新刊ラジオ第1209回 「ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階」
シリーズ第三弾となる今回のテーマは「衰退の五段階」。メルク、モトローラ、HP……大企業ですら陥る「衰退の法則」とは?そしてそれを乗り越えるには何が必要なのか?克明な調査と分析から、成功と衰退の明暗、さらに様々な真実が浮かび上がる。ベストセラーシリーズを総括する経営者必読の一冊です。
読む新刊ラジオ 新刊ラジオの内容をテキストでダイジェストにしました
じわじわ衰退していく経営とは?
● 著者について 著者のジェームズ・C・コリンズさんは、ピーター・F・ドラッカー氏から受け継いだノウハウを生かし、経営学者として活躍されている方です。前作「ビジョナリーカンパニー 時代を超える生存の法則」、「ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則」は、ともに世界的なベストセラーになっています。
そして今回紹介するのは、ビジョナリーカンパニーシリーズ第3弾にして、シリーズを総括する内容の「衰退の五段階」という一冊です。
● この本のテーマは!? 「企業が衰退していく段階」、そして「衰退からの脱出のカギ」 盛者必衰、どんな企業にも不調な時や落ち目の時はあるものです。買収や倒産によって消滅することも珍しくありません。しかしその衰退にも、必ず「兆し」があり「段階」を踏んで落ちていくのです。その兆しを敏感に感じて、迅速かつ適正な改善策をとれるかどうか……それはこんなご時世にこそ、経営者や役員、従業員とっても必要なスキルになるはずです。「衰退の五段階」では、企業が衰えていく際に見られる五段階のステップと、迅速に手を打つためのポイントとノウハウを、モトローラとテキサス・インスツルメンツ、HPとIBMの様な「衰退企業と成功企業」の詳細なデータを比較しながら、明暗を分けたエピソードを通して解説していきます。
ではその「五つの段階」とはどんなものなのでしょうか?実は日頃、新聞や経済ニュースなどでもよく見られることが、企業の弱体化のサインなのです。
次のページでは、じわじわと衰退していく経営者の思考パターンを紹介します。
衰退する経営者の思考パターン
衰退の第1段階「成功による傲慢」
ある経営者は言う。 「いやぁ、周りは相変わらず不況だなんだとボヤいてますがね、うちは順調過ぎて困ってるんですよ。まぁ、来るべくして今を迎えてるってとこでしょうな。成功に必要なのはね、運だけじゃあないんですよ。世の中の流れとニーズを見極めるセンスと言うか、嗅覚が必要なんですよ」
順調な経営が続くことで気が大きくなり、会社の元々の目標を忘れ「この成功は当然のこと」と傲慢になり始めた時、企業は衰退を始めます。また、運や偶然という要素すら「自分の実力」と勘違いするようになり、謙虚さや好奇心を失なっていきます。
衰退の第2段階「規律なき拡大」
ある経営者は言う。 「えぇ、来週から、新事業を開拓していこうと思いましてね。まぁ、今まで無縁だったジャンルなんで手探り状態なんですが、きっとうちにしか出来ない企画や商品が打ち出せるはずなんですよ。まぁ主力商品は好調ですし、広げるなら今かなと。私のモットーは大胆に攻める経営ですからね!」
成功によって傲慢になると、調子に乗って知識も経験もない分野への「事業拡大」に手を付けだします。メインの業績自体はまだ好調なので上手い戦略に見えますが、「その会社が一番大事にするべく仕事」からは離れてしまっているので、場合によっては悪影響になるのです。さらに会社の成長速度に人材確保が追いつかず、組織の質が低下し始めるのもこの段階なのです。
衰退の第3段階「リスクと問題の否認」 ある経営者は言う。 「――このところの業績の低迷は、あくまで一時的なものであり、外野からの圧力の様なものと、私は考えておまりす。新事業での苦戦も十分に想定内のことですから、深刻なダメージになるとは考えていません。それどころか、先日発売の新商品は、順当に売り上げを伸ばしてきています。一時の不調より、この状況でも売れる商品をリリースできる当社の強さにこそ注目して欲しいですね」
ここまでくると問題も見えてきているはずですが、傲慢さと事業拡大により引くに引けない状況ができていて、問題をなるべく小さく扱って見て見ぬふりをしようとします。反面、小さな事でも良いデータなら過剰に大きく見せようとします。あげくは、リスクや警告を示すデータを無視した大きな賭けを選ぶこともあります。
衰退の第4段階「一発逆転策の追及」
ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階
衰退する会社が見える、見える。 |