だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第1520回 「空海さんに聞いてみよう。 心がうれしくなる88のことばとアイデア」

話題の住職・白川密成さんの著書第2弾! 難解といわれる空海の著書を、平易な文体と白川さんの言葉で構成されています。“空海を身近に感じてほしい”という思いでつくられた本書は読みやすく、そして悩んでるときに役に立てられる一冊です。

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概要

 こんにちは、ブックナビゲーターの矢島雅弘です。

 受験シーズンもそろそろ終わりを迎えようとしています。大学の受験生とすれ 違うこともありますが、帰りの電車が込む!! ということも減ってきました。

 さて、久々にみなさん、受験のテストをひとつやってみませんか?

 天長5年(829年)に、空海が庶民教育や各種学芸の綜合的教育を目的に創 った私立学校の名前は何か?(答えは本編で読んでくださいね!)

 今回は、この“私立学校”を創った空海の名言を教えてくれる本です。

***

◆今日の一冊

『空海さんに聞いてみよう。 心がうれしくなる88のことばとアイデア』 (白川密成/著 徳間書店/刊)

◆この本をひと言でまとめると  「身近に“空海さん”の言葉を読める一冊」

◆著者について  白川密成さんは、1977年生まれの栄福寺住職。2001年から、糸井重里さん主宰 の「ほぼ日刊イトイ新聞」において「坊さん。」の連載を開始。この連載は、後 日書籍として刊行され、発売三ヶ月で六刷りの版を重ねる人気作となりました。

◆おすすめの読者  ◎仏教に興味がある(但し入門者向けです〜)

白川密成さんが、空海を身近にします!

 空海は、平安時代を中心に生きた僧侶です。弘法大師(だいし)の名で知られ、 真言宗の開祖である空海は、教育者としても知られ、日本で初めて庶民に開かれ た学校である「綜芸種智院」を創立した人物です。本書は、そんな空海が残した 著作の中から88の言葉を現代語訳し、どのように私たちの学びに生かせるかをつ づった一冊です。

 「空海の著者は難解である」とされていますが、本書に向けた白川さんの思い として、“空海を身近に感じてほしい”というものがあるそうなんですね。です から、白川さんが「あっ、これは普段の生活の中でも気軽にヒントにできそうだ な」という言葉を探して、さらに「僕はこんなふうにやってみようと思うんです。 そして皆さんにもご提案します」という形で白川さんの言葉を添えて、読みやす く、そして悩んでるときに役に立てられるように作られています。

 「空海の思想の深い部分を知ろう」というよりは、空海という人物を身近に感 じて、ちょっと言葉を読んでみようかなという、気軽に読める一冊になっていま す。

 本書の構成としては、まず紹介する「言葉」の前に、その言葉をヒントにした Q&Aのような「問答」があります。これは「今、空海さんがいたとしたら、こ んな言葉で答えてくれるんじゃないかな」という、白川さんの創作です。次に、 弘法大師(空海さん)の著作を現代語訳したものと、漢文書き下し文で収録し、 その言葉にまつわる、白川さんの短い文章が収録されています。

 さて、それでは、空海さんの言葉をご紹介していきましょう。まずは、これを 読んだとき、「ええ!? あ、でも考えてみればそうだよな……」と、納得して しまった、そしてニヤリとしてしまった言葉をご紹介しましょう。

空海の言葉 今回は3つ紹介します!

<問答 その1> 「弘法大師は、やっぱり筆を選びませんよね?」

弘法大師:   選びます。製作もさせて吟味します。   技術のすぐれた職人は利れる刀を用い、   文字を巧みに書く人は必ず良筆を用いるものである。

<解説>  「弘法筆を選ばず」と言いますが、このことわざとはまったく逆の意味の言葉 を残していたなんて!(笑)でも、よく考えてみると、これはもっともで、大切 な教えなんですよね。プロのスポーツ選手や、楽器の演奏家、職人、技術屋さん たちは、自分の道具にこだわり、そして道具を大切にして、一流の仕事をするも のですよね。

 白川さんは「もし、普段の生活において何かがうまくいかないな、と思うとき、 道具を今まで以上に大切にしてみたり、何かを始めるとき、道具にもこだわって みるのも、いい方法かもしれません」とアドバイスしています。

 実は僕も、最近、筆記用具を新調しました。古いペンで台本に書込みを入れて いた今までに比べて、原稿チェックが楽しくなりました(笑)

<問答 その2> 「自分を磨くにはどうすればいいですか?」

弘法大師:   時間をかけなさい。   自分を磨きぬけば、他人のための行に応じることができますが、   そのためには時間を積まねばなりません。

<解説>  仏教、とくに大乗仏教においては「他人のための行為(利他の行い)」をとて も大切にします。しかし白川さんは「それは、ある意味で“恐ろしさ”を持って いると感じることがある」と書いています。

 どういうことだと思いますか?

