新刊ラジオ第1214回 「大前研一の新しい資本主義の論点」
リーマンショック後、世界の経済状況は大きく変わった。その中で生まれてきた?新しい現実?――「ニューノーマル」を日本の企業や経営者は知っておく必要がある。大前研一がハーバード・ビジネス・レビューの28の論文を厳選し、自らも論文を書き下ろした、世界の?現在?が判る珠玉の経済論文をまとめた一冊です。
読む新刊ラジオ 新刊ラジオの内容をテキストでダイジェストにしました
大前研一と、HBRから28の論文
● 著者について 大前研一さんは、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長およびビジネス・ブレークスルー大学学長。『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌で、経済のボーダレス化に伴う企業の国際化の問題や、都市の発展を中心として広がっていく新しい地域国家の概念などについて、継続的に論文を発表している。
● この本のテーマは!? リーマンショック後、世界の何がどう変わったかを知る リーマンショック後、世界経済は様変わりしました。そして今現在、世界では、その様変わりに呼応するかのように新しい現実?ニューノーマル?が形成されつつあります。 本書は、今、世界はどういう状況にあるのかを示し、日本企業のリーダーたちが持つべき新しい視点を提示しています。
大前さんが継続的に論文を発表している『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌に掲載された論文の中から、大小に関わらず、金融危機のその後の新しい現実?ニューノーマル?について書かれたものを集めたアンソロジーで、28の論文を収録しています。
そして、この本のために書き下ろした、大前さん自身の論文も入っています。論文の執筆人は経済界の大物揃いで、大前さんはまえがきで、「自分とは考えの異なる論考もあるが、新時代に対する彼らのアイデアからは、現状分析と戦略策定に関わる思考のヒントが、得られるはずだ」と、語っています。
● 章構成 序章 「ポスト金融危機の経営戦略」 第1部 「経済と金融」 第2部 「企業」 第3部 「グローバリゼーションと新興経済」 第4部 「技術と環境」
次のページでは、章別の概要を紹介していきます。
大前研一書下ろしの論考概要
序章 「ポスト金融危機の経営戦略」
序章は、大前さんが書き下ろした論考です。 大前さんはまず、世界経済の主役が交代していることを示しています。20世紀から21世紀初頭までの世界経済を牽引してきたアメリカ、イギリス、ドイツ、日本といった先進国は、2009年のGDPが軒並みマイナス成長になりました。リーマン後、各国とも金融支援策を実施したにも関わらず、かろうじて経済の底割れを防いだという状態だったわけです。
それに対して、中国、インド、インドネシアといった新興国は、プラス成長を続けています。BRICs・VISTA・NEXT11の発展の背景を検証し、そこから日本はこの先どうあるべきなのかを論じています。 大前さん曰く、この先、どういう市場に目を向けるべきか? ということについては「7億人」もいるアジアの中間所得層を獲得していくべきだと言います。その上で、新興国で事業を成功させるための条件などを挙げ、日本企業と日本のビジネスマンは、今ある問題にいかに取り組むかを示しています。
信奉されてきた「経済学」に警鐘を鳴らす
第1部 「経済と金融」 これまで信奉されてきた「経済学」に対する警鐘や、リーマンショック後の政府と企業の関係、個人向け金融商品の新たな在り方などが語られています。大規模な金融支援策の後に、まだまだ残る問題や、支援策を実施したことで新たに懸念される事柄などが取り上げられています。
第2部 「企業」 これから企業競争力の要となるであろう、各種「資源」の重要性や、Webの発展によって憂慮される、企業プライバシー保護の問題などを取り上げています。 中でも興味深いのは、奇しくも違う人物が同じようなテーマを取り上げた論考あるというところでした。 その論考とは、「企業と株主の関係」について言及したものです。 「株主第一主義」は止めるべきだ、という論旨ですが、実際、顧客・消費者にとっては株価がどうこうはあまり関係がありませんし、あくまで株主はステークホルダーの一角であるわけです。株価を重視するあまりに起きてしまったスキャンダルや、株主の顔色を窺い過ぎて、この不況の中、舵取りに失敗して顧客が離れてしまうというケースも少なくありません。 改めてマルチ・ステークホルダーへアプローチする必要があるという論考は、日本のビジネスの気質からは受け入れづらいかもしれませんが、将来を考える上では重要 なことではないかと思います。
中国、インド、アフリカの底力とは?
第3部 「グローバリゼーションと新興経済」 新興国企業の不況戦略や、これまでの先進国型の経済活動と新興国の経済活動との比較。さらに、そんな「新興国市場」に入り込んでいくにはどうするべきか、などが語られており、ワイドな視点で世界経済の現状を把握することができます。中国が注目されているのはもちろんのこと、インドやアフリカの成長や可能性に大きな期待が寄っていることがわかります。
第4部 「技術と環境」 4部は、様々な国で進んでいる新たな技術について触れた論考です。ナノテクを使った、地球規模のセンサーネットワークの開発や、「DSSC」と呼ばれる色素増大太陽電池、電力会社の新しいビジネスモデルなどが取り上げられています。
「DSSC」は普及が期待されそうです。従来のシリコンパネルの太陽電池と違って、曇天・炎天下でも機能し、その表面に直接光が当たらなくても発電ができるそうです。まだ発電効率では劣るものの製造コストは従来の60%も低く、使用できる場所も多岐に亘るのだとか。
大前研一の新しい資本主義の論点
金融危機時代の経営戦略 |