新刊ラジオ第1441回 「宇宙は本当にひとつなのか」
最新の宇宙理論から迫った「宇宙の正体」を徹底解説! 宇宙全体を調べてみると、目に見える物質(原子)は全体の5%にも満たないことが分かり、残りの96%は、正体不明の“暗黒物質”と“暗黒エネルギー”だったのです。一つ謎が解けると、更に深い謎が現れる、そんな謎だらけの宇宙の正体とは何なのでしょうか?!
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宇宙のヤバすぎる新発見!
宇宙ができる前のずっと昔、この世は何も無い“無”の状態だったといいます。 存在しないものを想像することは難しく、なかなかイメージは沸かないものです。しかし、宇宙や、万物の果てしない歴史を考えるほどに、寂しくなったり、ワクワクしたりして心を揺り動かされます。
『宇宙は本当にひとつなのか』(講談社/刊)は、自然科学をやさしく紹介することで35年以上も親しまれてきた、講談社ブルーバックスシリーズの一冊。本書では、「最新の宇宙理論で宇宙がどのような物質と考えられているのか」を、非常に興味深く、そして、ロマンたっぷりに解説しています。
● 著者プロフィール 村山斉さんは、素粒子物理学を専門に研究する、物理学者。 東京大学国際高等研究所 数物連携宇宙研究機構(IPMU)の初代機構長、特任教授。米国カリフォルニア大学バークレー校 物理学科冠教授などを務めて来られました。 宇宙物理学や、素粒子理論研究におけるリーダー的な存在であり、執筆活動や、メディアへの出演を通して、宇宙研究の面白さを伝える活動もされています。
「宇宙とはなにか?」……なんていうと、科学的な問いにも哲学的な問いにも思えてしまいます。それほど人類にとって、「宇宙」ってわからないものですよね。 僕(矢島)の学生時代には、「万物は原子でできている」と習いました。しかし、最新の宇宙科学では、「原子は宇宙全体の5%にもならない」ということがわかっているそうなんです。じゃあ、残りの96%はなにかというと、「約23%は暗黒物質で、約73%は暗黒エネルギー」だといわれているんです(全部足すと、誤差の範囲で100%になるのだそうです)。
暗黒物質・暗黒エネルギーとは何か?
「暗黒物質」 「暗黒エネルギー」 さながらSFやゲームの世界のようなネーミングですが、一体それらは何なのでしょうか。とても不思議に思ってしまいます。 しかし、「どうやらそういうものの存在があるらしい」ということで名前は付けられているのですが、その正体はまだ何も分かっていないのだそうです。 分かっているのは、暗黒物質がなければ、地球も、太陽も、星も、銀河も生まれなかったということ。 僕ら人間は、暗黒物質のおかげで生まれ、今こうしていられるんです。そして、この暗黒物質は、今この瞬間にも私達の体をすり抜けているのだそうです。
ちなみに、最新の宇宙研究の現場では、この「暗黒物質」をつかまえる一歩手前まで来ているそうですよ。今話題になっている仮説としては、「暗黒物質は異次元から来る使者であるという可能性」なのだそうです。もちろん、SFなどではなく、まじめに議論されている物理学の最新理論「多次元宇宙」というものだそうです。
一方、「暗黒エネルギー」とは何でしょうか? 有力な仮説としては、「真空のエネルギー」なのだそうです。なぜ真空(つまり、何もない空間)がエネルギーを持つのでしょうか?? 不思議ですね。そしてどうやらこういう働きをするらしいぞ…と考えられていることとしては、「宇宙の大規模構造を引き裂いて、バラバラにしようとする」存在なんだとか。つまりこの暗黒エネルギーの大小が、宇宙存亡の運命を握っているということなのです。 暗黒エネルギーは、理論上とても大きなものなのですが、それでも私たちの宇宙が存在していられるのは、私たちの宇宙が、無数の宇宙が生まれては消えるという試行錯誤の果てに、「たまたま」うまく出現した宇宙ではないかと考えられるからです。これが「多元宇宙」という考え方です。
なんでも、宇宙は10の500乗個も作られたということですが、これは研究者の間でいまホットなテーマとなっています。 これが本書のタイトルの『宇宙は本当にひとつなのか』という問いになっているのです。
宇宙はできすぎている?!
