亡くなられた……とのニュースを聞いて、どうしても再読したくなって買ってきた。
この「不条理日記・完全版」はバラバラだったものを復刊ドットコム社が全て纏め、
更にPEKEに載っていた「どーでもいんなーすぺーす」などや所々の雑誌に載せていた物を集めたもので、 まさにSF者吾妻ひでおの集大成ともいえる本だ。

各ページをめくる度に、懐かしさと共に如何に著者がセンス・オブ・ワンダーの持ち主だったのかを認識させられる。

「回転編」で世界が滅亡する日に……わーい　おでかけおでかけ……とはしゃいだり、……西武、東武、西武、東武……と混乱する奥さんの可愛らしさ（いや　これってSFとは関係ないが）や「どーでもいんなーすぺーす」のパロディー感覚満載の内容に、改めて接する事が出来るのは素晴らしい。

今の４コマギャグ漫画やストーリー漫画に慣れた読者からすれば、「なんだよ、これは……」となってしまうかもしれないが、この感覚が堪らないのだ。

著者は追悼記事の中でも「失踪日記」などで有名、と近年の著書ばかり注目されている気がする。
しかし、本来吾妻は「ななこSOS」や「やけくそ天使」などのギャグ漫画家であり、
本書のようなSF漫画がメインなのであって、現在ななこやヤケ天等の初期ギャグ漫画は手に入りくいが、本書は高価ではあるが、吾妻ひでおという希代のSF漫画家を知る上で非常に纏まった一冊で是非一読して欲しい本なのだ。

巻末には「不条理日記2019」が収録されており、あとがきで著者は「たった2頁を描くのに3週間もかかった」といっているが。これが遺作となってしまったのか？

吾妻先生　天国で星大人や小松先生　横ジュンも待ってます。
皆で一杯やるのは良いけれど、飲み過ぎちゃ駄目ですよ。

先生のご冥福を心からお祈りいたします。

著者のSF関連の作品を、これだけ纏めた貴重な一冊として☆は５個進呈したい。

（レビュー：oldman）

・書評提供：書評でつながる読書コミュニティ「本が好き！」