だれかに話したくなる本の話

退屈を楽しむ。漫画家・東海林さだおによる奇想天外なヒマつぶし方法とは?

急に予定がキャンセルになってヒマな時間ができたとき、何をしたらいいかわからない。
定年退職後、趣味もなくどう過ごしていいかわからない。
「ヒマ」というのは「時間がありあまっている」ということだが、かならずしも歓迎できないケースが多々ある。

特に日々忙しく過ごしている人ほど、急に時間に余裕ができたとき、何をしていいかわからなくなったりするものだ。

■東海林さだおはルンバでひまつぶし

『ヒマつぶしの作法』(東海林さだお著、SBクリエイティブ刊)は、『タンマくん』『サラリーマン専科』などで知られる漫画家・エッセイストの東林海さだお氏が、ヒマの楽しみ方を指南してくれる。

本書では、作家活動60周年を記念し、東林海氏のこれまでの作品からヒマつぶしの作法を選りすぐり収録。いとうせいこう氏との「オトナのヒマつぶし」対談も掲載。

ロボット掃除機ルンバでヒマつぶし、市ヶ谷の釣り堀でヒマつぶし、コインランドリーでヒマつぶしなど、様々な方法・場所でヒマを楽しんでいる東海林氏。
いや、しかし、ルンバでどうヒマをつぶすのか。

漫画家なので会社勤めの経験がない東海林氏は、部下を従えた「上司の気持ち」がどういうものか気になっていた。そこで、ルンバを部下にして上司の気持ちを知ろうとしたという。

部下としての彼(ルンバ)を迎え入れ、同じ部屋で働くことになった東海林氏は、上役として「舐められてはいけない」と、仕事をするふりをしながら彼を観察。行動パターンを見守ると、同じ地点を4回通過したり、気になるゴミをなかなか拾わない。上役としてどう接すればいいのか、東海林氏は悶々とし、「上役って大変なんだな」とため息をついたりする。

端から見れば、家で仕事をするふりをしてずっとルンバを眺めているだけの人なのだが、部下であるルンバとの日常を東海林氏は楽しんでいる。ルンバでも他の何かでも、興味を持てば何でも面白がることができるという。

退屈な時間やムダな時間を過ごすのは、怠惰なことと思うかもしれないが、そんなことはない。ヒマをつぶして楽しむことで、毎日がもっと楽しくなるのだ。

 ◇

普段見過ごしているたわいのないことでも、思考を巡らし、真剣にやることで、今まで見えていなかった面白さを発見できることを本書は教えてくれる。
自分なりの楽しめるヒマつぶしの方法を探して、ヒマな時間を楽しんでみてはどうだろう。

(T・N/新刊JP編集部)

ヒマつぶしの作法

ヒマつぶしの作法

オトナのヒマつぶしはやっぱり楽しい!

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T・N

ライター。寡黙だが味わい深い文章を書く。SNSはやっていない。

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