新刊ラジオ第1273回 「ゆれるあなたに贈る言葉」
NHKの伝説の番組「プロジェクトX」を指揮してきた男が、すべての仕事人に贈る言葉と想い。日本でいちばん多く、一流のサラリーマンを取材してきた“ドキュメンタリスト”の顔と、NHKという巨大組織に身を置いて培ってきた“組織人”としての顔、2つの側面から、「仕事のやりがい」「人間関係」「金銭面」などをテーマに、働くことの指針を綴った一冊です。
読む新刊ラジオ 新刊ラジオの内容をテキストでダイジェストにしました
「プロジェクトX」元プロデューサー、仕事の指針とは?
●著者について 今井彰さんは、1956年生まれの、元NHKエグゼクティブプロデューサー。 「湾岸戦争」「薬害エイズ」「不良債権」など、この二十年におきた社会を揺るがす事件の真相を、果敢に番組にしてきた方です。「プロジェクトX」のプロデューサーも手がけました。 今井さんが手がけた番組は、何千万人の視聴者に強烈なインパクトを与え、社会そのものを動かしてきました。たとえば、当時厚生大臣だった菅直人さんは、薬害エイズ患者の救済に尽力しましたし、歌手の中島みゆきさんは、今井さんがいたからこそ『地上の星』を作り上げました。 その功績が認められ、文化庁芸術作品賞、菊池寛賞、橋田壽賀子賞といった、放送業界の賞を総なめにしています。
●この本のテーマは?! 本書は、“ドキュメンタリスト”としての今井さんと、NHKの“組織人”として今井さんが、それぞれの経験の中で見出した、働くということの「指針」について書かれた本です。
まず、今井さんは、日本でいちばん多く一流のサラリーマンを取材してきた、ドキュメンタリストです。取材を通じて、日々、本物の仕事人と関わり合い、一流の思考に触れてきました。本書では、そうした経験の中で学んだ「仕事の指針」というものを読むことができます。
そして、今井さんは、NHKという巨大組織に30年間身を置いてきた“組織人”でもあります。ドキュメンタリー番組の制作者としては、世の中から高い評価を受けていた今井さんですが、NHKという組織の“社員”としては、番組への評価とはまったく違った評価だったんです。
というのも、今井さんのように尖ったことをしていて、なおかつ成果を出していると、同僚からの嫉妬を受けてチームを組むのを拒否されたり、チームを組んでも「手を出すな」と、制作に関われなくされたり、しかもその結果トラブルを起されて、その責任を押し付けられそうになったり…。そういうことが、組織の中には存在していたのだそうです。 他にもたくさんのことが書かれていたのですが、そういった巨大組織であるがゆえに起こってしまう出来事は、読んでいて胸の詰まる思いでした。
仕事がつまらないと思うなら
今井さんは、もしあなたが「仕事がつまらない」と感じているのであれば、それはあなたが向上心が高いことの証拠だと言っています。
例えば、与えられた仕事をこなすだけの、漠然とした日々を過ごしていることに気づいたとしても、「まぁこれも楽だからよしとするのか」となるのか、「仕事がつまらない…どうしよう」と悩み出すのか、それはあなたの気持ち次第ということになります。
そして、今井さんはつまらない日常から脱出する方法として、「オールを手に持ち、知識の海に漕ぎ出そう」と言っています。これは、「自分の知識量を増やし、深いものにする」という意味です。 知識というのはもちろん、目の前にある自分の現場の知識です。 今まで毎日同じように見えていたものでも、一歩深い知識を得たり、別の方面からの知識を習得したりしていくうちに、目線が変わる瞬間がやってくるのです。つまり、今まで見ていた物と違うものが見えてくるということです。
今井さんは、「知ることとは、自分の目の前にある風景を変えることだ」と言います。知ることによって、今までとは違う深さで自分の仕事を見つめなおすことができ、新しい発見が見つかるのかもしれないのです。
●章構成 この本で語られているテーマは、ざっくりと以下の内容です。
・人間関係が築けず ゆれるあなたに ・つまらない仕事に ゆれるあなたに ・人前でうまく話せず ゆれるあなたに ・悪魔のような上司に遭遇し ゆれるあなたに ・こんなリーダーに仕えたいと ゆれるあなたに ・仕事ができずに ゆれるあなたに ・金が欲しいと ゆれるあなたに ・困った部下に ゆれるあなたに ・プロジェクトの立ち上げに ゆれるあなたに ・会社を辞めるか否か ゆれるあなたに ・他人の出世に ゆれるあなたに
会社で働いていると、思い通りにいかなくて辛いことや、悔しいことがたくさんあると思います。この本は、そんな“悩める仕事人”のみなさんや、今現在、自分の仕事に迷ったり、ゆれたりしている方に、ぜひ読んで欲しいと思います。
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