『天使と悪魔のイタリア 』半沢・メロジータカコ著【「本が好き!」レビュー】
提供: 本が好き!イタリアの情報は日本でも氾濫していますが、やはり長年生活しないと分からないことも多い。
本著はイタリア暮しも二十年くらいになる日本人のエッセイです。
長年暮らしていても不思議に思うことはあるようで、イタリア人の友人たちや隣人とのやり取りの中でイタリアらしいと感じたことを書き留めてある。
そんな生活に密着したイタリア情報が詰まっていました。
基本的に陽気でよくしゃべるイメージのあるイタリア人ですが、日本人の著者は質問責めにあうという。
「いくつ?」「結婚してるの?」「子供は?」「どうしてここに住んでるの?」などなど。
無遠慮きわまりない質問でも明るく無邪気に聞かれると苦笑しながらも答えてしまうと著者は言うが、それを許せるからこそイタリアに住めるのかもしれないと思った。
著者はベルガモ県の小さな街に住んでいるようで、飼っているジャーマンシェパードのケンにまつわる話も面白い。
スープの出汁をとったあとの骨を近所の人が犬にプレゼントしてくれるそうですが、ここもイタリア的に庭にポンと投げ込んでくれるという。
日本の謙譲の文化って何なんだろうと思った。
イタリアと言えばやはり料理。
食にまつわる話は尽きることがない。
食欲優先の健康志向やバールでの習慣など、観光でレストラン巡りをするだけでは知らないことばかり。
日本から輸入されて根付いたらしい柿の話が出てきます。
日本では最近は四角い方がメジャーになりつつあるが、まだ固い柿をポリポリと食べるのが好きな人が多いだろう。
わたしは柔らかい方が好みなので、ちょっと置いておいて洋梨くらいの食感の頃に食べる。
だけどイタリアでは完熟した状態の柿をスプーンですくって食べるそうだ。
日本だったら間違いなく「腐ってる」と返品されるだろう。
食の好みの問題なのか習慣なのかはわからないけど海を渡れば柿の食べ方も変わるといういい例でした。
イタリア人の不思議な習慣もいろいろと紹介されている。
南国気質で大雑把なのかと思いきや、アイロン&お掃除が大好きだそうです。
古代ローマの名残だろうか。
マンマが大事で喜怒哀楽が激しいラテン気質が全開だ。
賑やかだけど寂しがり屋なイタリア気質をコミカルに描いています。
文化の違いは深いなと感じたけど、実感してみたいとも思わせるほど楽しいエッセイだった。
(レビュー:DB)
・書評提供:書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」