だれかに話したくなる本の話

醤油からTERIYAKIへ。海外で受け入れられる製品・サービスの驚くべき「変化」

自動車や電化製品など、世界で受け入れられている日本製品は多い。しかし、その一方で、なかなか受け入れてもらえなかったり、ビジネス的に大失敗してしまう製品があるのも事実だろう。
では、異文化の人たちに受け入れてもらえる製品やサービスには一体どんな特徴があるのだろうか。

その答えの一つを提示しているのが、『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?』(安西洋之、中林鉄太郎著、日経BP社刊)だ。本書では、海外展開している製品を例にしながら、海外市場を開拓する上で必要なものとは何かを指摘している。

本書は、タイトルこそ「マルちゃん」というインスタント麺のブランドが銘打たれているが、掲載されている事例は「マルちゃん」だけではない。キッコーマンやパナソニック、公文式など様々な企業の例が分析されている。
そうした豊富な例を見ていくと、海外で製品を売るには、ローカリゼーション(現地化)が必要だということが分かる。現地に合わせて、言語の変更や法規制に合わせた変更、場合によっては機能やデザインの変更も必要になってくるのだ。

そして、日本の特色を製品に出すか出さないかもポイントとなる。「高品質」「安全」「経済的」など日本企業の特色を出してプラスになることもあれば、そうではないこともある。例えば、「日本」のイメージをあえて出さないで海外展開を成功させているのが、キッコーマンだ。

「日本食」の代表的な調味料の一つである「醤油」。
しかし、醤油メーカーとして有名なキッコーマンは、海外では醤油と日本食をセットでビジネスをしていないという。日本と醤油をセットで売り込んだ方が簡単でいいやり方なのではと安易に思ってしまうが、そうではない。

海外戦略においては何より「肉に合う」ことがポイントなのだ。

アメリカやオーストラリアなどでは、バーベキューをする回数が多い。すると、必然的に肉を食べる機会が多くなる。醤油は肉の照り焼きに合うようローカライズされ、アメリカで生まれたヒット商品が「TERIYAKI(テリヤキ)」だ。「TERIYAKI」のヒットでアメリカでは、醤油が調味料として半数の家庭に常備されているそうだ。

それは日本食にあう「醤油」ではない。ベースは醤油でありながら、アメリカ人の食生活や舌に合わせて作られた「TERIYAKI」は、バーベキュー用のタレとしてアメリカ市場向けのローカリゼーションされているのだ。

本書では、キッコーマンの醤油の他にも、カップ麺のマルちゃんやトイレでおなじみのTOTO、現代美術家の村上隆氏など「メイド・イン・ジャパン」が世界で成功している例を紹介する。

日本の企業の製品は世界に誇れる品質・デザインのものは多いだろう。だからといって、そのまま売れば世界で売れるとは限らない。その裏には製品をローカリゼーションし、考え抜かれた販売戦略などの企業努力がうかがえる。
海外に行った際には、ローカリゼーションした日本製品を楽しんでみるのも良いのかも知れない。

(新刊JP編集部)

「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?

「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?

新市場開拓をめざすビジネスマンは必読の一冊!

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