これからの家づくりは「住んで得する」が当たり前
お金が貯まる家3.0

お金が貯まる家3.0

著者:平松 明展
出版:カナリアコミュニケーションズ
価格:1,650円(税込)

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本書の解説

一生に一度の買い物といわれる「家」。
建てるなら長く住み続けられる良い家にしたいと思うのは当然。生活面もお金の面も含めて、自分の人生に最も寄り添う場所になるのだから、しっかり考えたいところだ。

その家の建築の最前線を教えてくれる一冊が『お金が貯まる家3.0』(平松明展著、カナリアコミュニケーションズ刊)である。

タイトルにある「3.0」という数字。これは、家づくりの進化の度合いを表す数字として使われている。
では、「1.0」「2.0」はどんな家を指すのだろう。

「家づくり1.0」は昭和の大量生産、大量消費の時代につくられた家のこと。省エネの意識もなく、家の断熱性能も低い。高金利時代だったため、住宅ローンを払うことでお金がどんどん減っていく家だった。

「家づくり2.0」は平成時代に登場した家づくりで、エコや省エネの意識の高まりを受けた「オール電化」や「スマートハウス」「パッシブデザイン」などが特徴的。「1.0」よりは質が高いものの、長期的な耐久性までは考えられてなく、震度7クラスの大地震で倒壊するケースもあると著者の平松氏は指摘する。現在の家づくりの主流はこの「2.0」だ。

「家づくり3.0」は住んで良し、さらにお得になる家のこと

では、「2.0」からさらに進化し、令和の家づくりともいえる「3.0」はどんな家のことを指すのか。それは、住みながら「資産形成ができる」「健康になれる」「孫の代まで長く住める」ということが特徴だという。さっそく一つ一つのぞいていこう。

「資産形成ができる」

平松氏が考えているのは本書のタイトルにもなっている「お金の貯まる家」である。それを実現させるのが太陽光発電システムの導入だ。

お金を貯めるには、収入を増やすか、支出を減らすかという2つの方法があるが、太陽光発電システムはそのどちらにも寄与する。発電による売電収入と、光熱費の節約でそれが可能なのだ。設置費用はそれなりにかかるが、平松氏の地元・静岡であれば「8年ほどで投資回収」できると述べる。

また、節約面でもう一点、「3.0」の家は構造や湿気対策がしっかりなされているため、メンテナンス費用を抑えられるという。

「健康になれる」

なぜ、家と健康が結びつくのか疑問を抱いた人もいるだろう。

たとえば家の中の「温度」や「湿度」、「空気」といった要素は体調に大きく関わってくる。そこで平松氏は通気断熱に優れた「WB工法」と呼ばれる工法を採用し、家づくりを行っているという。

そのポイントは3つ。1つ目は壁の中を空気が流れる仕組みのため、通気性が高い。2つ目は形状記憶合金を使い、自動的に気密性をコントロールする。3つ目は内壁が湿気を通すため、においや化学物質も室外へと排出される。

しかし、コストがそれなりにかかるのではないだろうか。それに対し、平松氏はWB工法の方がトータルのメンテナンスコストを考えても圧倒的に安いと述べる。高気密・高断熱住宅の場合、機器設備のメンテナンスやフィルター交換などが必要だが、この工法であれば機械を使わないため、そうしたコストが発生せず、維持管理もラクだという。

「長く住める」

また、WB工法によってつくられた家の中は季節に応じた適温に保たれていて、空気のよどみが起こらないように対応されている状態になっている。この工法なら、においだけでなく、湿気もたまらない。結露しにくく、カビや腐食菌も生まれにくいため、家の構造自体が長持ちするという。

また、地震大国・日本に住み続ける以上は、大地震による倒壊リスクも排除できない。そこで「耐震等級3」の認定取得、建築時の「品質管理」、何度も大地震が起きても倒れないようにするための「構造計算(許容応力度計算)」、そして長く安全に住むための「維持管理」という4つの条件をクリアすることでタフな家をつくることができる。

本書では最新の家づくりについて知ることができるほか、良い建設会社の見抜き方や、これまで平松氏が手掛けた家の事例なども掲載されている。

自分の家を建てる時に何を重視するかは人それぞれだが、人生に寄り添い、お金の面でも助けてくれるというのも重要な要素になるのではないか。長く住み続けていくのだから、妥協はしたくない。これから家を建てようとしている人が持っている想いに答えてくれる一冊である。

(新刊JP編集部)

インタビュー

■ライフプランありきの「家づくり」がお金に困らない人生をつくる

本書を執筆された経緯から教えていただけますか?