 これは「自分はいいことをしているのだ」という気持ちが、どこか傲慢な言動 や態度ににじみ出てしまうことが、人にはあるからだ、と言います。ですから、 うぬぼれず、素直に、他者を上手に助け与えることができるのは、自分を磨きぬ けた後である、というくらいの緊張感をもってもいいと考えているそうですね。 そして、自分を磨くには「時間をかけること」。まずは、自分を正しくととのえ ること、これを頭に入れておくといいかもしれません。

<問答 その3>  「うまくいくためのもっとも大切な要素は何でしょうか?」

弘法大師:   人です。   物の盛んになることと、すたれることは、必ずその人による。

<解説>  空海さんは、日本で始めて庶民に開かれた「学校」を創立した教育者です。こ の言葉は、その学校に関する文章のなかで出てくる言葉です。物事をうまく運ぼ うとすると、新しい経営手法を取り入れたり、最新の機械を導入したり、いろい ろするかもしれません。それらももちろん大切ですが、弘法大師(空海さん)は、 ここでもっとも大事なことは、「人である」と断言しています。

 たとえばお金儲けにしたって、お金を生むのも使うのも人なのだから当然のお 話なんですよね。頭でっかちになると、意外と忘れがちなのではないでしょうか。 もしあなたが、何かに行き詰まっているとしたら、あなたの考えや、構想から、 生きている「人」や「その心」のことが、抜け落ちてはいなかったか、じっくり 考えてみると発見があるかもしれません。

まとめ

 本書は4つの章立てになっています。

「人はなぜ生きているのでしょうか?」など、観念的な言葉から……

「道に迷ったとき、どうしましたか?」 「こんな僕を活かせる役割はありますか?」  といった、悩んでいるとき快方にむかえるような言葉……

「勉強で大切なことはなんですか?」 「果てしなく遠くまで行くには、どうすればいいのですか?」  など、人生を前に進める言葉……

「死ぬとはなんですか?」「空(くう)ってなんですか?」 「仏なんて見たことがないので、いないと思います」  なんていう、生死の言葉など……

 ぎゅっと一冊にまとめてあって、読みやすく、満足感の高い一冊でした。著者 の白川さんの狙い通り、空海さんを身近に感じられました。仏教はむずかしい、 堅苦しいと思っている方こそ、こちらの本、読んでみてください。視野が大きく 広がるきっかけになるかもしれません。

***

 僕の名前は「矢島雅弘」ですが、マサヒロという名前は色々な文字があるので、 署名を口頭で伝える時に、「みやび、と、弘法大師のコウです。」とよく口にし ます。その時、ふと気になって「弘」ってどういう意味の漢字なんだろう?と調 べてみました。

 どうやら「広める」という漢字とほぼ同義のようです。  弘法大師は「法」(おそらく仏法?)を広めた偉人でした。では、僕は雅(みやび) を世に広めるべく、名づけられたのでしょうか?何か、壮大な使命を感じますね。

 ……後日談ですが、父親に確認したところ、「本当は雅博にしようとしたんだ けど、神社に聞いたら、字画が悪いですね〜、って言われて、雅弘になった。」 と言われました。

 …………。

 そんなもんですよね!(笑)

空海さんに聞いてみよう。 心がうれしくなる88のことばとアイデア

空海さんに聞いてみよう。 心がうれしくなる88のことばとアイデア

空海さんに聞いてみよう。 心がうれしくなる88のことばとアイデア

話題の住職・白川密成さんの著書第2弾! 難解といわれる空海の著書を、平易な文体と白川さんの言葉で構成されています。“空海を身近に感じてほしい”という思いでつくられた本書は読みやすく、そして悩んでるときに役に立てられる一冊です。