なぜGoogleには社内政治が存在しないのか?──『1兆ドルコーチ』オーディオブック版のススメ
提供: audiobook.jpはじめまして、「audiobook.jp」運営チームのIzakiと申します。
「audiobook」(オーディオブック)。あまり聴きなれない言葉かもしれませんね。これは、文章を読み上げ、音声でお届けする本のこと。
そして、話題沸騰中のビジネス書『1兆ドルコーチ』(ダイヤモンド社)。そのオーディオブック版の配信が「audiobook.jp」で始まりました。
この本、聴いてみたのですが、かなりの衝撃を受ける内容でした。ぜひその衝撃を皆さんにお伝えしたい!ということで、この場をお借りしたというわけです。
https://audiobook.jp/product/247337
『1兆ドルコーチ』の内容を一文で説明するならば、
「かつてシリコンバレーでスティーブ・ジョブズやラリー・ペイジらを指導した伝説的コーチ=ビル・キャンベルの教えやエピソードを元Google会長のエリック・シュミットらがまとめた一冊」
という感じでしょうか。
自身の経験や接点のあった人々へのインタビューをもとに編纂したものですから、ビジネス書には珍しくエッセイのような雰囲気があり、声で聴くオーディオブックとの相性は抜群です。
普段は活字派という方々が、オーディオブックにもトライする上での最初の一冊としても、胸を張ってオススメできます。
では、その魅力は一体どこにあるのか。
私が「このオーディオブックを是非皆さまにお聴きいただきたい!」と考えるに至ったポイントが、以下の3点です。
1.日本人の琴線に響き、その虚構を打ち砕くビルの教え
2.シリコンバレーの常識を打ち破るビルのキャラクター
3.和村康市氏のナレーションの妙に酔いしれる
では、一つずつご説明していきましょう。
1.日本人の琴線に響き、その虚構を打ち砕くビルの教え
まず、皆さまに一番聴いてほしい章が、Chapter4です。
Chapter4のテーマは「チーム・ファースト」。
ここでは、「問題の解決そのものより、問題の解決にあたるチームが大切だ」ということをビルが常に強調していたことが述べられています。
曰く、主語は「私」ではなく「私たち」に。
曰く、優秀なチームの集合知は個々のメンバーのIQの総和を上回る。
曰く、緊張・対立に気を配り、自分にとっての正しさより全員が受け入れているかを重視しろ。
いかがでしょう。
個人主義のアメリカ人らしくない、むしろ我々日本人の方が実践しやすそうな、共感できるメッセージがいくつも現れます。
しかし、気を付けなければなりません。
上記は決して「政治」であってはならないのです。
たとえばビルは、「ずけずけと意見を言える」人間こそ必要だと主張したといいます。
なぜなら、それは信頼があってはじめて成せることであり、一方的、もしくはあいまいな意見交換による合意形成は、信頼醸成というプロセスの放棄に他ならないからです。
また、気まずさゆえに見て見ぬふりをされがちな、「人間関係」に端を発する感情的対立についても、ビルは果敢に切り込みました。
あなたの身の回りにも存在するのではないでしょうか。
表立って対立はしていないものの、うっすらと気まずさが漂う二人。
現時点ではまだ大きな緊張に至ってはいなかったとしても、そうした「種」を放置していると、いずれは取り返しのつかない対立へと膨らみ、大きなリスクとして表面化しかねません。
実はGoogleにおいても同様の問題が存在していたそうです。データやプロセスによって最適解を導くことができないがゆえに厄介なテーマであったのですが、ビルはそれをうやむやにさせませんでした。
チーム内に亀裂をもたらす人間関係の機微を早い段階で察知し、積極的に議論の俎上に載せ、メンバーがそこから目を逸らすことを決して許さなかったのです。
ビルは「政治がらみの物事はとても毒性が強い」ことを知っていました。だからこそ、上記のような姿勢で問題にあたり、「Googleは素晴らしいことに、政治的駆け引きとは無縁な大企業になることができた」と述べたのです。
