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「人食いザメ」のイメージは『ジョーズ』から!? イメージとは違う「サメ」の生態とは

「サメ」というと、どんなイメージを持ちますか?
一般的には、危険、獰猛といったワードを連想しますが、実は、サメはおとなしい性格をもつものがほとんどだといいます。

シャークジャーナリスト・沼口麻子さんの『ほぼ命がけ サメ図鑑』(講談社刊)は、誤解されがちなサメのイメージがガラリと変わる一冊。サメの生態や意外に知られていない豆知識が満載で、異例のヒットとなっています。

タイトルに「ほぼ命がけ」とありますが、それはサメに襲われたということではなく、サメを観察することに我を忘れて冷たい海で凍傷になりかかったことなどがその由来のよう。 そんな「サメ愛」に溢れた本書から、サメの本当の姿や、ちょっと面白いサメ豆知識を紹介していきます。

■人食いザメって本当にいるの?

「人食い○○」に何を入れるかを聞かれたら、多くの人が「サメ」と答えるでしょう。
ところが、サメの9割はとてもおとなしい性格で、そもそも好んで人を食べることはあり得ないといいます。「人食いザメ」のイメージがついたのは、やはり映画『ジョーズ』の影響が強いとか。

ある統計調査では、50年間のサメによる死亡人数は26人で、年間平均で0.5人。この数が多いと感じるか少ないと感じるかは、個人によって異なるでしょう。
サメが人に噛みつく多くのパターンは「サーフィン」。水中から見たサーフボードがサメの好物であるアザラシやウミガメに似ていることから、「間違って」襲われてしまうことがあるようです。
また、潜水夫が持つ漁獲物のニオイに引き寄せられ、漁獲物もろとも噛み疲れてしまうこともあると著者。逆に言えば、それ以外のケースで人が襲われることは稀なことだと言えます。

■大きくてちょっとバカな「ウバザメ」

本書では、沼口さんが世界各地の海で出会ったサメの生態などが語られていますが、大きいけれどおとなしい性格をよく表しているのが「ウバザメ」です。

ウバザメは、別名「バカザメ」とも呼ばれています。学習能力があまり高くないようで、漁船に自分から近寄ったりしてしまうことなどから「バカ」と言われています。

沼口さんはスコットランドの海でウバザメと出会いますが、巨体に似合わずプランクトンが主食のウバザメは、目の前でのんびりと食事をはじめたといいます。人と警戒するでもなくおっとりと海を泳ぐ大きな生き物を想像すると、なんだか愛らしく思えるのではないでしょうか?

2017年夏に遊泳禁止がニュースになった久慈浜海水浴場に現れた「ドチザメ」も、哺乳類で例えるとヒツジのようなとてもおとなしい性格だといいます。

■本物とニセモノの「フカヒレ」の見分け方

沼口さんの「サメ愛」は食べることにも向けられています。

日本は古くからサメを食べる習慣があり、一時期の築地市場ではマグロよりもサメで賑わっていたといいます。
サメ肉は「アンモニア臭がする」と敬遠されがちですが、きちんと処理されたサメ肉はふわふわの食感で上品な味の白身魚。本書では、日本各地で食べられるサメ料理のお店やレシピも紹介されています。

また、サメ料理の代表例の一つ「フカヒレ」。中国では商談の際に出すフカヒレのランクによって、商談がうまくいくとも言われているそうですが、フカヒレの価値は、繊維の太さや均一性、色の美しさ(金色に近いものほど高価)、弾力などで評価されます。

ところが、残念なことにニセモノも横行しています。著者が取材した横浜中華街の「招福門」店主・齊藤正人さんによれば、ニセモノは「そもそもあまりに安い商品は疑わしく、食感がゴムっぽくて、繊維の形が綺麗に整いすぎている」とのこと。

とはいえ、素人に食感や繊維の質で見分けるのは困難。簡単に判断できるコツは、繊維を一本手にとって、縦に割いてみること。本物は綺麗に割けるが、ニセモノはブチブチと切れてしまうといいます。

もし、商談や大事な人を招待する宴席でフカヒレ料理を頼もうと思ったら、事前にそのお店に食べにいき、本物かどうかを調べてみるといいかもしれませんね。

(ライター/大村佑介)

ほぼ命がけサメ図鑑

ほぼ命がけサメ図鑑

寝てもサメても「サメ三昧」なシャークジャーナリストの一冊!

この記事のライター

大村佑介

大村佑介

1979年生まれ。未年・牡羊座のライター。演劇脚本、映像シナリオを学んだ後、ビジネス書籍のライターとして活動。好きなジャンルは行動経済学、心理学、雑学。無類の猫好きだが、犬によく懐かれる。

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