新刊ラジオ第1310回 「イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」」
“「やるべきこと」は、実は100分の1になる” 本書は、マッキンゼー&カンパニー出身のコンサルタントが、限られた時間で成果に結びつけることに徹底的にこだわったアプローチ「イシュー」の本質を解説する一冊。イシューを精練させることで、解の質が高まり、アウトプットはより生産性の高いものへと成長します。著者のブログから、数千のブックマークが付けられたことでも話題となった知的生産を学ぶ書の決定版!
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価値のあることだけやる“イシュー”のコンセプト
● 著者について 安宅和人さんは、1968年、富山県生まれ。東京大学大学院生物化学専攻にて修士号を取得。その後、マッキンゼー・アンドカンパニーに入社し、4年半の勤務後、イェール大学・脳神経科学プログラムに入学。平均7年弱かかるところを3年9ヶ月で学位を取得。 2001年末に、マッキンゼー復帰に伴い日本に帰国。マーケティング研究グループのアジア太平洋地域における中心メンバーの一人として、飲料・小売・ハイテクなど幅広い分野におけるブランド立て直しや、商品・事業の開発に従事されてきました。 2008年よりヤフー株式会社に移り、現職。COO室室長として、幅広い経営課題・提携案件の推進などに従事されています。
『イシューからはじめよ』は、限られた時間で、 成果に結びつける仕事をするためのアプローチ「イシュー」の本質について解説された本です。
「イシュー」とは何なのか? これについては、本書でじっくりと解説されていますが、ひとことで言い表すならば、「知的な生産活動の目的地となるもの」といえるかもしれません。
知的な生産活動とは、すなわち「生産性の高い仕事」です。 少ない「インプット」(時間と労力)で、たくさんの「アウトプット」(成果)を生み出すことができる仕事を、「バリューのある仕事」といいますが、安宅さんは、この「バリュー」の本質は、2つの軸から成り立っているといいます。 1つ目の軸は、「イシュー度」。2つ目の軸は、「解の質」です。 それぞれ説明していきましょう。
バリューを高める働き方
まずは、ヨコ軸の「イシュー度」から、説明していきましょう。 「イシュー」というのは、安宅さんの定義によるとこのようなものです。 ・2つ以上の集団の間で決着のついていない問題 ・根本に関わる、もしくは白黒がはっきりしていない問題 つまり、「イシュー度」とは、「自分のおかれた局面でこの問題に答えを出す必要性の高さ」となります。――わかりやすい言葉に直すと、「考える価値のある問題かどうか」となりますでしょうか。
次に、タテ軸の「解の質」ですが、「解の質」とは、「そのイシューに対してどこまで明確に答えを出せているかの度合い」となります。――「問題に対する施策の明確さ」みたいなイメージです。
バリューのある仕事をするためには、タテ軸ヨコ軸の両方をあげていかなければなりませんが、多くの人は、「解の質」ばかりが仕事のバリューを決めると考えてしまいがちだといいます。つまり、与えられた問題、現状わかっている問題自体を考えることをせず、問題に対する施策の精度ばかりに目がいってしまうのです。その施策の精度が仕事のバリューを決めると考えるわけです。
もちろん、「解の質」は、アウトプットに大きく影響します。しかし、解の質ばかりに目がいっていると、どんなに一生懸命仕事をしても、結果としては、バリューがあがってないということにもなりかねないのです。 なぜなら、「イシュー度」の低い仕事は、どんなに「解の質」が高くても、受益者(顧客やクライアント、評価者)から見たときの価値は少ないのです。どんなにすばらしい施策だとしても、考えの元となっているイシューの的が外れていると、「質」どうこうの前に、「解」自体に価値がないからです。 ですから、価値のあるアウトプットを生み出すためには、まずイシューを精練させなければならないのです。
では、バリューのある仕事をするためには、どうしたらよいのでしょうか。 バリューのある仕事をするには、イシューと、解の質、両方を上げていかなければなりませんが、このとき絶対にやってはいけないことがあるそうです。
それは、一心不乱に大量の仕事をこなして、「労働量」によってバリューを出そうとすることです。安宅さんは、この道を「犬の道」と読んでいます。 ※マトリクス図でいう左回りの道
安宅さんの経験によると、「問題かもしれない」といわれていることのほとんどは、取り組む必要のある問題ではないことが多いそうです。目安として、「問題かもしれない」と言われていることの総数を100とすると、今この局面で本当に白黒はっきりさせるべき問題は、せいぜい2つか3つくらいだと言います。 これに気づかないと、イシュー度の低い問題にたくさん取り組んで、必死に働いたはいいが、最終的にバリューが上がらず、疲弊していくという負けパターンに陥ってしまうのです・・・。
とるべきアプローチは、まずはヨコ軸の「イシュー度」を上げて、その後にタテ軸の「解の質」を上げていくことです。 イシュー度の高い問題を見極める判断ができないうちは、上司なり、先輩なりに聞いたほうが賢明です。 なぜなら、訓練されていない状態では、解の質も低い位置にあるので、検討にも十分に時間を確保したほうがよいからです。上司にイシュー度の高いものに絞りこんでもらった状態で、解を出そうと検討しているうちに、だんだんよい仕事になっていき、解の質が高まっていくのです。 これが、イシュー度の高いものに絞り込まないでがむしゃらに動いていては、ひとつひとつの解を検討する時間もとれず、成果にもならないし、時間に追われる苦しい仕事になってしまいかねないのです。
バリューを生み出すプロセス
月曜日から金曜日までの5日間で、あるテーマについてまとめる必要があるとします。何も考えずにはじめてしまうと・・・ 月曜日・・・やり方がわからずに途方にくれる 火曜日・・・まだ途方に暮れている 水曜日・・・ひとまず役に立ちそうな情報・資料をかき集める 木曜日・・・引き続きかき集める 金曜日・・・山のような資料に埋もれ、再び途方に暮れる
なんてことになってしまいます。
「イシューからはじめる」アプローチでものを考えると・・・ 月曜日・・・今本当に答えを出すべき問題=イシューを見極める 火曜日・・・イシューを解けるところまで小さく砕き、それに基づいてストーリーの流れを整理する 水曜日・・・ストーリーを検証するために必要なアウトプットのイメージを描き、分析を設計する 木曜日・・・ストーリーの骨格を踏まえつつ、段取りよく検証する 金曜日・・・証拠と構造を磨きつつ、報告書をまとめる
これなら、生産物を生み出すまでの全体像を把握できますし、 やるべきことを見極めたうえで行動しているので、無駄な量の仕事をこなす必要もありません。
このサイクルの肝は、月曜日の「イシューを見極める」というところだと思いますが、その方法は、続きの章で説明されています。 「現場に出て一次情報を大切にする」とか、「基本情報をおさえておく」といった基本的な要領からフレームワークのテクニックが解説されています。続きは本で読んでみてください。
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