新刊ラジオ第1297回 「かたよらない こだわらない とらわれない 般若心経の力」
仏教において、宗旨、宗派を越えて読まれている「般若心経」。「かたよらない こだわらない とらわれない」という「空」の心を説いた般若心経は、お金や情報という「色」の世界に生きる現代人に、大きな気づきを与えてくれるだろう、と著者の村上太胤氏が書いた本書は、皆さんの「生き方」に大きな影響を与えてくれるでしょう。
読む新刊ラジオ 新刊ラジオの内容をテキストでダイジェストにしました
般若心経の説く、「空」の心の大切さ
● 著者について 村上太胤さんは、1957年生まれ、9歳の時に奈良の薬師寺に入山。橋本凝胤(ぎょういん)に師事。通称:昭和の怪僧。現在は、薬師寺執事長。法相宗(ほっそうしゅう)宗務長、薬師寺岐阜別院住職も兼務。
● この本のテーマ 般若心経の説く、「空」の心の大切さを伝える
この本は二部構成になっています。第1部では、現代において般若心経をどう活かしていくかということについて書かれています。お坊さんの話というのは、いつの時代もありがたい、良いお話ですね。頷きながら読みふけってしまいます。
第2部では、以前村上さんが書いた『仏教のエッセンス 般若心経』(2004四季社)に加筆・修正をした内容になっています。般若心経の歴史や、語句の解説や精神的な部分を(村上さん曰く)ごく簡略に説明しているそうです。
【般若心経について】 般若心経は、経典の中でも最大の『大般若経』全600巻の中のエッセンスを抜き出したものです。漢文で書かれていますが『般若心経』はなんと全260字ちょっとです!
この短いお経の中に、般若経の智慧である、「空」の心が凝縮されているのです。著者の村上さんによると、般若心経は最初の25文字に、全体の思想がまとめられているのだそうです。
観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空 度一切苦厄 現代の言葉に訳すとこうなります。(意訳も入ります)
「観自在菩薩が、深く智慧の完成を実践されたとき、 この世を構成するものは、みな「空」であると見きわめ、 すべての苦しみや厄難を乗り越えられた」
この「空」という思想こそ、般若心経の重要なエッセンスです。簡潔に言えば「かたよらない こだわらない とらわれない」心のことです。さらに言ってしまえば「この世にある全てのものは、なーんにも無いよ。」という教えです。
「なーんにもないから、あなたの苦しみなんてないよ」 「苦しみなんてないから、修行者は智慧の完成を目指すよ」 「だから心を妨げるものもないよ」 「心を妨げるものがないから、恐れる事もないし、見誤る事も迷いもないよ」 と続いていきます。
その内容は簡潔すぎて、むしろ哲学的です。 数学の「ゼロ」の概念を世界で一番最初に認めたのはインド人だったと言われていますが、そのインドで生まれた『般若心経』が説く、「空」の心は、それと通じるものがあるのかもしれません。
般若心経は現代にどう役立つか
こういった「空」の心が、現代人にはどう役立つのでしょうか。本文からの抜粋です。
私も団塊の世代ですから定年を迎えた友人がたくさんいますが、どうも上手に年をとる人とまったくその逆の人がいるのではないかと感じます。その違いは何なのかなと考えると、やはりふだんからの心の持ちようにあるようなのです。会社で偉くなる。人よりお金を儲けよう。そういう事を第一に生きてきた人は、仕事を終えたとき、心が貧しくなっているのかなという気がします。何ごとも右肩上がりがいいわけではないのですね。今はとらわれない心をもう一度取り戻すことが必要な時代ではないでしょうか。
「色即是空」という言葉がありますが、「色」というのは形あるもの、目に見えるものの事です。そういう目に見えるものを追い続けた結果、心が貧しくなってしまう。そうではなく、空の心「かたよらない、こだわらない、とらわれない」心が、現代人に大切ではないか?そのように村上さんは説いているのですね。
若く、働き盛りであればあるほど、目に見えるものに捉われがちなのかもしれません。著者の村上さん自身も、そういう気持ちがあり、まだまだだなと感じる事があるそうです。そういう時代に、村上さんはこの本を通じて、般若心経の事をより広く知ってもらい、心を豊にして欲しいと思っているといいます。
法話と解説で一人の僧侶が説く「般若心経の世界」。 悩みや不安、ストレスを感じている方は、この本で般若心経に触れてみては如何でしょうか?
かたよらない こだわらない とらわれない 般若心経の力 |