「アラビア語=難しい」説への多少の反論(2)
提供: 新刊JP編集部こんにちは。編集部山田です。
お盆休みはリフレッシュできましたか?
僕のお盆はアフリカ料理店に行ってヤシ酒を飲んだくらいしかイベントがありませんでした。
ちなみにヤシ酒にはちょっとしたおまじないがあって、飲む前に少し手につけて床に2滴垂らすと楽しい飲み会になるのだそうです。
さて、前回**「こんなの誰が読むんだ??」**と思いながら書いた“「アラビア語=難しい」説への多少の反論”という記事でしたが、案外悪くない(良くもない)アクセスがあったようなので、今回も「こんなの誰が読むんだ?」と思いつつ続けます。
■「辞書が引けたら一人前」はもう古い
アラビア語の特異性と難しさを表す有名な言葉に**「辞書が引けるようになったら一人前」**というものがあります。
どういうことかというと、アラビア語の辞書は、英語やスペイン語・フランス語などの辞書と構造が違うんですね。ここは強調しますが、本当に、全然違う。そして、その引き方はある程度アラビア語を理解していることが不可欠というのが「辞書が引ければ一人前」の意味です。
アラビア語の難しさをアラビア文字で説明するのも野暮なので、またもや英語にたとえますが、
「cred(信念)」
「incredible(信じられない)」
「discredit(信用を傷つける)」
を辞書で調べる時、それぞれ頭文字の**「C」「I」「D」**の項目を探すはずです。これが英和辞典の引き方。
ここで注目してほしいのは、三つの英単語に共通する**「cre」**の部分です。ここに意味の核がある。詳しくは知らないが、「信じる」みたいなことだと思います。
アラビア語辞書で主流なのは、頭文字ではなく、上でいう「cre」のような「意味の核」ごとに整理されているのが大きな特徴です。
というのも、アラビア語単語は**「3文字(稀に2文字や4文字もある)の組み合わせ」**が意味を持つ作りになっています(ただし、あらゆる組み合わせに意味があるわけではない)。
この組み合わせを「語根」といいます。これが上で書いた「意味の核」にあたるものです。だから、頭文字で辞書を引いても意味が見つからないわけ。
となると、アラビア語辞書を使いこなすには、**「3文字の組み合わせが、調べたい単語のどこに入っているか」**を見抜けないといけないのですが、これが厄介なんです。
というのも、上の「cre」のように、ある単語のどこかで3文字がつながっていれば楽なのですが、アラビア語の場合それは稀で、「1文字目と3文字目と6文字目」だったり「2文字目と3文字目と5文字目」だったりするからです。あと活用の形によって別の文字に置き変わっていたりする。
ある単語の中のどこに3文字が入っているかを発見するのは、これはもう文法の勉強をしたり慣れていくしかない。「アラビア語は辞書が引ければ一人前」はそういう意味です(と、僕は理解しています)。
◇
この「語根問題」、あるいは「辞書が引ければ一人前問題」は、確かに面倒で厄介です。ただ、これがアラビア語の難しさの本質なのかというと、**「半分正解、半分不正解」**という感じです。
どういうことかというと、「アラビア語は辞書を引ければ一人前」はひと昔どころか、30年くらい前の言説なんですね。
ミもフタもないが、今はネット辞典があるので、わざわざ3文字を見つけなくても、単語をまるごと入力すれば意味を調べられてしまうのだ……。
そうやって、ネット辞典に単語を放り込みまくって調べまくりながら語根がどこかにアタリをつける練習をする方が、現代の勉強法としてはまちがいなく効率がいいです。
なので、アラビア語をやろうとしている人は、もし「アラビア語は辞書を引ければ一人前なんだよ」とか言われても、くれぐれも怖気づかないように。全然なんとかなります。そんなことを言う人間がいるのかわからないが。
結局、アラビア語の難しさってなんなんだよ?
という話ですが、それは次回につづく、とします。まだやるのか。