だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第1370回 「ウィキリークス WikiLeaks  アサンジの戦争」

ウィキリークスの創始者、ジュリアン・アサンジ。彼は一体、いかなる人物なのか?早くからウィキリークスに注目してきたイギリスの大手メディア『ガーディアン』誌の特命取材チームがまとめた、ルポルタージュ本。ウィキリークス設立時の様子や、アサンジの人となりを知ることのできる一冊です。

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WikiLeaks はどうしてできた?

3月15日、WikiLeaksの創設者であるジュリアン・アサンジ氏は、「米政府の外交公電を暴露したことが、北アフリカや中東諸国で起きている反体制運動の拡大に寄与した」とし、更に、「一部の独裁政権はそうした暴露のおかげで、『もし抗議活動を武力で鎮圧すれば米政府の支援は得られない』ということを理解したのだろう」と話したと17日、ロイター通信社が報じました。

外交公電の公開が独裁国家の革命に繋がるのであれば、意味のある行為といってもよいのかもしれませんが、しかし一概に評価することもできません。 「WikiLeaks」とは善なのか悪なのか。判断を下すには非常に難しい問題だと思います。

「ウィキリークス アサンジの戦争」(講談社/刊)は、WikiLeaksの創設者であるジュリアン・アサンジ氏の人となりや、彼らが目指すところを英メディア『ザ・ガーディアン』の記者が分析した本です。

● 著者について 著者は、イギリスの新聞『ザ・ガーディアン』の記者チームです。1821年に創刊されたガーディアン誌は、中道左派・リベラルを標榜する新聞で、イギリスでも権威のある新聞の一つ。政治家や企業の汚職など、一つのテーマを掘り下げた調査報道に定評があります。

デヴィッド・リー氏は、30年以上のキャリアを持つ調査報道記者で、過去にはイギリス最大の防衛関連企業BAEの賄賂疑惑を暴き、同社に4億ドルにのぼる罰金を支払わせた実績もあります。 ルーク・ハーディング氏は、ガーディアン誌のモスクワ特派員で、以前はニューデリーやベルリンの特派員も務めていました。アフガニスタンやイラクなどの紛争地帯から現地報告をするなど、10年以上にわたりガーディアン誌で外交問題を担当してきた方です。

本書は、彼らが、WikiLeaksおよび、その代表とされるジュリアン・アサンジを取材したルポルタージュです。

1年に120万もの文書が暴露されるWikiLeaks

WikiLeaksは、2006年12月に準備が開始され、それから一年以内に120万を超える機密文書をデータベース化しているとされる内部告発サイトです。 アフガニスタン紛争の武器装備の支出と所蔵や、ケニアでの汚職に関わる文書などを告発して話題を集めました。特に、“コラテラル・マーダー”との題で公開された、イラク戦争におけるアメリカ軍の民間人殺傷ビデオは世界を激震させました。

このWikiLeaksを立ち上げたジュリアン・アサンジ氏は、1971年生まれのオーストラリア人です。彼は16歳の時(1987年くらい)からハッキング行為などを始め、1994年にはオーストラリア警察からハッキングの容疑で起訴されたこともあります。 その後紆余曲折を経て、「内部告発サイト」の構想を思いつき、現在のウィキリークスを作り上げました。 詳しくは本書3章にも記述されています。

アサンジの行為をどう捉えるかは人により判断が分かれるところです。 ある人は、アサンジの主張に賛成し、「情報は自由であるべきだ!」と声を上げ、表現の自由における英雄的にみなします。 またある人は、「世界を騒がせるハッカー」として、アサンジを犯罪者的にみなします。

本書には、ガーディアン誌の特命取材チームが、ジュリアン・アサンジ氏と共に行動する中で起こったことが、真実ありのままで記録されています。 アサンジの行動は、読者にとってどのように写るのでしょうか。

まるで映画のような、公文書200万通の受け渡しシーン

アサンジはいくつかのメディアと連絡をとっており、ガーディアン誌もその一つでした。 アサンジは情報提供者として、また情報の仲介者として、メディアを通じての機密のリークを試みていたようです。それに応じたガーディアン誌側が、2010年にベルギーでアサンジと交渉した時のエピソードがあります。

この時、アサンジと記者たちは、ベルギーのホテルのガーデンカフェで6時間に及ぶ、会合をしていました。 ふと、アサンジが小型のラップトップを開き、キーを叩いて何かを打ち込み、次いでその場にあったナプキンをとって「オーケー、これで君達のものだ」といいます。 記者が「何が?」と尋ねると、アサンジは「ファイル全部、パスワードはこのナプキンだ」と答えました。

アサンジは、そのナプキンに印刷されたホテルの文字をいくつか丸で囲み、「ノー・スペース」と書き込み、GPGと暗号化ソフトの名前を書き加えて渡したのだといいます。

まるで小説のようなやりとりですが、アサンジの気取った感じがよく分かるエピソードです。 ちなみにこの時、『ガーディアン』が受け取った情報は200万通以上の公文書だったそうです。

ジュリアン・アサンジはどんな人物なのか?

アサンジは決して、“ただの気取った男”ではありませんでした。『ガーディアン』の記者たちが、アサンジを批判するシーンが本書に書かれています。それは、この情報を世に公開するにあたって、編集作業をする際のこと。

報告書データの部分、すなわち情報提供者および協力者の人物名に関する部分を削除しようとする、ガーディアン誌側と、全てを公開しようとするウィキリークス側が対立したのです。 結果的に、アサンジが考えを改めて編集に合意しましたが、この当時のアサンジは、「情報は全て公開されるべき」「情報提供者は自身の身に危険が及ぶ事など知っているはず」という、やや傲慢とも取れる姿勢を持っていたといいます。 その他にも、些細なことでアサンジとトラブルを起こす人も多かったようですが、詳しい記述は、本を読んでみて下さい。

本書は、今話題の「WikiLeaks」、及び創始者のジュリアン・アサンジについて、イギリスの新聞『ガーディアン』の特命取材チームがまとめたルポルタージュ本。

・ ジュリアン・アサンジはどんな人物なのか? ・ アフガニスタン戦争やイラク戦争の機密のリークはどのように行われたのか? ・ ウィキリークスが目指すものは何か? その危険性は?

などなど、興味のある方はぜひ、読んでみて下さい。

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ウィキリークス WikiLeaks  アサンジの戦争

ウィキリークス WikiLeaks  アサンジの戦争

ウィキリークスの創始者、ジュリアン・アサンジ。彼は一体、いかなる人物なのか?早くからウィキリークスに注目してきたイギリスの大手メディア『ガーディアン』誌の特命取材チームがまとめた、ルポルタージュ本。ウィキリークス設立時の様子や、アサンジの人となりを知ることのできる一冊です。