新刊ラジオ第1281回 「あなたが裁く! 「罪と罰」」から「1Q84」まで」
2009年から始まった裁判員制度により、一般市民は誰でも、いきなり裁判員として呼ばれてもおかしくない時代となりました。そんな中、本書は名作文学や名作映画を素材に、気軽に分かりやすく刑事裁判の全体像を伝えてくれる良書です。『罪と罰』のラスコーリニコフの量刑は?『羊達の沈黙』のハンニバル・レクター博士の責任能力の有無は?答えは本書にて!
読む新刊ラジオ 新刊ラジオの内容をテキストでダイジェストにしました
あの名作映画を日本の法律で裁いてみると?
● 著者について 1959年生まれ、東京地裁・大阪地裁などの裁判官を経て、現在は弁護士。これまでの著書には『裁く技術―無罪判決から死刑まで』(新刊ラジオ 第993回)『裁判員のためのかみくだき刑法』『裁くための練習帳』などがあります。
● この本のテーマは?! 「名作文学、名作映画を素材に刑事裁判の要点を伝える!」
本書は、とてもとっつきやすい一冊です。法律を専門に勉強してこなかった人でも、気軽に楽しめて、且つ刑事裁判の全体像が分かる本に仕上がっています。
『罪と罰』『1Q84』など、新旧あわせて24本+αの名作を例に、その中に出てくる事件の主犯者や共犯者を現在の日本の刑法と照らし合わせて裁いていくという内容です。各名作の簡単なあらすじ紹介も本文中でなされていますから、原作を読んだ事がなくても問題ありません。
次のページに登場作品の一覧をまとめておきます。
登場作品の一覧まとめ
第1章 殺意に駆られる「魔の瞬間」
1 ロバート・ワイズ「ウエスト・サイド物語」 …殺人事件の標準は衝動的殺人 2 ジョージ・スティーブンス「陽のあたる場所」 …湖上のボート転覆殺人は無罪か死刑か 3 カミュ「異邦人」 …「太陽のせい」で人を殺したら、はたして・・・ 4 スティーブン・スピルバーク「激突!」 …車社会のありがちなトラブルが殺人罪に
第2章 計画犯罪の死角
5 ドストエフスキー「罪と罰」 …ラスコーリニコフは、本当は死刑!? 6 ルネ・クレマン「太陽がいっぱい」 …華麗なるアラン・ドロンの死体なき殺人事件 7 ルイ・マル「死刑台のエレベーター」 …アリバイなき殺人容疑と完全犯罪 8 エミール・ゾラ「テレーズ・ラカン」 …情夫を使った背徳の妻の夫殺しの罪は何? 9 ヘンリー・ハサウェイ「ナイアガラ」 …立証困難なマリリン・モンローのセクシーな犯罪
第3章 犯人と被害者の「様々なる情状」
10 アンジェイ・ワイダ「灰とダイヤモンド」 …テロリスト、暗殺者も死刑にはならず 11 レマルク「凱旋門」 …恋人の復讐のための殺人、その是非は 12 ジャン=リュック・ゴダール「勝手にしやがれ」 …無頼派不良の考えなしの殺人は厳罰か 13 スタンダール「赤と黒」 …男女関係のもつれによる殺人は軽いか重いか 14 フランシス・コッポラ「ゴッドファーザー」 …マフィア、暴力団にかかわる殺人 15 アーサー・ペン「俺達に明日はない」 …未成年者の凶悪犯罪はどう裁かれるか
第4章 裁くものにとっての法廷の掟
16 ジェームス・ケイン「郵便配達は二度ベルを鳴らす」 …交通事故偽装殺人と裁く者を惑わす魔力 17 J.M.ディラード「逃亡者」 …逃げるリチャード・キンブルをどう裁く? 18 トマスハリス「羊達の沈黙」 …ハンニバル・レクター博士と責任能力 19 ブライアン・デ・パルマ「アンタッチャブル」 …エリオット・ネス隊長とアル・カポネの法廷での勝敗 20 グレアム・グリーン「第三の男」 …警察への協力で容疑者を射殺してしまったら
第5章 現代ミステリーが描く「闇と光」の虚実
21 東野圭吾「容疑者Xの献身」 …同情すべき殺人の刑罰はどこまで下がるか 22 宮部みゆき「模倣犯」 …仲居正広演じるピースの猟奇殺人は無罪かも? 23 吉田修一「悪人」 …それほど悪人とは思えない殺人犯の扱い 24 村上春樹「1Q84」 …マインドコントロールのもとの殺人と死刑
今日の新刊ラジオでは、ブックナビゲーターの矢島雅弘が感想を交えながら、作品を紹介しています。
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