だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第1420回 「子どもを放射能汚染から守りぬく方法」

原発で被害を受けた私たちがいますべきことは、「これくらいなら大丈夫」と言ってその地域の農産物を食べることでもなく、「年間20ミリまでOK」といって子どもたちを被ばくするかもしれない場所で遊ばせることでもありません。自分の身は自分で守る。自分の子どもも自分で守る。周りに流されず我が子を放射能汚染から守りぬく方法を紹介していきます。

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原発の専門家のアドバイス

● 著者プロフィール 著者の武田邦彦さんは、1943年東京生まれ。東京大学教養学部基礎科学科卒。 卒業後、旭化成工業入社。同社ウラン濃縮研究所長、芝浦工業大学教授、名古屋大学大学院教授を経て、2007年より中部大学教授。 内閣府原子力安全委員会専門委員などを務めました。 世界で初めて化学法のウラン濃縮に成功し、日本原子力学会から最高の賞、『平和利用と特賞』を受賞、放射能関係では第一種放射能取扱主任者など広い分野の原子力実績をもちます。 原発問題では、早くから日本の原発の耐震性が低いことを指摘し、原発は地震で倒れると主張していました。

今回の本は、お子さんをお持ちのお父さん、お母さんが日常生活で子どもの放射線被ばくをできるだけ避けるにはどうしたらいいのか、ということが具体的に書かれています。 被ばくから守るためには、国や専門家、そして電力会社の情報では部分的で不完全です。特に小さいお子さんや妊婦の方は放射線に対する感度が高いのだそうです。 原発から漏れた放射性物質のうち、例えばセシウム137やストロンチウム90は半減期が30年もかかるというから驚きです。

となると、これから長い間、放射線物質とともに生活していかなければなりません。 毎日の生活で被ばくを減らす工夫と努力をしていく必要があります。 しかし、何をどうしたらいいのか分かりませんよね。 本書では、危険な放射性物資がたまりやすい場所をイラストとともに分かりやすく、具体的に解説してくれています。

子どもを守るためにするべきこと

例えば、“公園では、しゃがんで遊ばせないこと。砂場や植え込みには近づかない”と言ったことが書かれています。何故かというと、放射性物質は目に見えない小さな粒です。原発事故から3ヶ月たったいまは、多くは地表に落ちています。 地表の粒は風で舞い上がるので、地表の近くで遊ぶ子どもはとても危険なのだそうです。そして、放射性物質が溜まりやすい場所は、公園では砂場、芝生、雑草の上、水たまりができやすいところ。ここが要注意です。

母乳を飲んでいる赤ちゃんは母乳から、小学生・中学生は給食からも被ばくしてしまいます。しかも、子どもは大人より感度が高いので、放射性物質の影響を語るときは子ども視線が重要となってくるのです。

また、家の中ではどうしたらいいのか、放射線量が高い場所はどこか、外出の時に気を付けること、街や海へは行っていいのか、といったことが書かれています。

他にも、放射線物質の基本的知識として、どのくらいの放射線量がどのくらい危険なのか、放射線対策、放射線物質からの被ばくを防ぐためにはどうしたらいいのか、 今いる場所での“被ばく量が分かる計算式”、これからの対策、といったことが書かれています。

また、特別対談として教育評論家の尾木直樹先生とともに、学校教育の中での被ばく問題、例えば給食や行事の在り方について意見を交わされています。

被ばくは足し算であることを認識する

今回の原発事故のように、低線量の放射線を長期間受けたとき、子どもたちの健康にどのような影響があるのか、まだ未解明の部分が多いのだそうです。 だからこそ、少しであっても、基準値内であっても、誰かが大丈夫と言っていたとしても、被ばくの可能性のあるものから守るのは必要であると思います。 誰が何をどう言おうと、ご自分のお子さんを守れるのはお父さん、お母さんだけです。 まわりの人が気にしないでいて自分だけが母乳や水、給食や体育の授業、様々な学校業・・と気にしすぎて、周りから神経質だと言われてしまったとしても、自分の子どもを守れるのは、自分しかいない、いまは周りを気にせず、我が子を守るためには徹底した方がいいと思いました。

被ばくによる健康被害はいますぐに、子どもに何かが起こるのではなく、最短で4年後なのだそうです。 「被ばくしてもただちに健康に影響はありません」と政府が繰り返し言っていますが、 「ただちに」ないということは、いつか影響があるかもしれないということです。 放射線による障害には、2種類あります。

ひとつは一度に大量の放射線を受けて障害が出る“急性障害”。 一度に受ける量が1000ミリシーベルトを超えると、「ただちに」リンパ球の減少や嘔吐などの健康障害が起き、相当数が死亡してしまいます。(P111より) 今回の事故では、この急性障害が住民にみられることはほとんどないのだそうです。 問題なのは、放射線を浴びて時間がたってから、おもにガンなどの症状がみられる “晩発性障害”といわれるもの。

放射性物質は体の中に長い間、あるいは一生居座って、遺伝子を傷付けることがあります。 本当に怖いのは、放射線を浴びてから数年〜数十年後に症状がでることです。 だからこそ、いまから親が日常生活で放射線を浴びさせない努力をする必要があるのですね。

食生活も見直すことの大切さ

そして、食生活も見直すことの大切さも書かれています。 チェルノブイリ原発事故の際、多くの子どもたちが甲状腺ガンになった理由のひとつに、子どもたちが慢性的なヨウ素不足だったことがあげられています。 体内のヨウ素が少なかったために、事故で放出された放射性ヨウ素を、体が積極的に取りこんでしまったと言われています。 よく海藻を食べていればヨウ素不足の心配はなくなりますが、すでにコンブやワカメに放射性ヨウ素が多く見付かっています。 北海道のものは安全ですが、本州の太平洋産のものは注意が必要です。

このほかにも、野菜はどのように食べればいいのか、といったことや、 “風評被害”の意味を間違って捉えてしまい、汚染された食べ物を食べないように、とか、食品を選ぶ基準、魚介類を食べてもいいのか、といった、いますぐに必要な情報を知ることができます。

原発事故直後に、子どもが雨に濡れてしまった、子どもが土の上で遊んでしまった、汚染された食べ物を食べてしまった・・・と後悔している人もたくさんいます。 もし被ばくしていたとしても回復できるのだそうです。その方法も載っています。

何よりも、周りに流されず、自分の子どもを守るのは自分しかいないのだ、ということをこの本は教えてくれます。 周りが注意しないのならば、自分が注意すればいいのです。 「その野菜は危ないから食べないほうがいいよ」、なんて周りに呼びかけなくていいんです。 本当に大切な人を、正しい知識と知恵で守るべきなのだと改めて思いました。

小さなお子さんを育てている人は是非とも読んで欲しい一冊です。

子どもを放射能汚染から守りぬく方法

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子どもを放射能汚染から守りぬく方法

子どもを放射能汚染から守りぬく方法

原発で被害を受けた私たちがいますべきことは、「これくらいなら大丈夫」と言ってその地域の農産物を食べることでもなく、「年間20ミリまでOK」といって子どもたちを被ばくするかもしれない場所で遊ばせることでもありません。自分の身は自分で守る。自分の子どもも自分で守る。周りに流されず我が子を放射能汚染から守りぬく方法を紹介していきます。