新刊ラジオ第1258回 「ドラッカーの講義(1991-2003)〜マネジメント・経済・未来について話そう〜」
P・F・ドラッカー氏の講義・講演・スピーチを、1991年から2003年の範囲で17本まとめた一冊。他界してから約5年経つドラッカー氏ですが、これまで刊行されてきた著書は、ほとんどが彼の著作および論文をベースとした「書き言葉」によるものが主流でした。今作は、それとは違うアプローチすなわち「話し言葉」によるドラッカーの思想に触れる事ができる、価値ある一冊です。
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ドラッカー12年分の講義録
☆音声ですぐに聴くなら・・「新刊ラジオショート3分版」 3分でわかる『ドラッカーの講義(1991-2003)』(再生)
3ヶ月ほど前、『ソロスの講義録 資本主義の呪縛を超えて』(新刊ラジオ 第1170回)ご紹介しました。この本は、アメリカの投資家、ジョージ・ソロスが、中央ヨーロッパ大学で教えた講義を本にしたものでした。
大学の講義というのは、中学や高校とは違って、「試験に受かるための勉強」ではなく、「知識を深めるための勉強」です。人気のある教授や授業の講義は、例え専門分野が違っても、知的好奇心を刺激されて面白いものばかりです。NHKの「ハーバード白熱教室」という番組で、マイケル・サンデル教授の「正義」についての講義が紹介され、人気を呼んでいましたね。
今回紹介するのは、P・F・ドラッカーの講義をまとめた本です。1991〜2003年の間の、大学の講義や、講演、その他のスピーチなども含めた17本がまとめられています。講義のテーマは、一見バラバラのようですが、大枠で見ると「マネジメントについて」「これからの経済社会について」「一人の知識労働者として、どうあるべきか?」といった視点で共通しているように思います。
穏やかな口調ながら、時折、ピリッとさせられる名言や苦言も残しています。 例えば、「これからの優先課題」と題して、社会的な今後の課題について語っていたスピーチにて、政府政策に関して飛び出した名言です。
『1950年以降、有効に働いた政策はひとつもありません。』
「政府というものは国家全体の問題には強いが、地域や個人間の問題には上手く対処できる組織ではない。1950年代以降、そしてこれからは、地域や個人の方の問題を解決するのが社会的な課題である」ということです。ちなみに、ドラッカー曰く、日本だけが唯一例外だったそうです。
ドラッカーの慧眼の原点
ドラッカーといえば、注目されるのがその慧眼。すなわち、未来予測ですが、ドラッカーは根拠の乏しい、もしくは数字だけを根拠にした予言はほとんどしません。基本的に事実や経験に基づいて、歴史の転換期を示す話し方をします。
例として挙げたいのが、この本の162pからの一説です。 ドラッカーの元教え子で台湾で成功したあるビジネスマンが言った言葉。
「私たちは今、乗用車を所有するのは必要だからなのであり、贅沢なことではないと考えています。」
これは2001年の講義で話した内容ですが、この発言から、ドラッカーは「グローバル化とはこういう事です」と続けます。つまり、意識や価値観の根本的な変化が、グローバル化であり、製品やサービスが広く全世界で取引される事ではなく、情報が世界中を駆け巡る事がグローバル化だと、ドラッカーは指摘しています。
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