平松: 一つは若い方々の家づくりに対して問題意識がありました。というのも、すごく安く済ませてしまっているように感じられて、その後のメンテナンスコストや光熱費のことを考えていないように思うことが多いんです。

私はライフプラン診断士という資格も持っていて、これまで500件くらいのライフプラン作成実績があるのですが、人生の中での住宅のコストって結構かかるんですよ。でも、家づくりの段階で多少費用がかかっても、ちゃんと建てることでその後に発生するコストを抑えられることができるんです。

それは資産形成のうえでも大切なことなのですが、まだ多くの人に伝わっていないので、少しでもそのことを届けたいというところからこの本を書き始めました。

人生の先を見据えた家づくりを提唱したいと。

平松: そうですね。長期的な視野で、家族の人生も考えた家づくりができるのに、していない人が多いように感じます。私は、家づくりは人生づくりだと考えているので。

ライフプラン診断士の資格を持っている平松さんならではの一冊だと思います。本書における家づくりの最大の特徴はなんですか?

平松: 普通、ライフプランを考える際には、コストやリスクを逆算して入れ込んでいきます。家づくりも同じで、「この年齢で家を建てるということは、これから大きな地震に何回か遭遇する可能性があるから、耐震性をはじめとした家の性能もこのくらいにしないといけない」といった具合にコストとリスクを考慮する必要があります。

また、光熱費についても、「たとえば太陽光発電で月々の光熱費をこれくらい下げることができるから、初期費用がこれだけかかっても何年で回収できて、その後はお得に住める…」といった形で組み立てていくことができます。

建てた家がその後どうなっていくかというデータを元にしながら、その人のライフプランに合い、なおかつお得に住むことができる家を提案することができる。それが本書で書いた家づくりの特徴ですね。

データに基づきつつ、「こういう家を建てればコスト面でもお得に住むことができる」ということを提案されているわけですね。では、タイトルの『お金が貯まる家3.0』の中の、「3.0」の意味するところを教えてください。

平松: この数字は進化の度合いを示すものとして使っています。

具体的に説明をすると、「1.0」は昭和の家づくりです。戦後の高度経済成長期、家が足りなくなり、大量建設が正義だった時代がありました。その時に建てられた家のことで、大量生産、大量消費がキーワードです。

「2.0」は平成です。経済が停滞する中で、技術革新が進み、家づくりにも大きな変化がでてきました。パッシブデザインという自然エネルギーを有効利用する技術ですとか、快適性や省エネがフォーカスされています。スマートハウスも「2.0」の中に入りますね。つまり今の家づくりの主流といえるでしょう。

そして「3.0」は令和の家づくりになります。

「3.0」はどういったことが特徴になるのでしょうか。

平松: 『ライフシフト』で人生100年時代が提示され、老後は2000万円必要という話もありますし、75歳まで働く時代とも言われていますよね。

私たちはライフプランに沿って家づくりを提案しますが、若い段階からしっかりライフプランを練って、そこから逆算してコストを最小化していくと、人生にかかるお金はかなり変わってきます。「2.0」はただ高性能な家でしたが、「3.0」ではそこに、人生という要素を入れる。それが「家づくり3.0」の大きな特徴といえます。

長生きするほど、リスクが多くなるのが人生です。経済リスクもありますし、地震などの災害リスクもあります。その中で、そういったリスクに対応できるような立地条件、間取り、性能といったものを取り入れていくことが、これからの家づくりには求められると思います。

