だれかに話したくなる本の話

あなたの働く会社は大丈夫?「倒産する会社」のヤバい兆候

堅調な業績を上げていたかに見えた企業がまさかの倒産。そんなことが珍しくない時代になっている。中には自社の倒産をニュースで知り、「寝耳に水だった」と嘆く人もいる。

会社組織で働く人間なら、自社や親会社が本当に大丈夫なのかどうか、気を配っておいて損はないだろう。では、どうすれば「うちの会社、実はヤバいんじゃないか?」という兆しを見抜けるのか。

企業の成功は、さまざまな条件の組み合わせがあってもの。一方、経営の失敗や倒産は、突き詰めれば1つの判断ミスによるものが多い。 『なぜ倒産 23社の破綻に学ぶ失敗の法則』(日経トップリーダー編集、帝国データバンク、東京商工リサーチ協力、日経BP社刊)は、そんな企業の失敗の背景をリサーチし、倒産のパターンを検証した一冊。

本書から、倒産の法則をいくつか紹介してみよう。もし、自社や親会社がここで紹介するパターンに当てはまっているなら、今後に備えておいたほうがいいかもしれない。

■倒産パターン1「急成長の落とし穴にはまる」

ベンチャー企業やヒット商品が生まれた企業は急成長することがある。
しかし、売上増加や規模の拡大があまりに急すぎると、無理や歪みが生じて倒産につながっていくケースは多い。

2017年4月に倒産した、500円で本格ピザを提供していた「ナポリス」を運営していた遠藤商事はその典型だ。同社が倒産した要因は、店舗数増を目指した**「強引な出店」、また、「急成長ゆえの人材不足」**でFC店舗への支援がおろそかになったことなどが挙げられる。

「ひんやりジェルマット」が大ヒットした、寝具メーカーのヒラカワコーポレーションは、ヒット商品が仇になったケースだ。同社倒産の要因として大きかったのは、ヒット商品で得た資金を、工場や本社の購入など**「多額の設備投資」**に充てたことにある。

■倒産パターン2「ビジネスモデルの陳腐化」

長く続いている企業や老舗も安心してはいられない。時代の変化に対応できず倒産するケースも多いからだ。

高級宝飾品や腕時計などの老舗である平和堂貿易は、**「市場自体の縮小」**で苦境に陥った。しかし、百貨店頼みの「旧来の販売手法」から脱却できず、破綻に追い込まれた。

国内屈指の機会保有台数を誇った機械部品メーカーのテラマチは、高い技術力を武器に一貫生産体制をとっていたが、それが裏目に出た。「小ロット化・短納期化という時代の変化」によりコストが高まり、経営を圧迫したのだ。

この他にも、長く続く会社では、**「ワンマン経営」ゆえの経営判断の見誤りや、「カリスマ創業者」**が退いてからの凋落も多いようだ。

■倒産パターン3「リスク管理の甘さ」

企業経営にはさまざまなリスクがつきまとう。内在するリスクに手が打てていない会社も倒産への道を辿ることが多い。

精密板金や機械組み立てを手掛けていたイイダは、取引の**「一社依存」**というリスクによって破綻した。菓子メーカーの老舗・アルベリも、受注の4割を一社に依存しており、取引の打ち切りとともに経営が悪化。破産手続きの申し立てに至った。

こうしたケースでは、第二の柱になる事業を育てるべく奔走することも多い。しかし、**「安易な別事業への進出」、「起死回生を狙った無理な投資」、「事業を育てるだけの資金や時間の不足」**などにより、倒産を回避できないことがほとんどのようだ。

◇ ◇ ◇

本書で紹介されている倒産のパターンはさまざまだ。業種も多岐にわたる。それらを参考に、経営陣の動き、財務などを客観的に見ることで、倒産の兆しを感じ取ることができるだろう。

自分の働く会社で大きな新規事業が始まった。店舗や工場の増減があった。世の中に変化が現れた。自社のビジネスモデルに疑問を感じた。――そんなときは、自分の生活を守るためにも、一度、「倒産の前触れかも?」と疑ってもいいのかもしれない。

(ライター:大村 佑介)

なぜ倒産 23社の破綻に学ぶ失敗の法則

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この記事のライター

大村佑介

大村佑介

1979年生まれ。未年・牡羊座のライター。演劇脚本、映像シナリオを学んだ後、ビジネス書籍のライターとして活動。好きなジャンルは行動経済学、心理学、雑学。無類の猫好きだが、犬によく懐かれる。

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