丸山ゴンザレスが見たルーマニアのマンホールタウンの真実
貧困、難民、麻薬戦争、スラム街……世界の暗部や闇と呼ばれる危険地帯に実際に赴き、取材をする丸山ゴンザレス氏。
2019年に放送終了した『クレイジージャーニー』(TBS)で、普通の旅行者であればまず近寄らない危険な場所、あやしい場所を嬉々としてレポートする姿を見たことがある人は多いだろう。
そんな彼が、『クレイジージャーニー』では伝えきれなかったことをつづり、スラム街の貧困問題や麻薬取引など、世界が直面している問題をジャーナリストとして取材し、丸山氏の目線で考察するのが、『世界の混沌を歩く ダークツーリスト』 (丸山ゴンザレス著、講談社刊)だ。
世界には、日本では想像もつかないような危険な場所がある。たとえば、ルーマニアのマンホールタウン。マンホールの穴の中に生活空間を作り、人が住んでいるのだ。
マンホールから梯子を降りると、天井には蛍光灯が設置され、壁には絵画が飾られていた。丸山氏曰く「最先端のクラブ」ような趣の空間に約100人くらいの人が住んでいるのだという。ついでにいえば、ここに住む多くの人がドラッグをやっている。足元に注射器が落ちているのも珍しくない光景の場所だ。
このマンホールタウンのボスである「ブルース・リー」と呼ばれる男に、丸山氏は取材をした。
そもそも、なぜ、人が地下空間に住むことになったのか。これにはルーマニアという国の事情が関係している。ルーマニアはかつて共産主義国だったが、1989年にルーマニア革命が起きて独裁政権は崩壊。民主化の道をたどることになった。
ただ、独裁政権はルーマニア社会に危険な種を残していた。1967年に施行された人口造増加政策によって妊娠中絶を違法化した結果、生み出された多くの子供たちが、生活苦から捨てられたり、施設から脱走するといった社会問題が起きてしまう。
東欧の冬は厳しく、生き残るために子供たちは、地上より暖かい地下のマンホールの中に居場所を求めた。このような経緯で、革命から30年が経った今も、マンホールで暮らす人々は存在するのだ。
マンホールタウンのルーマニアをはじめ、マリファナ先進国といわれるジャマイカや銃密造の村があるフィリピン、世界最大のスラム街があるケニアなど、危険すぎて一般の旅行ではなかなか行けない場所に赴き、そこに住む人たちに取材し、肌でその場を感じてきた丸山氏。本書はなかなか知ることができない「世界の現実」を垣間見ることができる。
『クレイジージャーニー』ファンはもちろん、世界のアンダーグラウンドに興味がある人も楽しめる1冊だ。
(T・N/新刊JP編集部)