上司なし、決裁もなし、ノルマもなし。それでも業績が上がる“究極の組織”とは
リモートワークや副業など、働き方が自由になる制度が注目を集め、企業にも導入され始めている。無駄をなくし、生産性を高め、パフォーマンスを出してもらう。そのために企業も様々なものを「なくす」努力をしているだろう。
しかし、「管理をなくしても、成果はあがる」と言われれば、にわかに信じられるだろうか。
本社オフィスがなく、社員の半数が地方に住んでいて、その住んでいる地域はなんと15都道府県にまたがる。そして管理職が一人もいない。そんな会社がある。株式会社ソニックガーデンだ。
社員数は2018年8月現在で35人。2011年創業で、システム開発をおこなっている。
管理職はなく、部署もない。指示命令する上司もいない。社員全員が自律的に考え動く。経費は事前承認なく使え、休暇も取り放題。評価制度はなく、給与は基本的に一律。賞与は山分けだという。もちろん売上げ目標やノルマもない。
まさかこれで上手くいくわけが…と思いきや、創業以来ずっと増収という。2018年には日本における「働きがいのある会社ランキング」の小規模部門で5位のベストカンパニーで入賞し、「第3回ホワイト企業アワード」でもイクボス部門で入賞している。
■自由に働く組織を創出するための3つの段階
とはいえ、最初からこうした働き方を提供できる会社であったわけではないようだ。様々な取り組みを経て、ソニックガーデン社は今のような経営スタイルを確立できている。
その秘密が明かされているのが、ソニックガーデン社の創業者である倉貫義人氏による『管理ゼロで成果はあがる 「見直す・なくす・やめる」で組織を変えよう』(技術評論社刊)である。
倉貫氏によれば、自由に働く組織に変えるためには大きく3つの段階があったという。
・第1段階:生産的に働く(楽に成果をあげるために見直す)
・第2段階:自律的に働く(人を支配しているものをなくす)
・第3段階:独創的に働く(常識や慣習に従うことをやめる)
(p.7より引用)
ソニックガーデン社は「生産」→「自律」→「独創」という段階を踏んで、現在のような組織体制に辿り着いたというわけだ。なるほど、この3つを一気に進めようとすると必ず歪みが生まれ、組織がめちゃくちゃになり、機能不全を起こしてしまうだろう。
また、多くの企業は第1段階の「生産的に働く」でつまずいてしまうのではないか。「働き方改革」が失敗に陥るのも、「生産的に働く」を目指した結果、制度と現場の実態にズレが生じてしまうことが大きな要因の一つである。
では、ソニックガーデン社は一体どんなことをして生産性を高めたのか。本書からその一部を箇条書きで抜き出していこう
・「そもそも」なんのためにやるのかを考え、ゴールを再設定する
・「やったほうがいいこと」はしない
・お金で解決できることにはお金を使う
・仕事の前に「タスクばらし」をする
・プロジェクトを「小口化」する
・そもそも「やる気」に頼らない仕組みを作る
気になるものばかりだが、例えば最初の「そもそも」から考えることは、手段が目的化することを防ぐことになる。
また、「タスクばらし」というのは、大きな仕事のタスクを細分化すること。目的とゴールの確認が始まり、優先順位の確定までを行う。タスクをばらすことで、タスクは「進める」のではなく、「消化していく」ようになるという。つまり、「仕事をする」ということが、行為ではなく、「終わらせること」として考えられるようになるのだ。
◇
これは、冒頭に挙げた「管理ゼロ」でも成果が上がる組織にするための入り口となる。ここから「自律的」、そして「独創的」と段階を踏んでいく。
全員が自律的に働き、成果を出す組織を作ることは、マネジメントを経験したことがある人ならばそう簡単にできるものではないと肌で実感しているだろう。
生産性を上げたい、もっと成果の出せる組織にしたい、新たな働き方を知りたいと考えている人は大いに参考になるはずだ。
(新刊JP編集部)