では、「お金が貯まる家」とは、具体的にどのような部分でお金が貯まるのでしょうか。

平松: 基本的に若い方々は賃貸か持ち家かで悩まれると思いますが、賃貸料はずっと発生していくものですよね。一方、持ち家で住宅ローンを組むと、賃貸の額よりも少し割高になるかもしれませんが、ローンを返し終わればお金を払う必要はなくなります。

そして、「お金が貯まる家」を建てることで、太陽光発電の収益や光熱費の節約、メンテナンス費の節約も見込むことができます。家にかかる費用を計算していくと、賃貸よりも月々の費用が安く済むこともあります。

つまり、本来かかる費用が、「お金が貯まる家」によってかからなくなる。その差分でお金を貯めることができるわけです。

まさに「住んでお得」な家ですね。

平松: そうです。だから、場合によっては資産の観点から新築をおすすめしないこともあります。それはどういう人かというと、主に年齢が高い方です。60歳で家を建てても回収の期間が短いですから。ライフプランを作ったときに、アパートの方がお得ということもありえます。

家は一生に一度と買い物と言いますが、家自体の寿命は何年くらいになるのですか?

平松: 平均築年数でいうと、32.1年ですね。

先ほど長期的な視点で住める家を、という話がありましたが、地震の多さや高温多湿という日本の環境の中で、長く住み続ける家を作るのは可能なんですか?

平松: その答えが本書で書いたWB工法だと思っています。WBとは「W Breath」、二重通気という意味で、そのポイントは3つあります。

1つめは、壁の中を空気が流れるように仕組みになっていて、通気性が高いということ。
2つめは、形状記憶合金という一定の気温に温度になると変形する装置を使って、夏は壁の中の空気を流し、冬は外の空気を遮断することで、自動的に気密性をコントロールします。
そして最後の3つめは、内壁が湿気を通し、においや化学物質も室内から室外へと排出されます。

このように呼吸する家にすることによって、常に室内の空気がきれいな状態で保たれ、湿気もたまらないので結露しにくく、家も長持ちするわけです。

なるほど。

平松: WB工法では、今言ったように、夏は壁の中の空気を流して室内の空気を快適に保ち、冬は外の空気を遮断して気密性と断熱性を上げることで、室内の熱を逃がしにくくします。そのため、夏も冬も快適な環境を家の中につくることができるんです。

WB工法参考動画
【平松建築】WB HOUSE コンセプトムービー
夏涼しく冬暖かい無結露住宅の作り方

■「家づくり」は人生勉強。建てる目的をしっかり考えよう

これから家を建てようと思っている方は、どういうところに注意を払うべきだと思いますか?

平松: まずは、自分は何のために家を建てるのかという目的を設定することですね。家を建てるときって、どのハウスメーカーで建てようかとか、どういう工法にしようかということだけを考えてしまいがちなんですけど、それって本当は家を建てるための手段なんです。

私は目的さえ叶えることができれば、家づくりの手段は何でもいいと思います。ライフプランを立てて、こういう人生を送りながら自分も家族も豊かになっていく。それが次世代へとつながっていく。そうやって目的を設定した上で、そこから逆算して手段を選んでいくという話だと思うので。

だから、まずは「なぜ家を建てるのか」という問いをしっかり考えたうえで会社や工法を選んでいくことが、後悔しない家づくりにつながっていくのではないかと思いますね。

こうした家づくりにおいて、ライフプランをしっかり考えて要望をきちんと伝えてくるお客様はいるのでしょうか。それとも、設計事務所やハウスメーカーに最初からお任せというお客様が多いのでしょうか?

平松: 弊社の場合は、しっかり考えてくるお客様が多いです。普段からそういう情報発信をしていますから。ただ、一般的には、そこまでライフプランを考えずに家を建てようとしている人の方が多いと思いますね。月の返済額を見て、このくらいだったら買おうかなとか。

購入したらその家にずっと住むわけですから、時間と手間をかけて勉強したり、十分に検討したりということは本当に必要です。家づくりほど、人生勉強になるものはないと思います。

これまで100軒以上の家を手掛けられてきた中で、家づくりに成功している人の共通点ってありますか?

平松: 繰り返しになりますが、目的設定をちゃんとしている方は成功しています。

では、逆に失敗してしまう人の共通点はありますか?

