新刊ラジオ第1514回 「弁護士探偵物語 天使の分け前」
母子殺害事件の弁護人になった「私」は、裁判のあり方を巡って司法と検察と対立。1年の懲戒処分を受ける。処分明けに事件で妻子を奪われた男が現れ、「私」は再び事件を追うが、周囲で不可解な殺人が起こり……。宝島社第10回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。現役弁護士が描くハードボイルド法曹ミステリー!
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あらすじ
こんにちは、ブックナビゲーターの矢島雅弘です。
あなたは弁護士というと、どんなイメージがありますか?
「真実を暴くために奮闘する人たち」というイメージもあれば、 「犯罪者であろうと刑を軽くするために動く」というイメージもあるでしょう。
どちらにしても、多くの人にとっては、ドラマや映画のイメージが強いのでは?
近年では裁判員制度が取り入れられて、実際の法廷を経験したことがある方も いるかもしれませんが、やはり現実の法廷や、弁護士、検事の実態なんかは…… わからないところが多いと思います。
今回、紹介するのは「このミステリーがすごい」大賞を受賞したミステリーで す。作者がちょっと変わった経歴を持っていることでも話題になっています。 『このミステリーがすごい!』大賞とは? ミステリー&エンターテインメント作家の発掘・育成を目指す新人賞です。 『このミス』大賞受賞作品には、シリーズ累計850万部突破の『チーム・バチスタ の栄光』(海堂尊/著)や、137万部突破の『四日間の奇蹟』など、ベストセラー や映画化された作品が多数あります。
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◆今日の一冊
『弁護士探偵物語』 (法坂一広/著 宝島社/刊)
◆この本をひと言でまとめると 「現役弁護士が描くハードボイルド法曹ミステリー」
◆著者について 法坂一広 (ほうさかいっこう) さんは、京都大学法学部在学中に司法試験に合 格して、現在、福岡県で活動している、現役の弁護士の方です。初めて書いた本 作「弁護士探偵物語−天使の分け前」で、第10回宝島社『このミステリーがす ごい!』大賞の大賞を受賞されました。 ミステリーを書き始めたきっかけは、3年ほど前に読んだ『このミス』大賞作 品『チーム・バチスタの栄光』(海堂尊/著)。海堂尊さんのようにエンターテ インメントという形で、現在の司法界の抱える問題について訴えかけることがで きたらと考え、応募されたそうです。 現役弁護士が描く?弁護士探偵モノ?ということで、発売前から各種メディア から注目されていました。
◆おすすめの読者 ◎ハードボイルド小説を読みたい人 ◎法廷に興味がある人 ○このミス大賞に外れはない!と思っている人
◆作品の読みどころ
現役弁護士ならではのリアルなディティール。
……とは言えども、読んだ僕がリアルな法廷を知らないので、説得力がありませ んが(苦笑)著者の法坂一広さんは現役の弁護士でもあります。従って、裁判の 手順や法廷の描写また裁判に及ぶまでの過程などは、法坂さんの経験を元にリア ルな描写になっています。一部、やり取りなどは脚色されているようですが、そ れもまた作品の魅力に繋がります。
昨今珍しいハードボイルド調のミステリー。
……その脚色されているだろう部分というのが、主人公である「私」のキャラク ター性。もう、なんというか、ハードボイルドなんです。また、彼と行動を共に するある人物も、中々どうして、ハードボイルド作品を彩る名脇役的なキャラク ター性を持っています。全編、主人公である「私」の一人称で語られ、ワイズラ ック(=皮肉な言い回し)の応酬が、いい味を出していて、読んでいて思わず 「カッコイイ!」と唸るシーンが多いですよ。
大まかなストーリーとしては、主人公である「私」が、ある事件をきっかけに、 1年間の業務停止の処分を受けてしまい、その前後で、また別の事件に巻き込ま れていくのですが……。
このダイジェストは、新刊ラジオ音声版【オーディオドラマ】でお届けします。
作品の雰囲気が伝わるように作りました! ぜひ、聴いてみてくださいね。
◆まとめ 文芸作品ということで、ネタバレを避けるためテキスト版は短めになってしま いましたが……、このミス大賞受賞作は、「チーム・バチスタの栄光」を始め、 エンターテイメント作品として優秀な作品を多く輩出しています。なので、今回 の「弁護士探偵物語」も、文芸作品好きの方は、是非、注目してみて下さいね!
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