彼女に「私AVに出るかも」と相談された時 男が言ってはいけない言葉とは?
どんなに年齢と経験を重ねても、他人の相談に乗るのは難しい。
20代の頃は「30歳をすぎたころには、積み上げた経験から、相談に対して気の利いたアドバイスができるようになるのではないか」と考えていたが、30代半ばとなった今は「40歳をすぎれば……」と思っている。つまり、この点に対して私はいかなる進歩もしていないわけだ。
■「何があっても君の意思を尊重するよ」にひそむいかがわしさ
特に恋人からの相談は本当に難しい。
世の中には「恋人にしかできない相談」というやつがあるもので、それは**「職場の上司の加齢臭がきつい」とか「小鼻の毛穴が目立つ」とか「尻が垂れてきたようなのだがどう思うか?」**のような、鼻でもほじりながら聞き流しておけばいいものばかりではない。
極めて親しい関係だからこそ「親との関係に悩んでいる」といった半笑いで応じるわけにはいかぬものもあれば、「元カレに付きまとわれている」というこちらにも降りかかる厄介な火の粉が予想されるものもあれば、「好きな人ができた」という「それ、俺に相談するか?」というものもあるのである。
「女性の相談事は、アドバイスが欲しいのではなくて話を聞いてほしいのだ」という意見を聞いたことがあるが、全部が全部「うんうんわかるよ」とうなずいていればいいはずもなく、アドバイスや意見を求められるものも当然ある。
そんな時のために**「何があっても君の意思を尊重するよ」**という便利なセリフがあるにはあるが、聞きようによっては一歩引いた冷たい返答であり「俺を巻き込んでくれるな」というへっぴり腰が透けて見えないでもない。「こう言っておけば理解と包容力のある男に見えるだろう」という計算もうかがえる。あるいは、単に悩みへの関わり方とその手続きを考えるのを放棄しているだけかもしれない。いずれにせよ「何があっても、君の意思を尊重するよ」には、素直に受け取るべからざるちょっとしたいかがわしさ、胡散臭さがあるように思える。
■彼女に「私AV出ようかな」と言われたら
「じゃあ、何を言えばいいんだ?」という話だが、正解はない。ただ、女性の目からすると「不正解」はあるようだ。
『女がそんなことで喜ぶと思うなよ ~愚男愚女愛憎世間今昔絵巻』(集英社刊)の中に、著者の鈴木涼美さんが知人のAV女優と「AVやヌードモデルなど“脱ぐ系”のバイトをする際は彼氏に報告すべきか否か」について話した時のことがつづられている。
これだけインターネットやSNSが発達した現代、彼氏に隠そうとしても無理だろう、というところで意見の一致を見た二人は「では、報告した時に彼氏からどんな反応があったらうれしいか」というテーマにうつった。まさしく男性からしたら「適当に聞き流せない類の相談」である。
さて、鈴木さんと話し相手のAV女優だが、それぞれに「言われたい言葉」が違っていた一方で、「一番嫌なパターン」は、
露骨に嫌な顔をしておいて、「え、なんで?」とか「必要?」とか聞いておいて、かと言って出るなとも別れるとも言わず、帰りの電車で一人になってから**「さっきはごめん、大事なのは君の意思だから僕には止めるとかはできないよね」**とかいうメッセージを送ってくる人。(P115より引用)
ということで一致した。
自分の意思が何より大事なのはわかっているけれど、それでも自分の意思だけで決断するには重いから相談しているのであって、そこで「大事なのは君の意思だから」と返す男に存在意義はない、ということのようだ。
男性からするとキツい意見だが、「大事なのは君の意思だから…」という発言は、相手を尊重するような装いでいて、実際は自分を守りたいがための発言だということは、私にもわかる。相手の人生に踏み込むことをそこまで徹底して避けるのなら、そもそもなぜ恋愛関係になったのか?という話になってしまう。
どうせ最後に決めるのは本人なのだから「出たら別れる」でも「やってみなよ」でも言えばいい。たぶん、そこの意見そのものは大事ではない。大事なのは、彼女の選択の結果に付き合う意思があるかないかをはっきり示すことなのだろう。
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『女がそんなことで喜ぶと思うなよ ~愚男愚女愛憎世間今昔絵巻』は、世の男性が女性に対して恥ずかしげもなくやっているズルい行動、卑怯な行動、クズな行動を、鈴木さんが自虐的なユーモアとともに描いていく。男性であれば、自分の言動が異性からこう見えていたのかと、気恥ずかしさをおぼえつつ楽しめるだろうし、女性であれば大いに共感できるところがあるはずだ。
(新刊JP編集部・山田洋介)