新刊ラジオ第1143回 「まだ科学で解けない13の謎」
宇宙は何でできているのか?意思はどこまで自分のものなのか?・・・21世紀の科学革命、その萌芽は「すでにわかったこと」の中ではなく、「まだわからないこと」の中にある!物理学から生物学、医療まで、13の謎が巻き起こしうる科学革命の未来像を解説する一冊。知的好奇心をとことん刺激する科学書です。
読む新刊ラジオ 新刊ラジオの内容をテキストでダイジェストにしました
最新科学でも解けない!宇宙の神秘
科学で解けない謎というと、何を思い浮かべますか? この本では、このような謎が、紹介されています。
・宇宙は何でできているのか? ・宇宙はどうやって生まれ、どう成長してきたのか? ・生きているとはどういうことか? ・(人工的に)生命を作ることはできるのか? ・地球外に知的生命体は存在するのか? ・人間はなぜ老いて、なぜ死ぬのか? ・意思はどこまで自分のものなのか? ・なぜ性交が生殖方法としてこれほど広まっているのか? ・偽薬(プラシーボ)や同種療法(ホメオパシー)は本当に効くのか? (※プラシーボ・・・ニセの薬が痛みをなくしたり、医療効果を劇的に高めたりする) (※ホメオパシー・・・薬をものすごく薄めても、医薬効果が得られる)
このように、最先端の知見をもってしても解明できない科学の謎はたくさんあります。この本では、そんな現代科学のほぼ全域をまたぐ13の事象を取り上げています。
「まだ科学で解けない」ので、謎に対する答えを教えてくれる本ではありませんが、その謎を解明するため、どんな研究家がどんな実験を行って、どんな理論を提唱したのか、かなり詳しく書かれています
人間を作り出そうとしている科学者たち
生物の世界と無生物の世界とを分けるものは何か? その議論の過程で、「合成生物学」(生命をその化学成分から合成しようという試み)が行われました。
その事例を3つ紹介しましょう。
世界で最初の生物は、“雷雨”が作った?! 1953年、シカゴ大学の化学者、スタンリー・ミラーとハロルド・C・ユーリーが行った実験です。
アンモニア、メタン、水素の混合気体と水を入れたフラスコを密封して、原始地球の大気部分を再現し、その中に電気の火花を飛ばした。これは原始地球の雷雨が無機化合物を刺激して最初の生命を創り出したのではないか、という仮説にもとづく実験でした。この実験により、たんぱく質の基本成分となる有機化合物が合成されたそうです。 しかし、ミラーとユーリーが実験に使った各気体は、現在の科学者が原始地球の大気中に存在していたと考えるものではありませんでした。とはいえ、この試みは生命創造の可能性を示した大きな一歩となりました。
せっけんから生き物が生まれる?! ニューメキシコ州の砂漠の真ん中にあるロスアラモス国立研究所で、スティーン・ラスマセンが行った実験です。
石鹸に感光性の化合物を足したもの(これを“ロスアラモス・バグ”と命名)を試験管の中に入れ、遺伝現象を発生させる試みです。 なぜ石鹸かというと、石鹸の主成分であるトリグリセリド=脂肪は、人工生命を作るうえで使い勝手のいい“容器”となるからだそうです。そこに、DNAと同じく二重螺旋構造で、脂肪になじみやすいPNAを埋め込み、自己複製の機会を待つ。現時点ではようやく“ロスアラモス・バグ”を育てて分解したにすぎないが、すべてがうまく機能したあかつきには“ロスアラモス・バグ”は生き物になる、とラスマセンは確信している、とのことです。
分子生物学者クレイグ・ヴェンターの研究です。 尿路感染症のバクテリアで、地球上で最小のゲノムを持っている「マイコプラズマ・ジェニタリウム」。そのゲノム中の遺伝子を必要最小限の状態になるまで壊し、生存にほんとうに必要な遺伝子を導き出し、人工的に合成しました。ヴェンターの次なる計画は、本来のゲノムを取り除かれたバクテリアの細胞に、その人口ゲノムを移植するというものです。
自分で生命を作り出そう!という3つの実験、興味深いですね。