8章に面白いことが書かれていました。抜粋してご紹介しましょう。
宇宙が「できすぎ」なのは神のような超越的な存在が宇宙を創ったため、初めからうまくデザインされているのだという考え方もあり得ます。宇宙は試行錯誤の「たまたま」うまくいったものなのか、超越者が非常にうまく考えてつくったものなのか。 そもそも、このように無数の宇宙が存在するのかどうかはどうやって確かめられるのでしょうか。ここまで来ると科学なのか、哲学なのか、その境界があいまいになってきます。それで今、大論争になっているのです。 とはいっても、物理学の進歩は面白いところまで来ました。私たちの宇宙を理解したいという素朴な欲求から、他にもたくさん宇宙があるかもしれないというとんでもない考え方が出てきたり、人類はなぜ生まれたのか、真空とは何か、宇宙は「できすぎ」なのはなぜか、などなど、とても深い問題がたくさん出てきました。この本でご紹介したように最近の宇宙の研究はものすごく進みましたが、一つ謎が解けるとさらに深い謎が現れる。これからも挑戦する課題はつきないようです。 (P193より抜粋)
「一つ謎が解けると、さらに深い謎が現れる」のだそうです…。宇宙というものは、研究しても、研究しても、研究しきれないものなのかもしれません。 しかし、現代のようなハイテク機器がなかった古くの時代から、科学者や、物理学者たちが続けてきた研究の積み重ねが、人類の宇宙への挑戦を着実に進めていると思うと、感動せずにはいられません。
宇宙科学に興味のある学生さん、人類の遠い未来を切り開くフロンティア精神を持った若い人にぜひ読んでもらって、未来の科学者に成っていってほしいな…なんて思います。
この本は、発売後すぐに5万部を突破して、とてもよく読まれているとのことです。
目次紹介
第一章 私たちの知っている宇宙 太陽系は宇宙の一部/太陽系をのぞいてみると/意外に早い公転速度/星は何からできているのか/ニュートリノの贈りもの/ニュートリノ観測の苦労/星の内部を調べる/天の川の銀河を詳しくのぞいてみよう/銀河系にもブラックホールが/奇妙な銀河の回転/目に見えない物質/銀河の中は暗黒物質で満ちている?!/銀河が回転しているのはどうやってわかるのか/何も見えていないのに等しい
第2章 宇宙は暗黒物質に満ちている 銀河団も暗黒物質に満ちている/重力レンズについて/活躍するすばる望遠鏡/銀河団同士の衝突現場
第3章 宇宙の大規模構造 宇宙の中の濃淡/ビッグバンの残り火/宇宙は膨張している/宇宙の内訳/暗黒物質と宇宙の始まり/コラム 万物をつくる素粒子
第4章 暗黒物質の正体を探る 暗黒物質の候補/第一候補は弱虫くん/WIMPの正体/異次元からやってきた?!/暗黒物質の音を探る/加熱する暗黒物質探し/ビッグバンを再現する/宇宙のゲノム計画/コラム 宇宙の年齢
第5章 宇宙の運命 宇宙の運命/暗黒エネルギー/超新星から膨張速度を求める/増え続けるエネルギー/宇宙が裂ける?/暗黒エネルギーが生み出されるスピード/超ひもが予測する宇宙の終わり
第6章 多次元宇宙 宇宙は一つではない/曲がった次元を平らにする/五次元時空/目に見えない次元/異次元はすぐそばにある/力の統一に向けて/重力は微力/重力は打ち消しあわない/なぜ重力は弱いのか/異次元ににじみ出る重力はあるか
第7章 異次元の存在 異次元にしみ出す重力/ブラックホールが異次元の証/リニアコライダーの実験/ワープする宇宙/異次元空間は不確定なもの/不確定性があるから存在できる/異次元の中の暗黒物質
第8章 宇宙は本当にひとつなのか 三次元のサンドイッチ/宇宙の枝分かれ/膨張を加速するエネルギー/理論物理学最悪の予言/超ひも理論とブラックホール/六次元空間は折りたたまれている/宇宙はものすごくたくさんある?
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