だれかに話したくなる本の話

人生が思い通りにいかないときは… 樹木希林の“心にささる”言葉

2018年9月15日に亡くなった女優の樹木希林さん。ドラマ、映画、CMでの名演技、活躍は誰もが知るところだ。

そして今、樹木さんの言葉を収めた『一切なりゆき』(文藝春秋刊)がベストセラーとなっている。語り口は平明で、ユーモアを添えることを忘れず、そして深い。樹木さんの言葉は今なお、多くの人の心にささり続けている。
では、本書には一体どんなことが書いてあるのだろうか。本書の中から印象深い言葉を2つ取り出そう。

人生思い通りにいかなくて、落ち込んでしまうこともある。樹木さんはそんなときでも前向きだ。

人生なんて自分の思い描いた通りにならなくて当たり前。私自身は、人生を嘆いたり、幸せについておおげさに考えることもないんです。いつも「人生、上出来だわ」と思っていて、物事がうまくいかないときは「自分が未熟だったのよ」でおしまい。(本書p.25より引用)

こう樹木さんは言っている。他の人の価値観や誰かの人生と比べて、ただうらやんでいるだけではないか。一度、自分を見つめ直してみるといいという。

また、樹木さんの演技を見れば、名女優なのは誰もがわかることだろう。
そんな樹木さんが「芝居をする上で、いちばん難しいこと」としてあげたのが、「誰もがやれること」だ。
それは「お茶を飲むとか水を汲むとか、そういう日常生活の一コマを演じること」。なぜなら、日常の仕草の中で「この人は短気なんだ」「ちょっと意地が悪いんだなぁ」といった役の性格を出さなくてはいけないからだ。

そういった演技をするために、樹木さんは「当たり前の生活をし、当たり前の人たちと付き合い、普通にいることが基本」と述べる。だから、普通に電車に乗り、Suicaも持っていたという。
こうした日常の当たり前の積み重ねが、映画の中の「日常」にリアリティーを加えていったのだ。

 ◇

冒頭にある「はじめに」によれば、樹木さんは弱冠20歳のときに森繁久弥氏によって才能を見出され、勝新太郎氏には「みんなお前の芝居を真似て出て来たが、お前を超えているのは一人もいない」と、北野武氏には「普通の役者と出ると差がつきすぎちゃう」とまで言われる名女優として名を馳せた。

そんな樹木さんの遺した言葉の数々は、普段の言動や心の中を見透かされているような気分になるだろう。人生が思い通りにいかなかったり、何かに苦しんでいる人は、樹木さんの言葉でもっと楽に生きてもいのかなと思わせてもらえるはずだ。

(新刊JP編集部)

一切なりゆき 樹木希林のことば

一切なりゆき 樹木希林のことば

心に沁みる希林流生き方のエッセンス。

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