新刊ラジオ第1247回 「蜜の証拠」
アラブで図書館司書を勤める若い女性は、ある日館内でアラブ古典性愛書を見つけ、“思想家”と彼女が語る男と出会う。彼女は自分の中で高らかに性の解放を叫ぶ――。アラブ世界・イスラム教圏で発禁となるも、世界20ヵ国で絶賛され、イスラム文化の本質を問うベストセラー性愛小説です。
読む新刊ラジオ 新刊ラジオの内容をテキストでダイジェストにしました
アラブでは発禁本に。官能的な性愛文学。
かつて、こんなニュースがありました。
1978年、サウジアラビアの王女が平民と駆け落ちしました。捕まった2人は公開処刑されました。男性は斬首刑。王女は銃殺刑だったそうです。
時は移って2009年、サウジアラビアの一般男性が衛星テレビの番組で、自らの性体験を告白して、逮捕されました。なんと死刑を求める声も上がったそうです。
アラブ世界で性問題というのは、“タブー”となっています。 今回は、そんな“タブー”に踏み込んだ性愛文学を紹介します。
● 著者について ネイミ・サルワ・アルさんは、シリア出身の詩人・ジャーナリスト。1970年代よりパリ在住。ソルボンヌ大学在学中は、アラブ文学と演劇を専攻。1980年に最初の詩集を刊行し、その後は、アラブ関係の新聞・雑誌でジャーナリストとして活動。2007年に、この「蜜の証拠」を出版されました。
● この本のテーマは?! イスラム女性の性愛を描いた文学作品
アラブ世界・イスラム教圏は、セックスの話をするのがタブーとされています。そのため、アラビア語圏では衝撃をもって迎えられ、大多数のアラビア諸国で発禁本に指定されてしまいました。 しかし、その後、18ヶ国で翻訳され、世界中でベストセラーになりました。
エロチシズムから、文学の世界へ。
本書は、「一の扉」から「十一の扉」で構成され、性愛をめぐる実にさまざまな物語と思想が、主人公である女性が語り部となって綴られていきます。語り手自身の幼い日の思い出。女友達の打ち明け話。男友達から語られる話などなど。
過去に会った男との思い出……。それらが、図書館、地下鉄やカフェ、パートナーと共にするベッドの中などを舞台に描かれています。 また、古典から引用される預言者の知見や、性の達人たちのエピソードなども交え、単純なエロチシズムではなく、文学的、哲学的な領域にまで話は及んでいきます。
今回は、そんな官能の世界を女性ナレーターの朗読でお届けします。
蜜の証拠
男性諸君へ。 実用的な本ではありません、念のため。(何が?) |