日本に点在する足を踏み入れてはいけない「禁足地」を巡る
「禁足地」と呼ばれる場所を知っているだろうか。 その名の通り「足を踏み入れるのを禁じている土地」――「入っていけないエリア」という意味だ。
この「禁足地」の現状を、オカルト研究家の吉田悠軌氏がつづった一冊が『禁足地巡礼』(扶桑社刊)である。
具体的な「禁足地」について触れる前に、もっと細かく「禁足地」という言葉を定義しよう。
「禁足地」はただの「立ち入り禁止エリア」と分けて考えなければいけない。
例えば紛争地域であったり、軍事基地であったりといったところは、合理的・現実的な理由で入場を禁じられる「立ち入り禁止エリア」となる。
一方、本書で定義されている「禁足地」とは、「不合理な理由で入場を禁じられている場所」だ。例えば宗教的な教義によるもの、土着の信仰、霊の噂などがあげられ、「オカルト・怪談にまつわる立ち入り禁止エリア」と考えてもらってもさしつかえないと吉田氏は述べる。
日本で最も有名な禁足地として、吉田氏がまずあげているのが大神神社の「三輪山」だ。
日本で最も古い神社の一つとされ、三輪山そのものが神体で本殿を持たない。
かつては神官や僧侶しか入れない禁足の山だったが、明治以降は摂社の狭井神社で手続きをすることで入れるようになっているという。
しかし、決まり事がある。観光目的ではなく、山頂付近の神社に参拝が許されているだけ。さらに入山規則の遵守が必要で、3時間以内に下山しなければいけない、石木一片持ち出すことも厳禁、そして山中がどうなっているか他人に漏らしてはいけないなどがある。撮影はもちろんスケッチもNG。
こうした、「入らず」のタブーが緩やかになったものの、「言わず」のタブーやその他のルールが残されている例は他にも存在している。
そして、吉田氏がインターネットで調べても、詳細を書かないというルールが守られている印象を受けるという。
本書はこの三輪山をはじめとして、遠い山奥から都会の中にある禁足スポットまでさまざまな禁足地が語られている。また、吉田氏の雰囲気を盛り上げる文体も読みものとして魅力的な一冊だ。
(新刊JP編集部)