だれかに話したくなる本の話

女性に「私と仕事、どっちが大事なの?」と言わせないシンプルな解決策とは?

女性が活躍する社会を目指して、日本でもさまざまな取り組みが行われている。女性社員や女性の管理職の数が増えている職場も多いだろう。

しかし、正直なところ、女性の職場進出や活躍にケチをつける気はまったくなくても、女性の扱い方や接し方に戸惑っている男性もいるのではないか。

そんな男性が理解できない女性の生態と不思議を、女性の視点から教えてくれる一冊が 『面倒くさい女たち』(河合薫著、中央公論新社刊)だ。本書から、男性が戸惑ってしまう女性の言動の背景と解決策をいくつか紹介していこう。

■なぜ、女性は「相談にきて怒る」のか?

本書の中で、ある男性は「女性の多い職場は気を遣う」と語る。
相談にきておいて怒りだす女性部下。全員にお伺いを立てないと、席替えひとつでも「私、聞いてないです!」とふてくされる女性社員。

男性には理解できない女性の沸点。それは「関係性」というキーワードで紐解けるという。
男性は外的な何かを他者と一緒に「する(do)」ことで、女性はその他者とともに「いる(be)」ことで自分の存在を確かなものにするのだという。

相談にきて怒り出すのは、「私の相談を“一緒”に聞いてほしい」。席替えでふてくされるのは「私も席替えの相談の“仲間”に入れてほしかった」。つまり「be」したいだけなのだ。

男性は相談されると解決策という「do」を重視するが、「be」に重きを置く女性が求めるのは「一緒」「共感」という部分。この違いを押さえれば、面倒くささは多少なりとも解決できるはずだ。

■「私と仕事、どっちが大事なの?」は、メール1本で解決できる

「私と仕事、どっちが大事なの?」――。
男性にとって女性を「面倒くさい」と思う定番フレーズだが、これも女性の「be」を求める欲求が言わせているもの。

しかし、著者によれば、これは1本の電話かメールで解決できるという。

夫が都心部に通勤する中堅サラリーマンの妻200人を調査した興味深いデータがある。
調査では、夫の帰宅時刻が22時を過ぎると、夫婦や家族の関係性にネガティブな影響が出ることが判明した。ところが、22時を大幅に過ぎても良好な夫婦関係を保っている人たちもいたという。

共通していたのは、夫が「帰るコール」をしていたということ。

これは、きちんと連絡をすることで、100%ではなくても妻の「be」の欲求を満たしたことが、その要因だと考えられるという。
もちろん、「帰るコール」だけをすればいいわけではないが、最低限これくらいはやっておくことで、「私と仕事、どっちが大事なの?」と詰め寄られる危険は少なくなるだろう。

■陰口を言いながらもその相手と仲良くできる女性の不思議

女性は仲良くしている友人の陰口を言いながらも、その友人ともしっかり仲良くするもの。
これも男性には意味不明なものだ。しかし、これも「be」によるコミュニケーションで考えると理解しやすい。

Aさんにとって、同じ空間(集団)に一緒にいるときのBさんは、自己の存在を確立する“大切な他者”だ。
しかし、Bさんから離れて、Cさんと一緒にいるときは“大切な他者”の役割がBさんからCさんに変わる。Bさんの陰口を言うことがCさんとの関係性を築く手段になるなら、それをいとわないというわけだ。つまり、シンプルに共通の話題でおしゃべり=beしたいだけなのである。

男性からすると、こうした陰口は女性の二面性を見たようで怖くなるかもしれない。しかし、恨みつらみがこもった話ではないということを覚えておくと、軽く聞き流せるだろう。

(ライター:大村 佑介)

面倒くさい女たち

面倒くさい女たち

職場や社会に氾濫し増殖する「面倒くさい女たち」を実証研究や理論などから紐解く。女性の扱いに悩む男性上司、男性社員の必読の一冊。

この記事のライター

大村佑介

大村佑介

1979年生まれ。未年・牡羊座のライター。演劇脚本、映像シナリオを学んだ後、ビジネス書籍のライターとして活動。好きなジャンルは行動経済学、心理学、雑学。無類の猫好きだが、犬によく懐かれる。

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