平松: 家って見栄を張る方が意外といたりするんです。収入が多いからといって、身の丈に合わない土地を買ってしまったり、余計な機能をつけたりして。そうすると失敗してしまいます。

一方、家づくりに成功している人は、本当に大事なものが何かを分かっている人が多いです。だから、すごくシンプルに考えますよね。長く家族で幸せに暮らしたいという目的があって、それがブレないわけですから。これは特に若いご家庭の方が多いです。

本の中にも書かれていましたが、リモートワークの普及で家に求めるものも変わってくるのではないかと思いますが、平松さんはその変化についてはどう捉えていますか?

平松: リモートワークでいうと、ワークスペースの必要性があがっていますが、私は以前から書斎的なスペースがあるといいと提案していました。それは旦那さんや奥様が一人でしっかり熟考するスペースが家の中にないと、年収が低くなるという傾向があるように感じるからです。

それは、仕事場では常に仕事、家では常に家族サービス、となると自分の今の状況を整理する時間がなくなってしまい、目的がブレてしまうからだと思います。稼ぐのであれば、旦那さんや奥様がしっかり前を見据えて心地よく仕事することが大事ですから、やはり一人でじっくり思索に耽ることができる書斎は必要じゃないかと思いますね。

平松さんがこれから家づくりで大事にしていきたいことはなんですか?

平松: これからは家余りの時代になっていきます。だから、ローコストで建てられた粗悪な家は淘汰されていき、長持ちして、家族だけでなく地域も豊かになるような家が重宝されるようになっていくと思うんですね。また、同時にリフォームやリノベーションで性能を補助して、もともとあるものを有効利用していくということも必要になっていくでしょう。

そのとき、ぜひ投資の視点を持って家づくりやリフォームを考えてほしいんです。リフォームなら仮にこの家の性能が向上して、メンテナンス費用と光熱費がいくら下がるかとか、賃貸に出すとしたらいくらになるかとか、そういう視点でリフォームしてみる。

投資の視点を持って家を建てたり、リフォームをしたりすると、必然的に長く住み続けられる家になるはずです。それが令和の家づくりのスタンダードになっていくと思っています。

本書をどのような人に読んでほしいですか。

平松: やはり子育て世代の夫婦。あとは、決定権のある人です。それが仮に夫婦の親であるとしたら、親に読んでほしいです。土地の相続とか、親が決定権を持つときも多いので。

特に親世代は金利が高い時代に家を買っているので、とにかくお金を借りずに家を安く建てなさいという発想の方が多いんです。ただ、今って金利も低いですし、建て方も全然違っているので、ローン返済も昔よりは楽です。そういうことも分かる内容になっているので、今の家づくりをしっかり理解してもらったうえで、家づくりに対してアドバイスをしてほしいなと思いますね。

(了)

書籍情報

目次

  1. 9割の人は「お金が貯まらない家」に住んでいる
  2. 『お金が貯まる家3・0』とは?
  3. 健康も手に入る『住む得ハウス』
  4. 8割の日本人は「ヤバい木造住宅」に住んでいる
  5. よい建築会社を見抜く11の質問
  6. 幸せを生むワンストップの家づくり
  7. 幸せは住む家で決まる
  8. いい家づくりが地域を、日本を豊かにしていく

プロフィール

平松 明展(ひらまつ・あきのぶ)
平松 明展(ひらまつ・あきのぶ)

平松 明展(ひらまつ・あきのぶ)

平松建築(株)代表取締役社長。「お金が貯まる家づくり」をテーマに、手がけた住宅は100軒以上。1980年、静岡県磐田市生まれ。高校卒業後、浜松技術開発専門校(現:浜松テクノカレッジ)建築科で家づくりを学ぶ。卒業後は、工務店に就職し、大工の修行を積み、29歳で独立。大工時代に100棟以上の住宅を解体修繕した経験から、「家づくりは人生づくり」を実感。全ての住宅コストを最小化するシステムを構築し、施主のライフプランに沿った家づくりを提案している。

お金が貯まる家3.0

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著者:平松 明展
出版:カナリアコミュニケーションズ
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