彼が作り上げた、「政治につながる「種」を早い段階で議題として挙げ、全員でその芽を摘み取るべく話し合う」というGoogleの組織風土。
「忖度」という言葉が市民権を得て久しい我が国において、ビルの毅然とした態度や考え方は一つの参考になるのではないかと思います。
2.シリコンバレーの常識を打ち破るビルのキャラクター
次はもう少しビル自身のキャラクターに焦点を当ててみましょう。
私が社内の先輩にこの作品をお勧め頂いたとき、その脳裏をよぎったのが、「これまた随分お堅そうなビジネス書なのでは・・・」という先入観でした。
しかし、それは聴き始めてすぐに間違いだということに気付きました。
なぜなら、この作品のテーマである「ビル・キャンベル」という人物自体が、「お堅さ」の対極にある存在だからです。
たとえば、ビル・キャンベル、口が悪い。大変悪い。
「くそったれ」
「ぼんくらめが」
「なんだその足みたいな手」
「私が偉くみえるほどアホな奴」
などなど、スマートな人物の集まるイメージのあるシリコンバレーにおいて、一切その空気に染まることなく、かつてのアメフトコーチ時代から顕著だった「ビル節」を遠慮なく吐き散らした人物なのです。
そして面白いことに、そうした「ののしり」を皆が楽しみにしていた、といいます。
シリコンバレーの人間は皆ドМなのでしょうか・・・?
否。
その理由は、「そこに愛があったから」だとエリック・シュミットらは述べます。
「君に気をかけている、大切にしている、ビジネス的な部分だけでなく人間として丸ごと受け入れている」
ということをビルはその悪態によって示し、皆もそれを理解していたからこそ、彼の口から出るビル節を楽しみにしていたのです。
それは必ずしも言葉という形だけでなく、ハグや雑談や都度の賞賛、さらには病気のような仲間の個人的危機への献身といった形で惜しみなく発揮され、それは彼や接する周囲の人々だけでなく、組織全体の文化・パワーにも繋がったことがわかります。
※「慈愛」に満ちた企業は従業員満足度とチームワークが高く、欠勤率が低く、チームの成績が高いことが学術的に証明されているという補足も本文中に紹介されています。
「データ主導型の意思決定プロセス」が重視される昨今のビジネス業界。
その最先端であるシリコンバレーにおいて、ビルが「パワー・オブ・ラブ」というスタンスで人々を鼓舞してきたという事実、そしてそのスタンスの下にGoogleやApple、Amazonといった世界的テック企業が育ったという事実は、日本人にとって示唆の大きいものだといえるのではないでしょうか。
3.和村康市氏のナレーションの妙に酔いしれる
本オーディオブックのナレーターは和村康市氏が務めています。
その語りは間違いなくこの作品の魅力の一つです。
注目すべきはその声色。
温かみのある低音の中に、少しだけハスキーさのかかった声色。
ご本人にお話を伺ってはいないため真偽のほどは不明なのですが、もしかしてこれはビル・キャンベル本人に若干寄せているのではないか、と私には思えるのでした。
ご参考までに、以下は生前、ビル・キャンベルが亡きスティーブ・ジョブズに向けて行った追悼スピーチの映像です。
ティム・クックApple現CEOの紹介のあとに現れるしゃがれ声の人物が彼です。
なんとなく近しい雰囲気があるのではと思うのですが、いかがでしょう…?
(※感じ方には個人差があります)
是非オーディオブックと聴き比べてみて頂ければと思います。
ちなみに、この映像は本書の「訳者あとがき」にて、翻訳された櫻井祐子氏が話題にあげています。既にオーディオブックを聴かれた方も是非ご覧ください。
ビジネス書としての学びの多さ。
読み物としての純粋な面白さ。
オーディオブックとしての間違いない魅力。
そのどれについても、私が自信をもって、太鼓判を押させていただきます。
https://audiobook.jp/product/247337
(「audiobook.jp」運営チーム・izaki)