だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第1333回 「マネジャーの実像 「管理職」はなぜ仕事に追われているのか」

あなたの職場の管理職の人達は「良いマネジャー」と呼べますか? 著者自らが様々なマネジャーに密着し、その仕事の実態を観察・分析。本当に良いマネジャーとはどんな人物かに迫ります。異色のビジネス書が、36年の時を経てリニューアル。その驚きの結論が「優れたマネジャー像」を明らかにします。

新刊ラジオを購読する方はこちら

読む新刊ラジオ 新刊ラジオの内容をテキストでダイジェストにしました

理想的なマネジャーの姿

本書は、36年前に「マネジャーの仕事」というタイトルでリリースされたビジネス書のリニューアル版です。

● 著者について 著者のヘンリー・ミンツバーグさんは、マネジメントのあり方や組織形態、戦略策定プロセスといったマネジメント全般の専門家として、カナダ・マギル大学で教授をされている方です。2000年には米国経営学会から優秀研究者に選ばれるなど、大きな影響力を持つ経営学者です。

マネジャーの実像 「管理職」はなぜ仕事に追われているのかは、社長、中間管理職、現場責任者といった様々なマネジャー(管理職)の仕事を通して、「理想のマネジャーのあり方」に迫った経営書です。

「第1章マネジメントがいちばん大事」から始まる全6章+α(密着日記のようなものなど)の内容で、「マネジャーはマネジメントの意味を理解しているか?」「マネジャーの性質とは?」「リーダーはマネジャーより重要か?」といったテーマに切り込んでいきます。

今回の本を作るためにミンツバーグさんは、29人の立場が異なるマネジャーに密着し、その仕事ぶりなどを観察してきたそうです。そして観察の中で気付いたマネジャーの性質や仕事の特徴を、イメージと現実で比較しながら解説してくれます。

多くのマネージャーに共通する性質

人々はマネジャーの印象について、「どっしり腰を落ち着けて、大きなビジョンを考えながら決断を下し、計画的に仕事を進めている」というイメージを持っている人が多いそうです。 しかし実際は、「常に時間に追われ、関連性のない仕事を細切れにおこない、頻繁に中断を入れながら自分で作業を実行している」というのが現実なのです。

マネジャーの1日は、たとえば・・・。 現場トラブルの報告を受ける      ↓ メールをチェックする      ↓ 案件について部下が説明に来る      ↓ 退職する部下が挨拶に来る      ↓ またメールをチェックする      ↓ そのうちに重要な会議がはじまる〜

このように、1つのことに集中することなく過ぎていきます。そのため、仕事と雑務が混ざり合ったマネジメントの現場では、マネジャーには頻繁かつ素早く気持ちを切り替える能力が求められるのです。

ちなみに、観察した中で最も細切れの仕事をしていたのが、カナダのテレフォンブース社社長・マックス氏だそうです。 氏は、こんな毎日を過ごしていたのだとか……。

「9時28分、マックス・ミンツバーグは社長室のドアのすぐ外でローヌと言葉を交わし、一部の機種の電話機に発生している問題について話す。 その後、アシスタントのトラチと一緒に書類の山と格闘。通りかかったピエールに、ある計画を保留にするよう指示する。 15秒後、またトラチと作業を再開。そこへ財務担当のモニクがやってきたので、以前指示した件の報告を受ける。 数秒後またトラチとの作業に戻る。今度は顧客サービス担当のアンナが顔をのぞかせ、ある問題が解決したと報告する。 ここで時刻は9時35分。あっという間に7分が経っていた……」

…なんて慌しい。

なぜマネージャーは仕事に追われるのか

なぜ、マネジャーポジションの人の多くはこんなに慌ただしいのでしょうか? この状況を不本意ながら強いられているのか? それとも、自らそういう仕事のスタイルをえらんでいるのか? ただ要領が悪いだけなのか?

ミンツバーグさんはここで、マネジャーの性質の1つを提示します。 「マネジャーは経済学で言う“機会損失”を恐れていて、一つの仕事に専念することで最新の情報や望む結果を逃してしまうのを恐れている」 「その時どんな仕事をしていても、他にやるべき仕事があるのではないか?と不安になっている」

そして、そういう不安に対応するために、 ・沢山の仕事を抱える ・いきなり何かを始める ・自分が出る意義のある場にのみ出席する ・1つの問題に時間をかけ過ぎない といった行動パターンを身につけていくのだそうです。

さらにこのことから、「様々な業務の上っ面を上手に撫でられるようになる」のが、マネジャーとして成功するポイントになると結論づけています。

みなさんの職場にも、管理職なのにやたら忙しそうで、自分でガンガン動いている人っていませんか? それは必ずしも仕事が下手というわけではなく「マネジャーの性質」というものかもしれません。

ミンツバーグさんは、理想のマネジャーのあり方として、「カリスマでも戦略家でもなく、次々にふりかかる忌々しい問題とエンドレスに付き合えるタフな実務家」と言っています。自ら動き回る、行動志向の有無は、理想のマネジャーとしての素質に関わるのかもしれません。

本書は、400ページ超えの骨太な内容です。理想のマネジャー像や、マネジメントの奥深さについて、36年ぶりに復活したロングセラー本は、現代のマネジメントのあり方にどのような一石を投じているのか。 ぜひ読んでみてください。

ラジオを聴く

マネジャーの実像 「管理職」はなぜ仕事に追われているのか

マネジャーはタフじゃないとね。

マネジャーの実像 「管理職」はなぜ仕事に追われているのか

マネジャーの実像 「管理職」はなぜ仕事に追われているのか

あなたの職場の管理職の人達は「良いマネジャー」と呼べますか? 著者自らが様々なマネジャーに密着し、その仕事の実態を観察・分析。本当に良いマネジャーとはどんな人物かに迫ります。異色のビジネス書が、36年の時を経てリニューアル。その驚きの結論が「優れたマネジャー像」を明らかにします。