だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第1401回 「人は皆「自分だけは死なない」と思っている」

地震列島に住む日本人が知っておくべき「防災心理」とは? なぜ人は備えを疎かにするのか? 災害の現場で、人はどんな行動をとってしまうのか? 自然災害や人災における人間の行動と心理から、生死を分ける鍵を解明する。日本人の災害観と防災への意識を変える一冊です。

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災害発生!! どうする?

● 著者プロフィール 著者の山村武彦さんは、防災コンサルタントとして、実践的な防災・危機管理対策を広める活動をされている方です。最近はニュースやワイドショーを通じて、防災の知恵やノウハウをアドバイスされています。

人は皆「自分だけは死なない」と思っている』(宝島社/刊)は、多くの災害現場を見てきた山村さんが考える、「災害時の人間の行動心理」をまとめた本です。

「安全な避難方法」とか、「災害時のサバイバル術」といった、具体的な防災行動に関するものではなくて、緊急時に、「思わずとってしまう行動のからくり」といった、いわゆる行動心理を解説した内容です。これを知っておくことで、慌てず、落ち着きをもって、危険回避に役立てようというものです。

本編は―― 1.人間には「自分だけは大丈夫」と期待する本能がある 2.地震に備えない人々 3.自分だけは逃げ切れると思っていた人々 4.緊急時に知っておくべきこと 5.地震余地・防災常識のカラクリ ――の構成で、阪神大震災や十勝沖地震、スマトラ沖地震といった「自然災害」や、韓国地下鉄火災、ホテル火災の様な「人災」のケースを例に、「緊急時の人の行動心理」を解明しています。

緊急時、思わずとってしまう“危険な行動”とは?

本書には、日本人の危機意識について書かれた一節があります。

例えば、日本人の「備え」の意識とアメリカやスイスでの意識には大きな差があります。

● 日本は、コンビニがあれば大丈夫という考え方で、ほとんど備蓄をしない。 ● アメリカやスイスは、常に最低1〜2ヶ月分の生活必需品の備蓄が当たり前。 ● スイスでは国民の義務にもなっている。

また、備えの甘さ以上に危険なのが、「緊急時、人は集団心理に左右されやすくなり、間違った判断をしやすくなる」という点です。

例えば、災害時に人が影響受けやすい心理作用には次のようなものがあります。

? 集団同調性バイアス 緊急時、複数の人数でいると「皆でいる安心感」を感じ、行動できなくなる心理作用。「自分だけ他の人と違う行動はとりにくい」という思考により正しい判断が遅れる。

? 正常性バイアス 非常時に「まさか本当だとは思わなかった」「こんなことが起こるはずがない」と現実として捉えられない心理作用。また小規模な地震などに慣れてしまい、警戒心が薄れてしまう作用。

? 多数派同調バイアス 判断に迷ったとき、周りの人と同じ行動をするのが安全だと考えてしまう心理作用。「隣が動かないから大丈夫だろう」と考え、逃げ遅れたりする。

例 2003年の韓国・テグ市の地下鉄火災事件は、「まさか火災とは思わなかった」「皆がじっとしていたから自分もそうした」という、正常性バイアスと多数派同調バイアスの相乗作用により犠牲者が増えたと言われている。

? エキスパート・エラー 一般人が専門家の意見や指示を「プロの意見だから」と疑わずに信じてしまい、そのとき相応しい判断を間違える心理行動。

緊急時に人はこういった心理作用が、思わぬ落とし穴になるそうです。 何かに頼りたい時ほど、こういったものに素直に影響されてしまうのではないでしょうか?

災害時の心構え

災害時や緊急時には、「自分の判断」がすべてになります。 この本では、その判断を間違わないために知っておくべきことがあげられていますが、特に―― ? 「自分の直感に従い、敢えて空気を読まない」 ? 「以前はこうだった、にとらわれない」 ? 「もしかして、念のためを大事にする」 ? 「ネットなどで知った気にならず、正しい情報と正しい防災意識を持つようにする」 ――といったことを意識するのが重要なそうです。このポイントを押さえておけば、「防災の備えの質」は自然と高まるのではないでしょうか。

個々が我が身の事として「防災の意識」を高めれば、助かる命や守られる財産があるはずです。緊急時の人間心理を知り、行動をコントロールすることも、結果そこに繋がるのかもしれません。 山村さんの数々の経験を参考に、改めて自分の備えや心構えを見直してみてはいかがでしょうか。

人は皆「自分だけは死なない」と思っている

人は皆「自分だけは死なない」と思っている

人は皆「自分だけは死なない」と思っている

地震列島に住む日本人が知っておくべき「防災心理」とは? なぜ人は備えを疎かにするのか? 災害の現場で、人はどんな行動をとってしまうのか? 自然災害や人災における人間の行動と心理から、生死を分ける鍵を解明する。日本人の災害観と防災への意識を変える一冊です。