新刊ラジオ第1474回 「部下を育てる「ものの言い方」 ―人を変える組織を変えるリーダー必須の条件」
本書は、部下をやる気にさせ成長させることができる「ものの言い方」の工夫について書かれた一冊です。実際、現場で困ることや迷うことを、ケースを用いて解説。単純な言葉の言い換えに留まらず、総合的な伝え方の技術としてまとめてあります。「自分は当てはまってないな」と思っても、意外に陥っている場合が多いかも……。
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ダメダメ上司は仕事ができる
あなたは部下の指導にあたって、「いつも言ってるんですけどね」「いくら言ってもわからないんです」と言い訳をしたことがありませんか? 実際、こういった発言はとても多いそうです。そして、こういった発言をする人は、部下がよくならない原因を「部下本人の意識が低いことにある」と考えがちだといいます。
● 著者プロフィール 井上健一郎さんは、井上オフィス代表。人材開発・組織構築コンサルタント、中小企業診断士として活動されている方です。慶應義塾大学経済学部を卒業後、ソニー・ミュージックエンタテインメントで制作、営業、プロモーション部門を経験し、責任者としても多くの製品を手がけてきました。 その経験を活かし、現在は、企業の組織構築を人材の側面から支援されています。「人を知り、人を育て、人を活かす」をモットーにした人材に関する幅広いサービスを開発、提供しており、人材育成型の評価制度「LADDERS(ラダーズ)」は、3年間で100社もの導入実績があります。
部下がよくならない原因が、『部下本人の意識が低いことにある』と考えている人が多い中、井上さんは、「上司が言いたいことが、きちんと理解されて伝わっていないことに原因があると分析します。
本書では、その原因となっている「ものの言い方」や、「聞き手(部下)の心理状態」を考えずにことばを発して、その結果、部下のやる気を削いでしまうケースについて、2パターンの上司を例にあげて解説しています。
2パターンの上司とは、“ダメ上司”と、“ダメダメ上司”。 ひとりは、仕事はできるしリーダーシップも取れるのに、部下の意見に耳を傾けず、結果、課全員のやる気をなくさせてしまったダメダメ上司・上田課長。 そして、もうひとりは、これまた仕事はできるし、コミュニケーションも取れるのに、何でも本人に気づかせようとしすぎるあまり、部下のやる気を低下させてしまったダメ上司・斉藤課長です。
2人ともそれぞれに良いところはあって、「イイ上司」になれる素養はあるのに、なぜダメ上司、ダメダメ上司になってしまっているのでしょうか。その実態と、改め方を本書で解説しています。
できる人は自分の発信を優先する
仕事ができるのは良いことですが、仕事ができるだけに、陥りやすい「ダメダメさ」があるのです。ダメダメ上司は仕事ができるだけに、部下の働きぶりを見ていて、心の中では、実はこんなことを考えています。
「私だったら、そうはならない」 「もっといい方法があるのに、なぜ気づかない」 「私の言うとおりにやっていれば大丈夫だ」 「私が決めなければダメだな」
このように、部下のレベルが低いと感じ、自分が引っ張らなければいけないと考えているわけです。
ダメダメ上司の特徴その2>/b> 「できる人は自分の発信を優先する」 このタイプは、いつも部下に言いたいことを溜めていることが多くいので、会議や、部下が相談に来たときなどに、溜め込んだものが一気にあふれ出してしまうんです。 ですから……こんな状態になってしまいます。
(自分の)言いたいこと > (部下を)受け入れること *部下の言うことを受け入れることよりも、自分の言いたいこと・考えを押し付ける。
また、部下の仕事のレベルが低い原因は、すべて部下の意識が低いからだと考えます。それは、かつて自分はできた。意識をしっかりもっていたからだという自負のためです。それはこんな状態です。
こんなダメダメ上司ですが、「ものの言い方」は、3つの代表的なタイプに分かれます。 ・ 受け流し型/上の空のような無関心な言い方 ・ 突き放し型/受け入れてくれない無理解な言い方 ・ 追い込み型/徹底的に非難する無寛容な言い方
次のページでは、受け流し型の上司が、部下から相談されたときの会話のケースを見てみましょう。
部下から相談されたときの会話のケース
部下「課長、A社との商談の件ですが、今いいですか?」
「手短にね」 「後にしてくれない?」 「何だっけ?」
部下「思ったように進まないんですが、どうしたらいいでしょう」
「もう少しがんばってみたら?」 「この間言ったことはやったのか?」 「何とかしないさい」 「そんなの簡単、こうしなさい」
こうですから、部下はこんな気持ちになってしまうんですね。
自分ことを見てもらえていない。 わかってもらえない。 自分の言うことは聞いてもらえない。 言ってもしょうがない。 自分がわかるように言ってもらえていない。 頭が悪いと言われているようだ。
受け流し型の上司は、「問題意識を感じていない」か、「過敏に反応するより平静さを保った方が、沈着冷静ないい上司と見られると思っている」のです。
● 言い方のアドバイス
> 部下「課長、A社との商談の件ですが、今いいですか?」 > 「手短にね」
「手短にね」→「困ってることがあるならそこから聞こうか」 ※部下が要点を切り出しやすいように誘導する
> 部下「思ったように進まないんですが、どうしたらいいでしょう」 >「もう少しがんばってみたら?」 >「そんなの簡単、こうしなさい」
「もう少しがんばってみたら?」 → 今のやり方だと何が足りないのかな? ※ 部下へ問いかけをすることで自分で考えるきっかけを作る
「そんなの簡単、こうしなさい」 → こういうやり方も考えられるけれど、他にもっとないかな?
言い方ひとつとっても、部下が感じる印象は全然違いますよね。 また、部下がどんな心理状態にあるのかを気づかったことば選びも大切なのではないでしょうか。 このあたりが、単なる言い換えに留まらない本書の良さになっています。
まとめ
本書の続きでは、仕事はできるしコミュニケーションも取れるのに、何でも本人に気づかせようとしすぎるあまり、部下のやる気を低下させてしまったダメ上司のパターンを、同じように分析して、解説しています。 “本人に気づかせようとする”ことは、上司としてとても優れているようですが、いったいどこが問題だったのか。本書で確認してみてください。
本書は、部下がやる気になって、成長の手助けができる、「ものの言い方」の工夫について書かれた一冊。単にしゃべり方、小手先のことばの言い換えではなく、総合的な伝え方の技術としてまとめてあります。
・ 部下のやる気をそぐものの言い方 ・ 部下が聞きたいことばとは? ・ 部下に教えてあげるべきこととは? ・ 部下がアドバイスを聞きやすい状態はどうやって作るのか ・ 部下が理解できるものの言い方とは?
このような、実際現場で困ることや迷うことを、ケースを用いて解説してくれています。 「自分は当てはまってないな」と思っても、意外に陥っている場合が多そうですよ・・。
部下とのコミュニケーションをより良くしたいチームリーダーや、マネジメントの方はぜひ、読んでみてください。
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