だれかに話したくなる本の話

『翻訳者による海外文学ブックガイド BOOKMARK』金原瑞人、三辺律子編【「本が好き!」レビュー】

提供: 本が好き!

この本のもとになったのは、『BOOK MARK』という小さな季刊の冊子(フリーペーパー)。
わたしは、書店のレジの横とか平台の児童書やYA本の間に置かれているのを、いそいそといただいてくる。
各号には、それぞれ、テーマがある。たとえば、ファンタジー、SF、映画の原作、ホラー、明日の物語、過去の物語、それからそれから……

この冊子を編集発行しているのは、翻訳家の金原瑞人さんと三辺律子さん、イラストレーターのオザワミカさんの三人だ。
五年前のよもやま話の「海外文学を紹介する瓦版みたいなものを作る?」という言葉から生まれたそうだ。

これまでだって本のガイドブックや読書案内はたくさんあった。でも、この冊子は、なぜこんなにも特別で、楽しみなのか。

まず、発行人が楽しんでいると感じるからだ。
「知られていない本を選ぶというのがおもしろくて。もったいないと思っている本を紹介できるのが、すごく嬉しい」と三辺律子さん。

それから、一冊一冊の本の紹介文だが、これ、それぞれの本を翻訳した翻訳者ご本人が書いているのだ。(こんなガイドブック、今までにあっただろうか?)
「紹介文が本当に生き生きしているんですよ」と金原瑞人さん。
「やっぱり、訳者って、何カ月もかけて一行一行読んで訳しているから、当然思い入れのある方が多いじゃないですか」と三辺律子さん。
そういう紹介文なら、読者には、一番強力な水先案内ではないだろうか。

紹介されている本の幅も魅力だ。
『ハウルの動く城』や『第八森の子どもたち』などおなじみの子どもの本があるかと思えば、『ウィトゲンシュタイン家の人々』や『紙の民』などもある。対象年齢などの垣根をとっぱらって、おもしろいものはおもしろい。なんて伸びやかで自由なんだろう。

選書にも、そして、それを紹介する紙面(?)にも、茶目っ気を感じる。
たとえば、
さっき、本の紹介文は翻訳者、と書いたが、そうではない号が一冊ある。それは装丁特集。印象的な、美しい、凝った(あるいはさりげない)装丁の本を紹介する号では、その本を手掛けた装丁家が紹介文を書いている。気がつかずに手にしていた本の思いがけない横顔に触れる思いである。
それから、新訳特集の号では、
別訳の『ジャングルブック』が二冊、見開きの左右のページに並んで載っているのだ。さて、双方の翻訳者の紹介文は……

ここまで、冊子のことを書いてきたが、五年分、1号から12号までがまとまって、今、そっくりそのまま、一冊の単行本になった。
1冊のなかに12冊分の『BOOK MARK』!
大きく厚くなった宝の地図に、ほくほくしている。

ところで、わたしが一番気に入っているのは第七章「眠れない夜に、ようこそ」と題されたホラー特集。
私は、ホラーは大体苦手だけれど、それでも、ちょっと憧れはあるのだ。
もし、「そんなに」恐くなくて、恐さ以外の「何か」が、余韻のようにいつまでも心に残るような、そんな美しいホラーがあるなら、出会ってみたい。
……これがなんとあるらしいのだ。この本のなかに。いろいろ!(嬉々)

(レビュー:ぱせり

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翻訳者による海外文学ブックガイド BOOKMARK

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読めば一生忘れられない。心にぐっとくる204冊。

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