新刊ラジオ第1464回 「回転寿司の経営学」
本書は、外食産業としては“非常識なシステム”で成り立ち、成長を続けている「回転寿司」の経営を紐解いた一冊。かつて大阪に出店された、たった1店の寿司屋から、国民食へと成長を遂げたイノベーション、マーケティング、顧客戦略など、顧客創造に伴う経営の知恵が濃密に詰まっています。
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回転寿司の経営
● 著者プロフィール 米川伸生さんは、2000年から回転寿司評論家として活動。2007年放映の「TVチャンピオン2 回転寿司通選手権」優勝。現在は、日本回転寿司協会専務理事を務めており、テレビ番組のブレーン、雑誌の監修、ライター業などの活動を行っています。これまでに訪れた回転寿司店の数は、のべ3000店以上(ここ数年だけでも1000店は越えているそうです)。
回転寿司の経営は、別の外食産業の常識では考えられないシステムで成り立っているといいます。たとえば、一般的な外食産業の原価率が30%程、であるのに対して、回転寿司では40〜50%が当たり前だそうです。コストと人件費を足すと、原価率が70%を越える店も、ゴロゴロしているのだとか。
通常、外食産業は、「コストが60%を越えると利益が出にくくなる、65%を越えると赤字経営になる」といわれていますが、回転寿司が、それでもしっかりと成り立って、経営できているのはなぜでしょうか。
米川さんはこの本を通して、そういった回転寿司経営の秘密を紐解いています。 そして、「回転寿司の経営戦略にあるイノベーションとか、顧客創造のノウハウは、あらゆる業界に通用する。アイデアを発想したり、ビジネスに役立つヒントを得てほしい」とメッセージを発しています。
回転寿司の誕生
回転寿司といえば、国民食といってもいいのではないでしょうか。 まずは回転寿司がどうやって今の地位を確立していったのか、その歴史をご紹介します。
● 回転寿司の誕生 回転寿司の誕生は、1958年(東京タワーが完成した頃のことです)のこと。 当時大阪で、白石義明(しらいし・よしあき)さんという方が、立ち寿司店(いわゆる「回らないお寿司」)を営んでいましたが、とても繁盛していたため「職人の数が足りない!」「捌ききれない!」と、苦労していたそうです。
しかし、そんなある日、白石さんが出かけていったビール工場の見学で、ベルトコンベアに乗って運ばれる“ビールの製造過程”にヒントを得て、「お寿司をベルトに載せてまわす」回転寿司を発想したそうです。
そこからおよそ10年の開発期間を経て、コンベア式旋回食事台の特許を取得。「廻る元禄寿司一号店」が東大阪市にオープンしました。この奇抜な発想が話題となり、また、手軽で素早く食べられる食事が、高度成長期に忙しく働くビジネスマンにマッチして、瞬く間に店舗を拡大していったのです。
そして1968年、大阪を中心に展開していた「元禄寿司」は、東日本にも登場することになります。回転寿司に可能性を感じた、江川金鐘(えがわ・きんしょう)さんという方が白石さんの元を訪れ、回転寿司のレーン普及を目的として、名古屋より北における販売契約を交わします。以降、西日本では白石さんの「元禄寿司」が。東日本では江川さんの「元禄寿司」が展開されていったのです。
回転寿司は、こうして各地に展開されていきましたが、一気に全国区になったきっかけがあります。それは「大阪万博博覧会」。これに出店した「元禄寿司」は、マクドナルドや、ミスタードーナツとともに人気を博して、純国産の“ファーストフード”として大きな注目を集めました。 このように回転寿司は日本に浸透していったのです。
本の中では、いま紹介した「回転寿司の広がり」以降、躍進期 → 暗黒期 → グルメ回転寿司の登場・・・ という感じで、回転寿司がどんなイノベーションを起こして、進化してきたのか? などが書かれています。
ツナマヨコーンに見る勝ち組の法則
● 回転寿司がどうやって儲けているのか?
回転寿司屋でベルトの上を廻っている寿司ネタの中には、当然、「原価率の高いネタ」と、「原価率の低いネタ」があります。
回転寿司屋の経営は、まず、たくさんのお客さんに来てもらって、お客を回転させること。そして、「原価率の高いネタ」と「低いネタ」をバランスよく食べてもらうこと。この2つが達成されないと成り立ちません。
回転寿司屋は、まずたくさんのお客さんに来てもらうために、マグロのような“お客さんの引きになるネタ”を重視します。これは当然のこととして、儲けている回転寿司屋は、あえて“人気が出にくいネタ”にもこだわります。
そのひとつが、「ツナマヨコーン軍艦」。 一口に「ツナ」といっても、メバチやキハダをつかった「ライトミールツナ」、そして、ビンチョウを使った「ホワイトミールツナ」など、種類は多数あります。どのツナを使うかで、寿司の味はガラッと変わるんです。
油分が多すぎるツナを使うと、シャリに油が染み出して海苔がしけって美味しくないし、かといって、油分がないと味わいが物足りない、という具合に。
ですから、あるお店では、オイル漬けのツナではなく、オイル無添加のツナを購入して、寿司にあった油分に調節するため、わざわざ自社でオイルを加えて、「ツナマヨコーン軍艦」を提供しているそうです。
「なぜ安いネタにそんな手間を??」と思うかもしれませんが、原価率の低いネタにも手間隙をかけることで、「あの店は何かが違う」という顧客心理が働いて、色んなネタに手が出るようになります。
結果、寿司ネタをバランスよく食べてもらえるようになって、売上にもつながってくる、ということなんです。
この本には、こんな回転寿司経営の裏側や、ひみつがいっぱい詰まっています。 経営自体に興味がなくても、お寿司が好きな人はぜひ読んでみてください。 回転寿司をもっともっと楽しめると思いますよ。
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