だれかに話したくなる本の話

89歳の精神科医が教える、日々の暮らしをラクにする考え方

仕事が好きになれない。人間関係がこじれたりして、人生うまくいかない。
時にはイヤになってしまうこともある。そんなとき、どう心に折り合いをつけて、前に進めばいいのか。

『心に折り合いをつけて うまいことやる習慣』(中村恒子、奥田弘美著、すばる舎刊)は、中村恒子氏の半生とともに、どうしたら日々たんたんと生きられるのかを紹介した一冊だ。

中村氏は現在89歳。精神科医の仕事を始めて70年近くになる。88歳になるまでは週6日のフルタイムで働いていた。とはいえ、仕事が大好きということではないという。

「大嫌い」ではありませんが、「大好き」でもない。「好きか嫌いか」と言われれば、「好きなほう……かな?」。私にとって仕事とは、いつもそんな感じの位置づけです。(P.29)

そう語る中村氏。仕事は好きでなければいけない、と考える必要はない。やらないよりは、やるほうがマシかな?くらいのモチベーションが、仕事を無理なく続けるコツだという。

また、つい他人と比べて、自分が幸せか不幸か、と気にしてしまうものだ。
しかし中村氏は、そもそも幸か不幸かなんて大して意味のないものだと述べる。何をするにも、自分が好きで課すなら問題はないが、他人のあれこれを基準にすると、重くてストレスでしかない。

そうすると、「私はこんなに辛抱しとるんやから、あんたもこうあるべきや」と人に強要したりする。(P.45)

こうなると、悪循環になってしまう。若い頃は「もっともっと」とがんばるのも悪くないが、歳をとってきたら、ちゃんと己を知って、「もっともっと」を一つずつ捨てていったほうがラクなのだ。

また、本書の「聞き書き」である奥田弘美氏は、中村氏を見ていると、人間関係の秘訣は「距離感」に尽きる、と感じているようだ。
中村氏は、「もっと親しくなろう」「もっと関係を深めよう」と積極的に望まないし、動かない。でも、一人でポツンといるわけではない。慕って来る人、近づいてくる人に対しては、穏やかな笑顔で受け入れて、楽しく会話を弾ませる。
常に距離感を保っているので、人に過剰な期待や思いれもしないし、人に過剰な警戒もしないですんでいる。こういった接し方で、誰とでも絶妙な距離感を保つことができるのだ。

結局、最後は自分。自分がどう生きるか、どうしたいか、ということだけなんです、と中村氏は述べる。日々、たんたんと生きる中村氏の考え方や生き方は、悩みを小さくし、日々の暮らしをラクにしてくれるはずだ。

(新刊JP編集部)

心に折り合いをつけて うまいことやる習慣

心に折り合いをつけて うまいことやる習慣

89歳精神科医の著者が明かす「うまいことやる習慣」

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