だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第1411回 「食卓にあがった放射能 新装版」

福島原発大爆発 本当の情報がここに! 原発事故による食品汚染問題に備えるにはどうしたらいいのか? 放射性廃棄物の垂れ流し、食品の放射能汚染など、チェルノブイリ原発事故の教訓を踏まえて、いま必要な情報・知識、知りたいことがこの一冊に! 現在もなお深刻な状況が続く福島原発の事故を受けて急遽、改題し出版されました。

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新装された『食卓にあがった放射能』

● 著者プロフィール 著者の高木仁三郎(たかぎ・じんざぶろう)さんは、 1938年群馬県生まれ。東京大学理学部化学科卒業。 日本原子力事業の研究所、東京大学原子核研究所助手、東京都立大学理学部助教授、マックス・プランク研究所研究員等を経て、原子力資料情報室設立(政府の原子力政策について自由な見地からの分析・提言を行うNPO、原子力業界から独立したシンクタンク)、代表を務めました。 原子力発電の持続不可能性、プルトニウムの危険性などについて専門家の立場から警告し続けていました。 2000年10月8日逝去。 渡辺美紀子(わたなべ・みきこ)さんは、1987年 原子力資料情報室スタッフとなります。おもに、食品汚染、労働者被曝問題を担当しています。

今日紹介する本は、地震による福島原発事故で、原発、放射能に注目が集まるなか、1990年に講談社現代新書から出版された、「食卓にあがった死の灰」を改題したものです。 放射能、放射能による食品汚染、1986年に起きたチェルノブイリの原発事故の食品汚染のデータ、放射能のもとで暮らしてきた人たちの具体的な話しをまとめたものです。 チェルノブイリの原発事故では、8000キロメートルも離れた日本でも、その被害を受けることになります。 事故後には予想外に高い放射能雨が日本でも降り放射能の恐怖を実感しました。 その混乱も収まって人々がこの事故を忘れかけてきたころ、思いもかけず飛行機や船舶によってあるものが日本に運ばれてきます。 それが放射能で汚染された輸入食品でした。 当時、世界各国で、食生活でどんな注意をしたらいいのか、子どもに何を食べさせたら安全なのか、ヨーロッパに旅行しても大丈夫なのかといった不安を与えました。

そんななか、放射能から命を守るにはどうしたらいいのかという情報・知識を、どのような形で提供したらいいのかを日々考え、議論してきた経験を活かして、「食卓にあがった死の灰」というブックレットが発行されました。 そしてさらに、「食卓にあがた死の灰パート2」「食卓にあがった死の灰パート3」と発行されます。それほどに、チェルノブイリの食品汚染は続いていったのです。

食物連鎖で起こる被曝

本書は、さらに最新のデータを盛り込みつつ、誰でも理解することができる入門書として、原発事故で出された放射能による食品汚染問題をまとめたものです。

本の中ではまず、食品の放射能汚染とはいったいどういうことなのか、といったところから説明されていきます。 チェルノブイリ原発事故で汚染された食品が日本に入った経緯、そのときの状況などが詳しく書かれています。 そして、放射能の人体への影響が、チェルノブイリ事故でのデータをもとに具体的に分かりやすく書かれているので、 実際に、どのくらいの被曝でどんな障害が出るのか、がんや白血病などの発生率は・・といった、誰もが不安に思っていることの情報を知ることができます。

チェルノブイリの放射能放出は、遠く広く長くという最悪の特徴を備えたものでした。 それまで原発事故に対して予想していたよりはるかに遠い距離を一気に飛んでいました。 当時のソ連政府をはじめ各国の政府が事故後、どんな対策を論じて、自国の人たちを守ろうとしたかも書かれています。

飛散した量や、汚染された食品がどのように吸収され、どのくらいの期間で影響が出るのかといったことから、食物連鎖で起こる被曝の実態、汚染された食品が途上国で売られた事実、日本へ輸入された汚染食品など、それまで知られていなかったことが明らかにされています。 例えば、 “輸入食品の放射能汚染の実態”として、これまでに厚生省・現厚生労働省の検査体制に引っ掛かり積み戻しを指示された輸入食品を具体的に挙げています。 どこの国からどのくらいの量、輸入された年月日まで知ることができます。 具体的には、チェルノブイリ事故の際に、放射能汚染の検査でひっかかった食物のワースト3は香辛料・ハーブ・きのこだといいます。そして次にナッツ。 きのことナッツはセシウムという放射性物質を取り込みやすく、香辛料やハーブは乾燥して、濃縮させるから高い汚染値になるということをこの本で初めて知りました。

日本で原発事故が起こったら

さらに、“日本で原発事故が起こったら”というシミュレーションの第5章では、 実際に日本で原発が起こったときに何が起こり、どのように対策をとればいいのかが書かれています。 チェルノブイリ級の事故が日本で起こったとき、その時にどうなるのか? それは、まさに現代、私たちが直面している福島原発事故が、この先どうなるかと関係しています。 例えば、放射能を避けるために、一日中団地の部屋のなかにいたとしたら・・、とういう仮設定のもと空中に漂う放射性ヨウ素がどのくらいの割合で部屋の中に入り込み、それをどのくらい吸い込み、体にどんな影響が起こりうるだろうか・・といったことなどが想定されています。 ヨウ素に対しては換気口につけるフィルターが有効的なのだけれども、一般家庭用ではあまり期待できないとか。 ハンカチを鼻や口に当てるのも効果はあるが、データによると1枚では効果が小さく、木綿のハンカチを8枚重ねてやっとヨウ素除去効率90%程度であるとか。具体的に示されているので理解することができます。

その他にも、放射能が降下したとき、どこまで逃げればいいのか、水の汚れは?食品汚染の進行はどのように始まるのか?野菜の露地ものとハウスものとの差は?といった身近な疑問や不安が具体的に分かりやすく説明されています。

現在も深刻な状況が続く福島の原発事故。野菜や海産物、水の汚染も明らかになり、日本各地で放射性ヨウ素セシウムが検出されるという事実も報告されています。 もはや避けては通れない現実のなか、どのように情報を得て、どのように暮らしていけばよいのか不安になっているかと思います。 けれども、ただ恐れるだけではなく、きちんとした情報・知識をもとに考えなければならないいま、読んで欲しい一冊です。

食卓にあがった放射能 新装版

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食卓にあがった放射能 新装版

食卓にあがった放射能 新装版

福島原発大爆発 本当の情報がここに! 原発事故による食品汚染問題に備えるにはどうしたらいいのか? 放射性廃棄物の垂れ流し、食品の放射能汚染など、チェルノブイリ原発事故の教訓を踏まえて、いま必要な情報・知識、知りたいことがこの一冊に! 現在もなお深刻な状況が続く福島原発の事故を受けて急遽、改題し出版されました。