「アメリカの次は中国」は本当か? 大国が抱える構造的欠陥
通商分野やITなど先端技術分野でアメリカと激しいつばぜり合いを演じ、アジア、ヨーロッパ、アフリカでは「一帯一路」政策を推し進めるなど、中国は今世界で最も勢いがある国といっても過言ではない。
「近い将来、中国はアメリカを凌駕して世界一の大国になる」との声も多い。中国の先端技術が進むことへのアメリカの強い警戒感を見ると、あながち的外れでもないかもしれない。
しかし、2019年現在経済、軍事、テクノロジー、いずれも世界のトップを行くのはアメリカである。これがひっくり返るというのは日本人としてはあまり考えたくないことかもしれないが、そんなことが本当に起こりうるのだろうか?
■中国の成長はいずれ頭打ちに 大国が抱える地雷とは
『2049 日本がEUに加盟する日 HUMAN3.0の誕生』(集英社刊)の著者、高城剛氏は、経済分野やテクノロジー分野のキーマンと直接対話をして得た知見と、世界を巡る生活で持った肌感覚をもとに、2019年から2049年までの30年間で世界がどんな道をたどるかを予測。本書にまとめた。その中で成長著しい中国についても多くのページが割かれている。
中国がアメリカに代わり世界一の大国になる日が来るのか。高城氏の解は「NO」である。
もちろん、中国の経済・技術の発展は目覚ましいものがある。中国の2000年の名目GDPは1.2兆ドルと、アメリカ(10.3兆ドル)の9分の1に過ぎなかった。しかし、2017年はこれが12兆ドルにまで伸び、アメリカ(20.5兆ドル)の6割程度までになっている。
しかし、高城氏によると中国という国家の性質や人口動態、経済の現状からして、この国がアメリカにとって代わることは、少なくとも今後30年間はないという。
その理由の一つが、「ガラパゴス化」である。ガラパゴス化というと日本の代名詞のようだが、実は状況は中国も変わらない。国内では今もグーグルやユーチューブ、フェイスブックが使えず、検索は「百度(バイドゥ)」、SNSは、「微博(ウェイボー)」や「微信(ウェイシン)といった独自のサービスが主流となっている。
こうなると、必然的に文化も経済も世界から隔絶されたものになってしまう。莫大な人口を誇る中国だけに内需の伸びは今後も期待できるが、経済成長による恩恵がひと巡りすればそれも頭打ちになる。中国は20年~25年前の日本と同じ道をたどっているのだ。
「中国は20年~25年前の日本」
これは中国を読み解くためのキーワードとなる。
中国の内需が持続しないと予想できるのは、中国もまた少子高齢化が進み、消費を担う若い世代が減っていくことが予想されるからだ。2017年の中国の出生率は1.24と、同じく少子化が進む日本よりも低い。2016年に一人っ子政策が緩和されたが、出生率は低いままになっている。
しかし、高城氏が考える中国最大のボトルネックはその国家体制にある。中国共産党の一党統治がこの国の長く続いた政治システムであり、これが覆ることはほとんど考えられない。一党独裁による政治の安定は中国の強みでもあるが、多様性と流動性のない社会にはイノベーションが起こりにくい。これが後々中国経済に必ず影響してくる。こうした要因から、中国はアメリカに代わって世界の覇権を握ることはないと高城氏は言う。
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米中戦争に地球温暖化、そして人口知能。
今ホットトピックになっているこれらの要素が未来にどのような影響を与えていくのか。『2049 日本がEUに加盟する日 HUMAN3.0の誕生』で明かされる高城氏の意見はある種独特なものだが、なじみのない意見だからといって「ありえない」と片づけるのは早計というもの。今の世界はありえないと思えたことがごく当たり前に起こるのだと、アメリカ大統領選挙でのドナルド・トランプの勝利やイギリスのEU離脱決定を見てきた私たちは知っているはずだ。
(新刊JP編集部)