新刊ラジオ第1267回 「人生という名のレッスン」
子供は大人に、「忘れていた大切なこと」を教えてくれます。四肢麻痺で精神分析医の著者と自閉症の孫息子との交流を描く、心あたたまるエッセイ。「人生という名の手紙」、「人生という名の先生」に続く、第三弾!人生の、心の拠り所となる17のレッスンが収録されています。最初から読むもよし。気になる章から読むもよし。何度も繰り返し読んで欲しい一冊です。
読む新刊ラジオ 新刊ラジオの内容をテキストでダイジェストにしました
四肢麻痺の父親が、自閉症の息子に当てた手紙
● 著者について 著者のダニエル・ゴットリーブさんは、精神分析医。家族療法士。フィラデルフィアWHYYラジオの司会者。30代で交通事故に遭い頸椎を損傷し、四肢不自由になります。2人の娘を持つ父親。 本の中で登場するサムは、氏が53歳のときに生まれた、たったひとりの孫息子です。
● 監修者について 監修者の児玉清さんは、1934年東京生まれ。学習院大学卒業後、東宝ニューフェイス13期生として採用され、俳優へ。書評家としても知られており、週刊誌書評コラム、文庫解説など寄贈。ダニエル・ゴットリーブの「人生という名の手紙」「人生という名の先生」でも監修をしています。
本書の原題は、「The Wisdom of Sam」。直訳すると「サムの賢さ」。サブタイトルには、「Observations on Life from an Uncommon Child」と続いています。
直訳すると、「めったにない、まれな子供の生活観察記録」です。 本書は、著者の孫息子サムが誕生したその日から、今日まで過ごした、数知れぬ喜びや感動が生き生きと綴られた本です。
自閉症を克服しつつ、自閉症児であるがゆえのピュアさ、ビビッドな心、美しくやさしい気持ち、周りの人への思いやりといたわりの心をもつサム。そんなサムの日常は、大人の心に優しく響いてきます。
私たちは、2人の親子からどんなことを学べるのでしょうか。
自閉症のこどもが見ている世界
サムは自閉症児であるがゆえに、わたしたちとは少しだけ違う世界を感じ、生きています。 その世界は、わたしたちのように周囲の状況に左右されることが滅多にないので、わたしたちが見逃しているものに気づくことができる素敵な世界なのです。
例えば、重要なメモが書かれた紙がここにあります。あなたならどうしますか? たぶん、メモの内容を読んで、そのメモに対する事の対策を考えますよね。
しかし、サムは違うのです。 メモ用紙の手触りや、メモの色、そんなところに気がつくことができるのです。 そのほかにも、追い詰められた人がとっさに口にした言葉、みんなが慌てふためいている時の夕焼けの色といったことに、ちゃんと気づいているのです。
しかし、細部に気を取られているからこそ、人とのやり取りが苦手だったりするのです……。
本の中では、サムの目から見た、サムの世界を知ることができます。それだけでなく、わたしたちが、かつて知っていたのに忘れていること、このチャンスを逃せば永遠に忘れ去ってしまっていたことを思い出させてくれることと思います。
サムがいるから、サムがいろんなことを教えてくれるから、この本はできました。
今日の新刊ラジオでは、ダニエルさんとサムのこんな対話を紹介します。
「サム、おまえは他の子と同じだと思うかい? それとも、違っているかな?」 ダニエルさんは訊ねました。
サムは一瞬考えてから答えました。 「…違っているよ」
人生という名のレッスン
自閉症のこどもが見ている世界がわかります。 |