新刊ラジオ第1513回 「ザ・サンキュー・マーケティング」
ソーシャルメディアで世界一成功した男、ゲイリー・ヴェイナチャックが伝授するソーシャルメディア時代のマーケティング手法「サンキュー・マーケティング」。豊富な事例と体験談を交えて語られる本書は、ソーシャルメディア時代の消費者と企業の関係性を巧みに分析しています。あなたは顧客と良好な関係を築けていますか?
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概要
こんにちは、ブックナビゲーターの矢島雅弘です。
最近、人に感謝したり、人に感謝されたりした経験はありますか? それは仕事で? それともプライベートで?
仕事を「ビジネス」と書くと、一般的には、人間関係が冷たい感じがしますよ ね。「もっとビジネスライクにいこう」なんて言われると、感情論を廃して、論 理と効率を追い求めていこう……なんていう風に聞こえてしまいますが……。
実は、これからの時代、ビジネスにも「気遣い」が大切になってくるそうです。 キーポイントは、ソーシャルメディア。ツイッターやフェイスブックを活用して いる企業人は必読の一冊を今日はご紹介します。
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◆今日の一冊
『ザ・サンキュー・マーケティング』 (ゲイリー・ヴェイナチャック/著 金森重樹/監訳 エベイユ/刊)
◆この本をひと言でまとめると 「ソーシャルメディアの誕生で“大きな田舎町化”した世の中のマーケティング」
◆著者について ゲイリー・ヴェイナチャックは、「ソーシャルメディアで世界一成功した男」 と呼ばれている人物です。現在は講演、セミナー、コンサルティング業務をメイ ンとして活動しています。元々は父親が経営していた小さな酒屋を継いだ中小商 店の店主でしたが、そこから、 eコマースのサイト「ワインライブラリー.com」 や、ツイッターやフェイスブック、動画ブログ「ワインライブラリーTV」などを 展開して、年商4500万ドルもの企業に成長させてきた人です。
◆おすすめの読者 ◎ソーシャルメディアを利用したマーケティング手法を知りたい。 ○ソーシャルメディアマーケティングの成功事例を読みたい。 ○顧客との繋がりを強いものにする方法や事例を知りたい
大きな田舎町となった世の中
世の中は、ソーシャルメディアの登場で、「大きな田舎町」化したと本書で例 えられています。著者のゲイリーがこの本で伝えようとしているのは、現代のよ うなソーシャルメディア時代に適したマーケティングの手法、「サンキュー・マ ーケティング」なのです。
サンキュー・マーケティングとは、本書で「マス・マーケティングの世界で孤 立し、ないがしろにされ、無視されてきた消費者と親密な関係を企業が結んでい くこと」と定義されています。端的に言えば……。 ・顧客とつながり、愛されること ・時間をかけて顧客と関係を築くこと ・顧客に対して、心にくっつくコンテンツを拡散すること つまり「顧客と1対1の深い関係性を築いていくこと」が、サンキュー・マー ケティングの基本的な考え方なのです。
たとえば、本書にはこのような例文が掲載されています。
あなたの母親がボブの店で肉を買っていたら、あなたもきっとボブの店で肉 を買っていただろう。ボブはあなたの家族やあなたの好みをよく知っていて、 寒い季節には、あなたの家で毎週つくられる乾燥豆のスープ用に豚のもも肉を 取り置きしておくこともちゃんと心得ていた。店に行ったとき、どんな風に扱 われるかは、挽き肉の品質同様、きわめて重要だった。たとえば、挽きたてと言われて買った肉が、あまり新鮮ではないことがわか って、返金してくれるようボブに掛け合ったけれど、断られた。そんなときは PTAの集まりや組合の会合、あるいはカントリークラブで怒りを爆発させる のだ。PTAや組合、カントリークラブの関係者が顧客の中にたくさんいたら、 ボブにとっては最悪。お客を怒らせて一人失うと、友人、知人を一気に10人 失うようなものだった。 (P41より抜粋)
これは、悪い例ですが、逆に良い例としては、このボブの提供するサービスが、 お客さんにとって素晴らしいものならば、そのお客さんはPTAの集まりや組合 の会合、あるいはカントリークラブで、ボブの店の素晴らしさを語ってくれるで しょう。そうすると逆説的にボブは、一人のお客を大満足させて、一気に10人 の顧客を手に入れられるかもしれません。
ソーシャルメディア世界の世の中
ここまで読んで、何かに気づきませんか? そうです。「ソーシャルメディアでの“炎上”や“口コミ”による商売繁盛と よく似ていますね。今の時代、顧客は企業やサービスに対する不満を、顔見知り だけでなく、ソーシャルメディアを介して繋がっている全員にいっぺんに共有す ることができるのです。
つまり、ソーシャルメディアが発達した今の時代は、昔ながらの商店街をより グローバルに大きくしたようなものであるという事になります。著者のゲイリー は、「ソーシャルメディアはこの世界をとても大きな田舎町に変えた」と表現し ています。
こういった事情から、昔ながらの商店街にあった顧客との関係性を構築する、 「サンキューマーケティング」が有用になってきたのです。
本書では、著者のゲイリーが自身の体験や、様々な企業の事例をあわせて、こ のサンキューマーケティング、及びこの手法を利用したソーシャルメディアの展 開の仕方を説明しています。
この事例がまた、興味深いものばかりです。例えば……。 ・たった1回のツイートで25万ドルを稼いだIT企業 ・一番乗りで勝利した女性歯科医 ・amazonCEOのジェフ・ベゾスがザッポスを買収した理由 ・全米No.1書店「バーンズ・アンド・ノーブル」はどこで作戦を誤ったか などなど。
なかでも僕のお気に入りは、ブリトーショップ「ボロコ」の成功例です。 ※ラジオ(音声版)の方ではゆっくり語っていますので聴いてみて下さいね♪
まとめ
◆まとめ
本書は、ソーシャルメディアを軸にしていますが、マーケティング手法として は、ディズニーランドやリッツカールトン、ザッポスなどと共通する理念が見受 けられます。そう、いわゆるホスピタリティです。 事例も豊富で、読んでいて心温まる瞬間が多い一冊でした。
「○○マーケティング」というタイトルの本は、堅苦しそうでちょっと……と 思っている方は、是非一度お手にとって中身を見てみて下さい。「顧客だけでな く、従業員も幸せにしよう!」という著者ゲイリーの温かさや、各企業の心温ま るエピソードに触れることができると思います。
もちろん、「ソーシャルメディアを活用したい!」と思っているビジネスパー ソンにもオススメできる一冊です。
しかし、サンキュー・マーケティングは長期的な視点で行うものなので、短期 的に利益を上げたい人には、ご期待に添えないかもしれません。どうしても短期 で稼ぎたいんだ! という人には別の方法をオススメしますが、ソーシャルメデ ィアをビジネスに上手く活用したいという人は必読の一冊です。
◆編集後記
この本の一番の魅力は、読んでいるとソーシャルメディアを利用したくなる事 かもしれません。あなたがもし、ツイッターやフェイスブックのアカウントを作 成して、ほったらかしにしているのなら……この本を読むと、自分なりの使い方 を考えられるかも。
また、これは日頃から思っている事ですが、もっと企業と顧客の関係性を、よ り人間的で温かみのあるものにしていきたいですね。その意味でも、このサンキ ューマーケティングは支持しております!
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