳の人は払う保険料 の方がもらう保険金よりも1,700万円も多い「払い損」になるのです。
さらに、政府からは、“公的年金の支給開始を68歳、もしくは70歳に引き上げる ことを検討している!”というショッキングなニュースが流れました。記憶にも 新しいところですね。いったんは引っ込められましたが、おりを見て再提出して くるのではないでしょうか。若い僕たちにはまだ先のことで深刻に捉えていない 人も多いかと思います。しかし、実は今から老後のために、国に頼らない自分年 金を作る必要性があるのです。
著者の岩崎さんはこのように言います。 「年金や社会保障に関しては、政府のいうことを信じているとバカをみることに なりかねません。自分の生活は自分で守る。そのためにも公的年金を補充する、 自分年金をつくりましょう。これが本書の提言です」(P12〜13より)
なるほど……と言う感じですが、でもだからといって勘違いしてはいけません。 たしかに現在の公的年金制度は“100%安心”ではありません。けれどもこの制 度が完全に破綻してしまうのか……といえば、これはまったく頼れなくなるとい うものでもないのだそうです。本の中で提案しているのは、あくまでも、公的年 金を“補完する”ことなのです。本当に必要なのは、将来を冷静な目で見すえる 投資家の「目」であると、岩崎さんは言います。
残念なことに、将来を予測すると、「日本の国力は着実に衰退していく」という 現実があります。国家破綻やハイパーインフレは避けて通ることができても、穏 やかな国家の衰退を避けて通るのは避けられないのではないかと、岩崎さんはみ ています。
なぜでしょうか? その根拠として挙げられているのが、超高齢社会が到来する ことです。
1人の高齢者を、1.3人の生産者人口 が支える時代がやってくる
2012年には団塊の世代が65歳を超えます。そして予測では、43年後の2055年には 高齢化率が40.5%に達します。1人の高齢者を1.3人の生産者人口(15歳〜64歳) が支える時代がやってきます。
すると、いまの年金制度は根本的な見直しが必要となってきます。現役時代の保 険料は上がり、高齢者への支給額は減らされます。生活保護も厳しくなります。
「ちょっと、それは憲法違反じゃないの?」と思った方もいると思います。 しかし、残念ながらそう叫んだところで、どうしようもないのです。リアルに考 えると、そもそも今の憲法が、日本の全人口の3割とか4割とかが45歳以上になる 社会を想定していなかったのです(おそらく、現実にあわせて憲法を変えるので はないかと、僕は思っていますが……)。
では、そんな世の中が来る前にどうしたらよいのでしょうか。そこで、本書で言 われているのが、「自分年金を作ること」。「自分の生活は自分で守る」という 姿勢を堅持することです。
将来、定年になったり、失業してしまって、給与などの所得を得られなくなった ときのために、今から「備える」「資産をもつ」ということを実行しなければな りません。それは、「不動産」でも「預金」でも「株」でもいいのだそうです。
また、減価しにくい資産をもつことが必要で、しかも「円ベース」が基本。大半 の日本人は老後も日本で生活するでしょうから、資産は円ベースになります。け れども、「自分年金をつくるなんて余裕ないよ」という声が聞こえてきそうです が、定年後の生活を支えるのは、あくまでも公的年金。
それを補充するだけの自分年金をつくりましょう、具体的には7万円ぐらいの自 分年金を上乗せしましょうというものです。一生涯に渡って自分で引き出せる自 分年金づくりに成功すれば、ゆとりのある老後生活がおくれるのだそうです。
本書では、成功例や失敗例を多く紹介しながら、「自分にあった自分年金のつく りかた」を探っていきます。
たとえば……
●若いときから入る積立貯蓄型の生命保険。 ●家賃収入のある不動産を購入する。 ●社内積立、財形貯蓄、社内株式に定期預金
などなど。
あなたでもできる、自分年金の作り方
身近にいますぐ始められる自分年金や、ムダな出費・家計を見直して、コツコツ と始める方法、節税メリットを利用するなど、いますぐ役立つ知恵が満載です。 20代だと金融の知識はむずかしいかもしれませんが、30代くらいになると、お金 がどういうものか分かってくると思うので、そろそろ始めどきかもしれません。
本の中では、投資信託のワナ、銀行員や証券会社のセールスの甘い言葉に対抗で きる知識まで伝授してくれています。放っておくと毎年1%も手数料が取られる ような投信を買ってはいませんか? これでは自分年金にはなりません。基準価 額を減価させている毎月分配型の投信は「タコが自分の足を喰う」ようなものだ と言っています。知らずにやっている人はいませんか??
他に、本の中で惹かれたのが、「賃貸用不動産、ワンルームマンションを買う」 という項目です。ワンルームマンションを持つ人によれば、「手持ち資金は0で 買え、減価償却費や借入金利を経費として落とせるので節税にもなる。購入も管 理も不動産会社の営業マンが全て手伝ってくれるので、仕事をしながらマンショ ン経営ができる」のだそうです。
その他にも具体的に、やっていい株式投資、自分にあった自分年金のつくりかた が載っていてとても参考になります。老後なんてまだまだ先のこと、年金なんて 納めてんだからもらえるんじゃないの……などと甘く考えていたら、損をしてし まうかも?!
若いうちから将来の自分のために、自分の生活は自分で守る。これが基本なので すね。勉強になりました。
◆まとめ 身近にいますぐ始められる自分年金や、ムダな出費・家計を見直して、コツコツ と始める方法、節税メリットを利用するなど、いますぐ役立つ知恵が満載です。 20代だと金融の知識はむずかしいかもしれませんが、30代くらいになると、お金 がどういうものか分かってくると思うので、そろそろ始めどきかもしれません。
なので、本書のオススメ読者層は、20〜30代の社会人。 特に、収入が安定し始めて、将来の見通しもついてきた、という方にオススメです。
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