だれかに話したくなる本の話

2018年の読書ベスト3はこれだ!

こんにちは。

編集部山田です。

今年もあと2週間ほどで終わりということで、なんとなく世間も年末モードになってきていますね。 僕の方も1年間を振り返ってみようという気になりまして、今年読んだ本の数を数えたら、41冊でした。すくない。。

例年80~90冊くらいは読むので半分くらいですかね。あんまり時間なかったからなあ。

とはいえそんな中でも**「これは!」**というものはありましたので、選りすぐった3冊ほどについて今日は書いてみようかと思います。

■『ミライミライ』(古川日出男)

新刊JPの企画で扱った本はやめて、純粋にプライベートで読んでおもしろかった本を取り上げようと思ったのですが、この本は別格でした。

太平洋戦争終了後に「ありえたかもしれない歴史」を書いた長編小説です。北海道がソ連に占領されて、本州以南がアメリカに占領されたという設定なのですが、後で調べたらこれはあながちあり得ない展開ではなかったようですね。

この小説については古川日出男さん本人にお話をうかがいましたので、よければ読んでみてください。

■『類推の山』(ルネ・ドーマル)

ルネ・ドーマルはシュルレアリズムの作家でして、この『類推の山』もその流れを汲んでいます。

様々な仮説から、地球のどこかに光の磁場のゆがみによって「存在しているけど見えない島」が存在すると確信した「私」とその仲間は、どうやら「タスマニアの東南、ニュージーランドの西南、オークランド島の東」にその見えない島があると推測して、その方向に船を出します。

地球上にまだ地図に乗っていない巨大かつ見えない島があるというアイデアは何やら某海賊漫画的なロマンあふれる話なのですが、普通はそんなんあるわけないじゃないですか。ですがそこがシュルレアリズムです。雑な推測を大真面目に信じて航海した「私」と仲間たちは、あろうことかその島を見つけてしまうという。

ただ、これ未完なんですよねー。その島に上陸してしばらく経ったところで終わってしまっている。作者のドーマルが死んでしまったからです。ほんと惜しい。でも、島を見つけるところまでの類推と仮説だけで十分に楽しめました、僕は。

■『アレフ』(J.L.ボルヘス)

生涯短編を書き続けたボルヘスですが、この『アレフ』は『伝奇集』や『砂の本』と並んで有名な本だと思います。

「不死の人」っていう短編がお気に入りです。水を飲むと不死になる川を求めてさまよった挙句に、不死の人が暮らす廃墟にたどりついた男の記録なのですが、その男も不死の人の街を出てから何年も何百年もさまよって、世界中で歴史の節目を目撃する。つまり本人も不死の人になっているわけですが、そうして何世紀も生きた末に再び死ぬことを許されるという話です。

ボルヘスの死生観がうかがえる短編でして、実際に人間が不死となったらどんな生活をするかというのを考えさせられました。

作中で、不死の人々は精神世界の中に生きることを選び、一切の物質を受容しなくなり、すべてに無関心になっていきます。誰かが深い穴に落ちても見て見ぬふりです(どうせ死なないからです)。ようやく助けの縄を投げたのは70年後だったと。

僕らのあらゆる感受性の源泉となっているのは「いつかはわからないが、いつか必ず死ぬ」という認識なのだというごくあたりまえのことを、新鮮な形で再認識した感じです。

死なないとわかっていたら、感受性はなくなるはずです。なぜなら無限に生きる以上「一度しか起こらないこと」は存在しないからです。

このほかにもおもしろかった本はあるのですが、字数がかさむのでこの辺にしておきます。

来年も僕がいい本に出合えますように、どうかみなさん祈ってください。

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この記事のライター

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山田洋介

1983年生まれのライター・編集者。使用言語は英・西・亜。インタビューを多く手掛ける。得意ジャンルは海外文学、中東情勢、郵政史、諜報史、野球、料理、洗濯、トイレ掃除、ゴミ出し。

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