新刊ラジオ第1433回 「佐藤さんはなぜいっぱいいるのか?」
現役の弁理士が書いた、面白くて役に立つ「商標」の本。「大勝軒」「餃子の王将」「本当にあったHな話(雑誌)」「スターバックスコーヒー」など、身近な商品や、過去にあった商標トラブル事例を取り上げて解説します。また商標のノウハウを、仕事や私生活に取り入れて得をする、意外な方法の伝授なども。
読む新刊ラジオ 新刊ラジオの内容をテキストでダイジェストにしました
面白くて役に立つ「商標」の本
今日紹介するのは、「佐藤さんはなぜいっぱいいるのか?」 という、ユニークなタイトルの本ですが、命名の本でも、社会学の本でも、民俗学の本でもありません。
本書は、現役の弁理士の方が書いた、「商標」の本です。 すごく身近にあるものなのに、あまり深く考えることがない「商標」の魅力や、役立て方を、今日はたっぷりお伝えします。
● 著者プロフィール 茅原裕二さんは、1969年岩手県生まれ。現役の弁理士の方です。以前は、都内の特許事務所で副所長として働き、2011年5月に独立。現在は、「わらしべ特許商標事務所」代表として活躍されています。 ※「弁理士」とは、国を相手に商標権を取得することを専権業務とした仕事です。司法試験に並ぶ難関な国家資格。
「商標」とは、端的に言えば、他と区別するための「目印」のことです。 本書では、「佐藤」という、日本にありふれた 苗字を「目印」として捉え、そこを取っ掛かりとして、「商標」を解説しています。
書きっぷりはライトで読みやすく、雑談のネタ探しや、ユニークな教養として読んでみてください。
本当にあった…Hな戦い!!
「本当にあったHな話」という雑誌をご存知ですか? よくコンビニで見かけるあの雑誌です。
「本当にあったHな話」の題号は、発行元である、株式会社ぶんか社が持っている、「マンガ雑誌」の登録商標です。この登録商標を介して、実はその昔、2つの出版社が、熱くエッチな戦いを繰り広げていたことがあったそうです。
その事件こそが、今日の新刊ラジオで紹介する事件。 商標権使用差止等請求事件【平成16年(ワ)第8092号】です。
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原告はぶんか社。被告は竹書房。
原告は、雑誌等について、「本当にあったHな話」の登録商標を有する、商標権者です。 原告は、2003年2月から、「本当にあったHな話」という題号でマンガ雑誌を出版していました。 被告は、2003年9月から、「本当にあったHな話がてんこ盛り!」という題号でマンガ2004年5月から「実際にあったエロ話がてんこ盛り!」 雑誌を出版しました。また、2003年10月から、「本当に出会ったHな話」という題号でマンガ雑誌を出版しました。
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被告(竹書房)の行為が、原告(ぶんか社)の登録商標の使用行為に該当するとして、訴訟が提起されたわけです。
本当にあった…Hな戦い!!(2)
この事件の主な争点となったのは、次の2つ。
1、商品の類似性 つまり、似ているか否かということ。
2、商標的使用 これは、被告がマンガ雑誌に表示したものは、雑誌の商標として使用しているのではなく、単なるキャッチコピーとして使用しているに過ぎないのか、否か。
さて、どうでしょうか。 「商品の類似性」について考えてみましょう。
この場合における、商標が類似する状態とは、「消費者が、竹書房の雑誌を見て、ぶんか社の雑誌だと勘違いして買ってしまう」ことが起こりうる状態です。そうなのであれば、竹書房は、明らかにぶんか社の商標権を侵害しているといえるでしょう。 しかし、ぶんか社と、竹書房の題号は、寸分くるわず同じものではありませんでした。書体だって、色だって違います。
それでは、どのようにして、「商品を消費者が誤って購入してしまうかどうか」を判断するのかというところですが、その基準が、「商品の類似」で定められています。 (さすがに、コンビニのエッチ本棚に張り付いて、実験するわけにはいきませんからね! 笑)
誤購入の可能性を、主観的に行うわけにはいきませんから、客観的なものさしがあります。
本当にあった…Hな戦い!!(3)
誤購入の可能性を、主観的に行うわけにはいきませんから、客観的なものさしがあります。 それが、「外観」「呼称」「観念」です。
「外観」・・・見た目 「呼称」・・・読み方や聞こえ方 「観念」・・・イメージ
この3つのものさしをつかって、商品の類似性を判断します。
◎オリジナル ぶんか社「本当にあったHな話」
◎竹書房 1.「本当にあったHな話がてんこ盛り!」 2.「実際にあったエロ話がてんこ盛り!」 3.「本当に出会ったHな話」
「概観」については、図を示さなければなりませんので文字では説明できませんが、呼称・概念については、客観的な判断が可能ですね。
新刊ラジオ(音声版)では、この部分についても、矢島の解説により説明していますので、テキストを読んでる方も、合わせて聴いてみて下さい。
● まとめ 本書の続きでは、大勝軒、餃子の王将、スターバックスなど、普段目にする具体的な商品や事例を取り上げて、過去の商標トラブル事例や、成功パターンのノウハウ、話題のネタになるような豆知識が紹介されています。
また、萱原さんは、「目印を効果的に使えば、目的地に早くたどり着ける!」 ということを書いていました。 「商標」の知識を抑えて、「目印」を効果的に使えば、目立つ、選ばれるということにつながるのです。「大きな仕事を任される」とか、「デートに誘われる」とか、そんな使い方もできるということだそうです。
興味がわいた方は、ぜひご一読を!
佐藤さんはなぜいっぱいいるのか?
身近な商標ロゴに詳しくなれるよ! |