だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第1296回 「スマ−トメディア 新聞・テレビ・雑誌の次のかたちを考える」

出版業界の次世代メディア大予測! 『DIME』創刊編集長などを経て、長く雑誌づくりの最前線で活躍してきたメディアプロデューサーが、従来型マスメディアを検証し、次世代メディアの形を明らかにします。果たして、電子書籍のポテンシャルとは?? そして、紙の書籍はなくなってしまうのか?!

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出版×IT 次世代メディアとは?

● 著者について 中村滋さんは、1966年、小学館に入社。各種、漫画・雑誌の編集に携わり、『BE-PAL』『DIME』『サライ』の創刊編集長を歴任。インターネット関連事業(ケータイコミックの配信や、電子辞書のデジタル版配信など)を主に行っていました。2009年、小学館専務取締役を退任。現在は、メディアプロデューサーとして活動されています。

● この本のテーマ 従来のマスメディアを検証し、次世代メディアの姿を予測する

長く雑誌づくりの最前線で活躍してきた中村滋さんが、マスメディアの変遷を検証し、なぜ雑誌は売れなくなったのか? インターネットの誕生は出版にどのような影響を与えたのか? などを解説し、結論として、次世代にくるメディアの姿を予測して、“スマートメディア”の作り方を語っています。

今回は、著者の中村滋さんをゲストにお招きました。 その模様はこちらからお聴きいただけます。

概要のテキストは以下です。

「スマートメディア」とはどんなものか?

最近、スマートという言葉がよく使われます。代表的なものが、スマートフォンや、iPadのようなスマートパッドです。更に、SonyがGoogleと組んで開発したGoogleTVも、スマートテレビです。 英語のsmart(かしこい)の意味から、スマートメディアは、「かしこいメディア」のことです。この本では、スマート端末を総称して、「スマートメディア」と呼んでいます。

この本を書くに至った経緯は?

私は会社を引退してから1年半くらい経ちますが、その間、出版、IT、マスコミ業界で、不況について色んな人が色んなことを発言していました。出版業界の内部にいた私からすると、どれも「何か違う」というすっきりしない思いがありました。 また、私は雑誌編集者として長くこの業界を見てきましたが、「なぜ雑誌が売れないのか?」「新聞をなぜ読まなくなるのか?」「テレビを見えない人が増えているのはなぜか?」と考えていました。この疑問に何かしらの答えを出したいというのが、この本を執筆した動機です。

電子書籍は読書のスタンダードになるのか?

2010年は電子書籍元年と言われていますが、電子書籍はいくら騒いでも、なかなか浸透しないのではないでしょうか。紙の本は、300年以上続いているにもかかわらず、ほとんどその形を変えない優れたメディアだと思います。私たちも、本が紙であることが理由で困ることはほとんどありませんよね。だから、本が電子書籍になったから売れるかというと、そんなことはないと思うんです。 一方で、最初からディスプレイで本を読んで育った子どもたちが、紙の本を読むかというと、それはそれで疑問です。将来的には、電子書籍がスタンダードになることも考えられますが、すぐに浸透するかというと今の段階ではそうは思えません。

電子書籍への作り手側の課題は?

著作権管理の問題、複数ある端末への対応の問題、流通の問題など、解決するべきことは山積みです。 取分けて、出版業界には、「紙の本を作り、流通させ、読者に届ける」という長年培ってきた流通のシステムがあります。出版社は、このシステムを当然、壊したくありません。すると、本の電子書籍化は、ゆっくりいかざるを得ないのです。 読者の視点に立てば、電子書籍を利用するには、端末を購入する必要がある一方、流通も統一されていない、価格も安くないという状況で、メリットがあまりにも少ないのです。 すべての本が電子書籍化して、価格も3分の1以下になれば、電子書籍の浸透もリアルに見えてくるのではないでしょうか。そこに至るまでは、それ相応の時間を要するのだと思います。

スマートメディアの成立と、ユーザーが求めている「次世代のメディア」とは?

スマートメディアが成立する条件は3つあります。 これらは、自分達(雑誌編集者や新聞社)ができなかったことでもあります。

クラウド(形で持たないこと) 今までは、雑誌、単行本、新聞、辞書といったメディアを個別に所持していました。スマートメディアはエンドレスに拡張することができるので、メディアをひとつひとつもつ必要がなくなります。

フロー(更新される) 旧メディアが扱う情報というのは、ある意味で「死んだ情報」でした。例えば、『サライ』での桜の特集は、去年の取材なんです。桜のシーズンに取材していては間に合わないからです。そこで去年の取材を伝えるわけですが、これはフローではないのです。 スマートメディアであれば、月刊・日刊などは無関係に、フローで情報を流せるわけです。

1to1(個別に対応すること) ユーザーが求めているこれからのメディアとは、「自分だけの情報」を自分が受取れるという形なのだと思います。 今までメディアは、ひとつの情報をみんな(マス)のために送信していました。しかし、これからは、ある情報を自分のためだけに送って欲しいと求められると思います。1対他ではなく、1to1なのです。 1to1のメディアは、今までのマスメディアには不可能です。それができるのは、スマートメディアなのでしょう。

スマートメディアは、ビジネスとして売上になるのか?

もちろんなると思います。 しかしその前に、「これから世の中で必要なモノは何か」ということを考えるべきだと思います。きちんとしたモノを作れば、広告も入るでしょうし、商品を売ることもできると思います。ですが、「これから必要な物はこれだ」という発想をスタートにして進まないと、どこかで間違うと思うのです。

旧メディアと、IT業界の人との違いなのかもしれませんが、私たち出版業界の人間はメディアを育てようとします。 たとえば、雑誌というものは評価がないと広告も入りませんから、創刊から3年くらいまではお金になりません。「雑誌は果樹園を作るようなもの」といいますが、実がなるまでは育てなければなりません。育てることができれば実がなってくるのです。

IT業界の人は、4半期で効果出すような戦略を立てますね。その考え方がわからないわけではありませんが、メディアはふつうの商品とは違い育てていくものだと思うのです。

インタビューの続きは、こちらからお聴き下さい!

スマ−トメディア 新聞・テレビ・雑誌の次のかたちを考える

スマ−トメディア 新聞・テレビ・雑誌の次のかたちを考える

出版業界の次世代メディア大予測! 『DIME』創刊編集長などを経て、長く雑誌づくりの最前線で活躍してきたメディアプロデューサーが、従来型マスメディアを検証し、次世代メディアの形を明らかにします。果たして、電子書籍のポテンシャルとは?? そして、紙の書籍はなくなってしまうのか?!