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ジャガイモ食中毒の9割は学校菜園で起こる その意外な理由とは?

ジャガイモ(ソラニン、カコニン)、スイセン(リコリン、タゼチン)など、植物の中には有毒な物質を含むものがある。これらは、植物が動物に食べ尽くされないために、いろいろな仕組みや工夫を凝らしているからだと言われる。有毒な物質を身につけることはその一つだ。

■ジャガイモ由来の食中毒の9割は学校菜園で起こる怪

『植物はなぜ毒があるのか 草・木・花のしたたかな生存戦略』 (田中修、丹治邦和著、幻冬舎刊)では、過去10年の食中毒被害データを中心に、生き残るために植物がつくり出す様々な毒と特徴を紹介する。

身近な植物も毒をもっている。中でもジャガイモは植物の毒による患者数ナンバーワン。ジャガイモの芽には、有毒な物質であるソラニンやカコニンが含まれていることはよく知られているかもしれない。なので、市販されているジャガイモで食中毒騒ぎが起こることはほとんどない。

気をつけなければいけないのは、小学校など学校の畑で収穫されたジャガイモだ。2016年の国立医薬品食品衛生研究所の調査で、ジャガイモに起因する食中毒事件の9割は学校菜園で起こっていると発表されている。

なぜ、なぜこんなことが起きるのか。実は、ジャガイモの有毒な成分は芽の部分だけでなく、表皮が緑色になった部分や未熟な小さなジャガイモにも含まれている。学校菜園では、これらのものが収穫されることが珍しくない。

本書によると、学校菜園での栽培方法では、大事な2つの作業が見落とされがちなため、表皮が緑色になったジャガイモや未熟な小さなジャガイモができてしまうという。

1つ目は、「芽かき」という作業。
1つの種イモからたくさんの芽が出るため、地上に出てきた芽生えの数を減らし、大きく育つようにする。イモの部分が大きく肥大すれば、イモ1個あたりの有毒な物質の割合も少なくなる。

2つ目は、「土寄せ」。これは、畑の畝に土を寄せ、ジャガイモの株の根元に土をかぶせて、食用部となるイモに太陽が当たらないようにすること。ジャガイモの食用部分は、根ではなく、肥大した茎なので、光が当たって緑色になるのを防ぐために、土寄せをするのだ。

面白いのは、植物の毒に含まれる成分が、人間の病気を治すために薬としても使われていること。イヌサフランがもつ「コルヒチン」という有毒物質は、痛風の特効薬となっている。「薬は毒にもなる」というが「毒は薬にもなる」のである。余談だが、「タネなしスイカ」をつくるためにも「コルヒチン」は使われている。

表紙

植物がつくり出す物質は、ときには毒となり、薬となり、私たちの生活にも役立っている。本書から知られざる有毒植物の世界を楽しんでみてはどうだろう。雑学の宝庫なので、楽しめること請け合いだ。

(T・N/新刊J P編集部)

植物はなぜ毒があるのか 草・木・花のしたたかな生存戦略

植物はなぜ毒があるのか 草・木・花のしたたかな生存戦略

トリカブトのようなよく知られたものだけではなく、じつは多くの植物が毒をもつ。例えばジャガイモは芽のみならず、未熟な状態や緑化した状態で毒をもち、毎年食中毒被害がおきる。それらは、芽や、成長に必要な部分を食べられないための植物のしたたかな生存戦略だった。過去10年の食中毒被害データを中心に、生き残るために植物がつくり出す様々な毒と特徴を紹介。また、古より植物の毒を薬に転じてきた人間の知恵と最新の医学情報まで、有毒植物と人間の関わりを楽しく解説。

この記事のライター

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T・N

ライター。寡黙だが味わい深い文章を書く。SNSはやっていない。

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